表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/24

4.後宮2

 一年前・後宮「白の離宮」――――



「シャーロット妃様におかれましては、今日からこの離宮で過ごしていただきます」


 そういって恭しく頭を下げたのはこの白亜の宮殿の侍女長。その背後に控える数十名の侍女も揃って頭を下げている。彼女たちの態度に思うところはない。ないのだけれど……。


「私は()()()だと聞いていたのだけれど?これはなにかの間違いではないかしら?」


 聞いていた話と違う。

 “中級妃”として後宮入りするという話だったのに、なぜ自分が“上級妃”として扱われるのか理解できなかった。


 どういうことなの?

 お父様からはなにも聞いていないわよ?


 その疑問に目の前の侍女長は眉ひとつ動かさずに言葉を返す。


「いいえ、間違いではございません。この度、新たに()()()()()()がおこなわれましたので、以前いらした方は別の場所へと移られました」


「……そういうことね」


 つまり、新しくきた妃()のために前の妃は別の建物へ移されたのだ。

「妃の配置換え」と言葉を濁しているがそういうことだ。自分のために前の上級妃は中級妃に降格と相成ったのだろう。そして、本来なら中級妃の自分は上級妃へ昇格となったわけだ。


「白の離宮」の上級妃はたしか私と同じ侯爵令嬢だったわよね。陛下よりも年上の方だったはず。なら二十代の後半くらいかしら……?


 忖度された結果だろう。

 誰がしたのかは分からない。

 それでも同じ侯爵家出身とはいえ、相手よりもカールストン侯爵家の方が格上だと判断されたのだ。


 あながち間違いでもないから否定できない。 


 子供のいない妃ということも関係しているはずだ。

 もう一人の上級妃は公爵令嬢で王女を産んでいる。降格はまずありえない。


 王族を生まない侯爵家出身の妃より、新しく入った侯爵家出身の妃を優遇するのは当然のことだった。ましてや相手(元上級妃)の実家は、侯爵家といえども既に力を失って久しい。


 資産、宮廷での立場を考慮した結果の忖度。

 後宮の管理人は中々のやり手のようだ。



「今日からよろしくお願いしますわ」


 こうして私は不本意ながら新たな住まいとなる「白の離宮」へと足を踏み入れた。

 この時からすでに嫌な予感はあった。

 そして、それはすぐに現実のものとなってしまった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ