第18話 元カノは疑いを深める
Side:横瀬
デパートでふびと様みっけ。
女の子を二人連れている。
あれは御花畑さんと、小前田さん。
二人がメイクされてみるみる美人になっていく。
化粧映えする子なのかな。
羨ましい。
私もあの輪の中に入りたい。
『ふびと様、見つけたよ。狭山ヶ丘デパートの1階、化粧品売り場』とSNSに書き込む。
『ラジャー』、『了解』、『すぐに行く』などのメッセージがかき込まれた。
ファンクラブの仲間達が集まってきた。
「御花畑さんと、小前田さんがいる。ふびと様とどんな関係?」
「じゃじゃーん、二人は芸能人デビューする。そして、ふびと様と同じ事務所」
グリプロのホームページを見せられた。
本当だ。
確かにその名前がある。
「同じ事務所なのね。仲良いのかな」
「見ている限りそうね」
「あー、ふびと様の動画がアップされている」
「ほんとだ」
私も、動画を見る。
なんのことはない宝くじを買う動画。
でも内容が凄い。
あっさりと1等を当てちゃうんだもの。
事務所が仕込んだのかな。
1等が出るまで、宝くじ動画を撮ったとしたら、凄い根性ね。
なんとなくふびと様には似合わない。
きっと1発で当てたのね。
そう思う。
豪運の持ち主なんだわ。
あっ、ふびと様が歩く。
立ち姿が素敵。
重心が安定した動きとでも言うのかな。
独特の美しさがある。
帰るのかな。
ふびと様はカラオケボックスに入った。
カラオケボックスを見張る。
出てきたのはあの波久礼。
なんで波久礼がここに。
きっと偶然だわ。
波久礼を追いかけたいけど、ふびと様の住まいも突き止めたい。
心が揺れる。
結局その場に残った。
何時までも出て来ないので、部屋を間違ったことにして片っ端から入る。
ふびと様はどこにもいなかった。
どこから逃げたんだろう。
きっと裏口ね。
ふびと様の美貌をもってすれば、店員も裏口の利用を認めてしまうはず。
「みんな、どうする?」
ファンクラブのリーダーが問い掛けた。
「御花畑さんと、小前田さんを張り込むのはどう。ふびと様との唯一の接点だわ」
「賛成、順番を決めてやりましょう」
二人を見張ることになった。
二人はグリプロにも足を運ぶでしょうし、ふびと様も現れるかも。
それにしても何かが引っ掛かる。
波久礼はあの二人と接点がある。
もしかしてふびと様とも接点が。
そんなわけはないかな。
天地がひっくり返ってもあり得ない。
でも。
疑いの疑念が晴れない。
そう言えば、あいつの顔ってどんなだっけ。
一度もまともに顔を見たことがないのに気づいた。
あの前髪を束ねたら、ふびと様が現れる?
ないない。
そんなことはない。
第一、声が違う。
動画のふびと様の声は素晴らしいわ。
月とすっぽんよ。
でも声を変えているとしたら?
そんな特技があったら、声優で食べていけるはず。
一度芽生えた疑念が晴れない。
「なに、難しい顔しているの」
ファンクラブの仲間に心配そうに言われた。
「ちょっと気掛かりな事があって」
「ふびと様が1等を出した売り場に行くことよりも?」
「そうじゃないけど」
「さあ、行くわよ。みんな待って」
私もみんなを追いかけた。
宝くじ売り場でふびと様が買ったのと同じスクラッチくじを買う。
末等しか当たらなかった。
3000円が当たった子が一人だけ。
そんなものよね。
ふびと様の謎は色々とある。
経歴が全て謎。
かろうじて判るのは出身が東京ってことだけ。
実家に今も住んでいるのかな。
それだと噂にならない方がおかしい。
波久礼の姿が浮かんだ。
こんどあの前髪を払ってみようかな。
そうすればスッキリするに違いない。
「ねぇねぇ、ここ見て」
ファンクラブの仲間の子が動画をストップした。
右手首に傷がある。
そして左手首にミサンガが。
あいつと一緒。
嘘よ。
そんなはずない。
疑念がますます酷くなった。
仲間の子に、波久礼が怪しいって言ってみようかな。
元彼が怪しいなんて言ったら変に思われるかも。
言えない。
この疑念は私が払しょくするのよ。
そうするしかない。




