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第1話

もともと短編で投稿する予定でしたが、思ったより文字数が多くなったので、7話に分けて投稿します。

よろしくお願いします。

 

 冒険者の多くは荒くれ者である。

 金と名誉を渇望し、自分の願いを暴力によって叶えようとする。

 当然のように世間からの評判は悪くなる一方だった。

 冒険者ギルドはそんな世間の悪評を払拭しようと、清く正しい優等生な冒険者を育成した。彼らは国の規律を守り、思いやりに溢れ、ついでにいうのなら全員ルックスも良かったので、少しずつだが冒険者の評判は回復していった。

 しかし目を見張る結果を打ち出すのは決まって本来の冒険者、つまりは暴力大好きな無法者ばかりであった。

 自分の命にも頓着がなく、他人を傷つけるのにも躊躇がない。

 

 そういう意味でジャック・バルバスは実に冒険者らしい男だった。

 

「ザコ共の顔色伺う生き方なんてゴメンだね。俺は好きに生きて、そして派手に死んでやる!」


 と、彼は酒場でよく語っていた。

 体格の良い青年。金色と黒が混ざった髪を乱雑に切りそろえている。凶暴な三角眼に、ナイフの傷が目立つ顔。

 23歳の若さで一流の冒険者とも称されるA級に昇格。

 攻略不可能と呼ばれていた難関ダンジョンを単独攻略。

 都市を滅ぼそうとしたドラゴンを、これまた単独で討伐。

 英雄と称されても良い働きをしていたが――その働きを帳消しにするくらいに普段の素行が悪かった。


 酒場での乱闘は日常茶飯事。

 気に入らなければ依頼主も半殺しにして、かといって自分に媚びてくる依頼主も、それはそれで気に入らないので半殺し。

 元いたパーティーでは、メンバーの一人を再起不能なまでに痛めつけた末に追放処分。

 依頼で手に入れた金は全て一日で使い切るほどの豪遊。

 刹那的な生き方しか出来ないロクデナシ。

 それがジャックという男だった。


 そんな彼はある日。難関ダンジョン『吸血鬼の城』へと挑み、消息を絶った。

 周囲の人間は「ようやく死んだのか!」と喜んだが、その喜びは長く続かなかった。

 残念なことにジャックは生き延びて帰ってきた。


 生還した彼は突如として奇妙なことをやり始めたのだった。


 ――冒険者の街。中央区画。かつては道の至る所にゴミが捨てられ、不審者がたむろする区画であったが、冒険者ギルド主導による都市再開発で生まれ変わった区画。

 道は舗装され、美しい街路樹が街を彩る。様々な出店が整然と並び、恋人連れや家族が仲睦まじく歩く。

 無法者が綺麗さっぱり排除された区画。

 その区画にあるオシャレな喫茶店にジャックはいた。

 

 喫茶店のテラス席。三人掛けの白い丸テーブル。

 真ん中の椅子にジャック、若い男女が向かい合って座っている。

 一人は赤い髪の青年。A級冒険者のウィル・エリト。19歳。

 ギルドにも押されている清廉潔白な冒険者の一人である。

 礼儀正しく仲間思い。実力者だが、自分の力を誇示しない。顔立ちも整っている。

 ジャックとは正反対の青年だったが、彼はジャックに呼び出されて来たのだ。


「悪いな。ウィル。忙しいところ、わざわざ来てもらってよ!」


 とジャックはわざとらしいほどテンション高めで、ウィルに笑いかける。


「い、いえ。先輩の頼みは断れませんので」

 

 とウィルは力なく笑う。

 断ったら何をされるのか分かったもんじゃない、とウィルの表情にはそう書いてあった。

 ウィルは遠慮がちに、自分の正面に座る少女を見る。


「そ、それでジャック先輩。彼女が……?」


 ウィルの正面には小柄な少女が座っていた。

 10歳ほどの体躯。黒いフリルがついたドレスを身に纏っているが、それでも華奢に見えるほど体は小さい。

 長い銀色の髪。傷一つない白い肌。濃い青色の瞳。

 動かなければ、人形かと見間違うほどに、少女の外見はどこか人間離れした美しさがあった。

 日光を避けたいのか、テーブルに立っている傘に隠れるように座っている。


 ジャックは大げさな手振りで少女をウィルに紹介する。


「紹介が遅れたな! この子は俺の……あ~。遠縁の親戚の子供で、リエルという名前だ!」


 ジャックの紹介に応じて、リエルという名前の少女は控えめに首をかしげて微笑む。

 

 ジャックは興奮した様子でまくしたてる。


「こんなガキみたい……じゃねぇや……若く見えるけど、お前と同じくらいのレディだ!! そんでもってリエルはお前のことが気になっているみたいだ! ウィル! お前も恋人はいねぇだろ!? な!? な!?」


「は、はい。一応……」


 『恋人がいたらぶちのめす』と言わんばかりのジャックの表情に気圧されて、ウィルはおそるおそる頷いた。


 ジャックはバンと自分の両手を叩いた。あまりの音の大きさに、周りの客が一斉に飛び上がった。


「素晴らしい! これぞまさに天の采配ッ! こうして若い男女が出会えたことこそが、マジで運命といえるだろう! この出会いを無駄にする訳にはいかない!

 折角だから……こう! お互い良い感じに話したり遊んだりするのはいかがですかね! というのが俺の要件だッッ!」


 謎の美少女リエル。

 リエルが気になった男性を、度々ジャックが引き合わせてきた。

 ダンジョンから帰ってきたジャックは少女リエルの『恋人探し』をするようになっていた。


「ウィル! リエルはまじでいい女だ! 特技はえ~と……長所は……まぁ、沢山あるから探してみて欲しい!」


 既に恋人探しはウィルを入れて8人目だが、まだ恋人はできていない。



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