日常と冒険、どっちを選ぶか――僕の選択はまだ終わらない
午前7時。目覚ましのアラームが僕を現実に引き戻す。
――また、学校か。
高校三年生の僕、**桐生蓮**は、いつもの通学路を歩きながら、昨日見た夢のことを思い出していた。
夢の中では、見たこともない森に立っていた。目の前には巨大な竜――いや、僕の直感では竜ではなく、意思を持った生き物のようだった。
「――目を覚ませ」
その声で僕は飛び起きた。目の前にはいつもの教室。夢だったのか。しかし、手のひらを見ると――小さな光の粒が漂っていた。
「え……なにこれ?」
昨日の夢が現実に影響を及ぼした? そんなバカな。そう思いながらも、学校ではいつも通り過ごすしかなかった。友達の優斗が僕に声をかける。
「お前、昨日また寝坊したんだって?」
僕は微笑んでごまかすしかなかった。でも、手のひらの光は消えない。授業中も、放課後も、ずっと僕をじっと見つめている。
家に帰ると、母が台所で夕食を作っていた。
「蓮、今日も部活は?」
「うん、行かない」
僕は部活を放棄して、自室にこもる。そして、光の粒を手のひらに集めると、次の瞬間――
――目の前が真っ白になった。
次に気づいた時、僕は見たこともない森の中に立っていた。昨日の夢と同じ場所。
「な……ここは」
声を出すと、木々がざわめいた。風が僕の耳元でささやく。
――『選ばれし者』。
僕の心臓が高鳴る。これまでの平凡な日常が、今、完全に崩れ去った瞬間だった。
森を進むと、巨大な竜が現れた。体中が青い光で包まれ、目は僕をじっと見つめる。
「お前……力を持つ者か」
竜の声が頭の中に直接響く。僕は反射的に手のひらを見た。光が強くなる――それが力の源らしい。
「力……僕に?」
竜は頷く。そして、空間に浮かぶ符号のようなものを示す。理解はできないが、直感でわかった。
――僕は、この世界で何かを成す運命にある。
だが、同時に心の片隅で思う。
――学校には戻れるのか。友達に会えるのか。
竜は静かに告げた。
「決めろ、少年。日常か、力か。お前の道はお前が選ぶ」
僕の手のひらに光が集まり、心臓の奥で熱を帯びる。どちらを選ぶのか――答えはまだ出ない。
その瞬間、森の中に黒い影が迫った。鋭い爪、燃えるような目。――モンスターだ。
「え、待って、まさか戦うの!?」
本能が叫ぶ。だが、手のひらの光が答える。
――「力を使え」
僕は恐る恐る光を放つと、手のひらから青い刃のようなものが飛び出し、モンスターを弾き飛ばした。
「……なにこれ、僕の力?」
震える手のひらを見つめながら、僕は理解した。
――もう、日常に戻ることはできないのかもしれない。
森の奥から、竜の声が響いた。
「選択はまだ先でもいい。だが、お前の力を試す時は今だ」
僕は深呼吸した。心臓の鼓動が森の静寂に響く。
――これが、僕の異世界での第一歩だ。
次の瞬間、背後から更に大きな影が迫る。
――それは、人間の形をした敵だった。戦うしかない。
僕は決意を固める。
――僕は平凡な高校生ではいられない。
――だが、友達を、日常を、絶対に忘れない。
光が手のひらから溢れ出し、森を照らす。
「さあ、来い!」
僕の異世界での冒険は、ここから始まった――。