エルフの興味
「側付き魔法使い」の続きです。
指名が終わり、先生が穏やかに全員を見回した。
「それじゃあ、各自3年生の魔法研究室に着いて行ってね。今日はそこで先輩と顔合わせだから。」
教室が少しざわつき、1年生たちが先輩たちと一緒に動き始めた。
ニュートはエルフの女の子を見上げて、軽く緊張しながら言った。
「えっと…よろしくお願いします。」
彼女は優雅に頷き、「こっちだよ。ついてきて」と軽く投げかけるように言った。
長い金髪が揺れ、透き通った瞳が俺をちらっと見てニュートは慌てて後ろに付いた。
研究室に着くと、そこは魔法の香りが漂う不思議な空間だった。
棚には分厚い本や光る石が並び、机には魔法陣の描かれた紙が散らばっている。
エルフの女の子が扉を閉めて、ニュートの方に振り返った。
「ところで、君、自己紹介がまだだったな」
「あ、そうですね。俺、ニュートって言います。よろしくお願いします。」
彼女は小さく微笑んで、自己紹介を始めた。
「私はフレスト・アーツだよ。フレストでいい。エルフ族だ。」
「フレスト先輩…了解しました。」
彼女が軽く首をかしげて続けた。
「ふむ...君は平民なんだろう?」
ニュートはちょっと驚いて答えた。
「はい、そうです。実は、なんで平民の俺を指名してくれたのか気になってて…。 どうしてなんですか?」
フレスト先輩は目を細めて、答えた。
「人族であんな風魔法を扱えるなんて、興味が湧かないわけないだろう? あの試験の時、的を精密に回した技術見て、放っておけるわけがないじゃないか。」
その言葉に、ニュートはちょっと照れた。
同時に、フレストは別の気づきを得ていた。
ニュートの魔力に触れた瞬間、彼女の鋭い感覚が何かを感じ取った。
異常なまでに大きな魔力が、まるで強制的に隠されたかのような痕跡。
それは普通の人間にはありえない、不思議な気配だった。
(この子…何かを隠してるのか?いや、隠されてるんじゃないか。)
彼女はその思いを口には出さず、静かに観察を続けた。
「いや、そんな大したことじゃないですよ。たまたまうまくいっただけですし…。」
フレスト先輩が軽く笑って、側付きの説明を始めた。
「へえ、たまたまね?まあいいだろう。さて、側付きとしての身の回りの世話だけど、 そんなに難しくはない。部屋の掃除と洗濯くらいだな。」
ニュートは目を丸くして聞き返した。
「え、洗濯と掃除ですか?」
フレスト先輩は女性に疎いニュートが見てもかなり美人だ。
彼女はニュートの表情に気づいたのか、ニヤリと笑ってからかった。
「何だ、その顔?やましいことでも想像してるんじゃないか?」
「ち、違いますよ!ただびっくりしただけで…!」
ニュートが慌てて否定すると、彼女は楽しそうに笑った。
「ふふ、冗談だよ。そんなに慌てる必要ないだろう?
そのほかの時間は魔法の研究やトレーニングに使うから、ちゃんと付き合うんだよ。」
「入学初日だし、疲れたんじゃないか?とにかく今日は部屋に戻って休んでおけ。」
フレスト先輩が軽く肩をすくめて、少し気遣うように言って、ニュートを研究室の外まで見送ってくれた。
「はい、ありがとうございます。じゃあ、また明日…。」
ニュートは軽く頭を下げて、フレスト先輩の微笑みを見ながら部屋を出た。
頭の中は、風魔法のことやフレスト先輩の言葉でぐるぐるしてたけど、
とりあえず休もうと決めた。
新しい生活の始まりが、こんな形で動き出すなんて、まだ信じられない気持ちだった。
数ある作品の中からご覧頂きありがとうございます。
続きは
「魔法の基礎」
になります。
投稿は高頻度を目標にしているので何か感想等頂けますと活動の励みになります。また万が一気に入って頂けたらブックマークをお願いいたします。




