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第1話 勇者は帰還する

 異世界から帰ってきたら、いきなり教室だった。

 それは良いんだが、みんなの様子がおかしい。

 俺を見る目が犯罪者を見る目だ。


「人殺しが登校してきたわよ」

「どんな気持ちなんでしょうね」


 陰口が聞こえてきた。

 俺に聞こえるようにわざと大声で言っているに違いない。


 俺は波久礼(はぐれ)史郎(しろう)

 俺達クラスは召喚され異世界転移した。


 そして目的を果たして地球に帰ってきた。

 みたところ異世界で死んだ奴も今は生き返っている。

 時間も転移した高校2年生に戻っているようだ。


 異世界でのことはあまり言いたくない。

 嫌な思い出もあるからだ。

 どうやら俺以外は異世界での記憶を忘れたらしい。


 小前田(おまえだ)御花畑(おはなばたけ)の目も他のクラスメイト同ように冷たい。

 小前田(おまえだ)良美(よしみ)御花畑(おはなばたけ)未依子(みいこ)は異世界で俺とパーティを組んでた。 命を救ってやったし、救われたこともある。

 やはり異世界での記憶はなくなっているらしい。


 小前田(おまえだ)はグラマーで女の子らしいスタイルをしている。

 今もそれは変わってないらしい。

 肩の所で髪を切り揃えている。


 異世界にいた時と髪型は違うが、それは俺も同じだ。

 俺の前髪は顔を隠すように垂れている。

 うっとうしいことこの上ないが、今は我慢しよう。


 御花畑(おはなばたけ)はスレンダーな体つきで、スタイルもそれなりに良い。

 髪の毛を茶色に染めている。

 少し目つきが悪いのは異世界の時と変わってないようで安心した。


 異世界での小前田(おまえだ)は職業が錬金術士で、御花畑(おはなばたけ)は魔法使いだった。


 俺は人殺しらしい。

 異世界では確かに殺したな。

 クラスメイトも何人か殺した。


 自業自得と受け止めないといけないようだ。

 左腕を見るとミサンガが結ばれていた。

 このミサンガは逃げないという王女との約束だ。

 よし受け止めよう。


「嫌ね。自殺痕の傷ぐらい隠しなさいよ」


 ミサンガと反対の右手首に傷があるのが見て分かった。

 この傷は邪神に付けられたものだ。


 俺は自殺なんかしてないぞ。

 どうなっているんだ。


 ここは戦略的撤退だ。

 逃げではない。

 今の俺は何も装備がない。

 丸裸も同然だ。


 装備を調えて出直そう。

 教室から出て、校舎の外に出る。

 校庭を横切り、親戚の庭に停めてあるスクーターに座った。

 そう言えば。

 メットインに入れてある取り扱い説明書を片手に。


「カタログスペック100%」


 スクーターは光に包まれた。


「はははっ」


 乾いた笑いが出た。

 俺って世界征服もできるんじゃないかな。

 もう、学校なんてどうでも良いやとさえ思える。


 カタログスペック100%は性能が書かれた紙があると品物や行為がその通りになるというもの。

 異世界での俺の唯一の武器だった。


 いまスクーターは取り扱い説明書通りの性能を発揮するはずだ。

 故障個所や不具合があっても、説明書に書いてあればその通りになる。

 故障しててもエンジンが掛かるし走れる。


 この応用範囲は広い。

 例えばだ、富士山の水があったとする。

 あらゆる病気が治るという説明書きがあれば、飲めば治ってしまう。


 必殺なんて武器があったら必ず殺せる。

 世界征服できる能力だろう。


 これから、どうするか考えてみる。

 この世界に魔王みたいな存在が現れないとも限らない。

 なぜなら俺のスキルがその証拠だ。

 神は無駄なことをしないだろう。

 これを使う場面が訪れるはずだ。


 tastuber《タスチュウバー》にでもなってみるか。

 タスチュウバーは動画配信サイト『TasTube』で配信する人だ。

 収入が多い人だと億とか稼いでいる。


 これを始める理由として、異世界では俺は勇者を自称してた。

 そして、人助けをしてみんなに勇者だと認めてもらった。

 結局、それが最終兵器になったわけだ。


 名声は力になる。

 特に俺のスキルの場合は。

 みんなが無敵だと保証して紙に書いてくれれば、そうなるだろう。

 今は魔王討伐みたいな目標はないが、力がある分には困らないはずだ。


 そんなことを考えていたら、女の子が近寄ってきた。

 知らない奴だ。

 かなり可愛い部類に入るだろう。

 だが、美女なら異世界で見飽きている。


「やっぱりここにいた」


 相手は俺のことを知っているらしい。


「誰?」

「自殺未遂して、私のことを忘れたの。記憶喪失だとは聞いていないけど」

「いいから、誰なんだ」

横瀬(よこぜ)綾香(あやか)よ」


 やっぱり知らないな。


「それで」

「今日からあんたの彼女じゃないから」

「別にいいよ」

「あっさりしているのね。あんたから告白してきたから、もっとごねるかと思ったのに」

「話がそれだけなら、俺は行くよ」

「もう学校で話し掛けないで。元から好きじゃなかったの。ただ彼氏がいないと友達に自慢できなかったから。いままで貢いでくれてありがと」


 知らない女に振られたようだ。

 好きと言う気持ちがないから、ぜんぜんショックでもなんでもない。

 だが、頬が濡れているのに気づいた。

 悲しんでるのか。

 この世界の俺が。


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