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23.誠意

 本当は弁護士を通じての話し合いでも良かった。

 でもねぇ。話し合いは愚か、冤罪を着せてその上、一方の話だけを鵜呑みにする人達が同じテーブルに着くとは思えない。

 そもそも話し合いに応じるかどうかも分からない。話が通じる相手でもなかったし、再び私刑に走らないとも言い切れなかった。


 言い訳になるけれど、無理やりにでも同じテーブルに着かせるためには『内容証明』を送り付ける必要があったのだ。

 なにしろ、相手は王家も含まれているのだから。

 現役の国王を相手に喧嘩を売る。

 先に喧嘩を売って来たのは向こう側だとしても、この国のトップとやりあうのだ。どう考えても分が悪い。


 我が家の顧問弁護士が如何に優秀でも流石に王宮に殴り込みをするわけにはいかなかった。

 更に冤罪の証拠を「なかったこと」にされても困るし。あの連中のことだ。「嘘の証拠だ」「捏造だ」と言いかねない。


 非常識な相手に「話をしたい」とこちらから呼び掛けるのは危険過ぎた。


 うっかり弁護士が()()()()()()()()()に遭わないとも言い切れない。


 その点、『内容証明』ならば、「いつ」「誰が」「誰に」「どういう内容を送ったか」をきっちり明記され、郵便局という独自の組織がきちんと証明してくれる。安全面を考慮すればこれに勝る方法はない。


 もちろん、受け取り拒否もできる。遭えて無視するのもいい。そこは自由です。尊重しましょう。

 ただし、その場合は「法廷で会いましょう(全面戦争)」となります。


 私としては別にどちらでも良かった。

 勝のは私ですから。

 向こうと違って証言だけで罪人にするようなお粗末な事はしません。

 一人一人にきちんと証拠を提出してあげましょう。裁判になれば『内容証明』は有利に働くでしょうから。


 言い逃れは出来ませんし、裁判官に泣き落としは通じません。


 だって、「受け取った」「受け取りを拒否した」という事実は明記されますから。


 知らなかった、という言い訳は通用しません。


 これで「知らない」というのなら、「家族ぐるみで隠蔽しようとしている」と見做されても仕方ないでしょう。


 常識のある親なら『内容証明』を受け取った時点で家族会議が始まる筈です。

 その後、弁護士と話し合い事実確認をするでしょう。弁護士はその確認をもって漸く「『内容証明』に間違いはない」と判断して対策を立てます。


 貴族が裁判で訴えられる事態を如何にして防ぐかについてを――――



 裁判は、記録に残ります。

 それがどんな意味を持つかは考えるまでもありませんよね。

 本人だけの問題ではありません。家そのものの問題に発展します。彼、彼女達の兄弟、親族の将来のことを考えれば決して軽いものではありません。


 家にまだ未婚の令嬢がいれば悲惨でしょうね。

 『内容証明』を送られて裁判沙汰になった者が家族にいる、もしくは「一族にそういう非常識な者がいるということは彼女もそうなのでは?」と見られます。誰だって問題を起こすかもしれない人間を家族や一族に迎えたくはないもの。リスクを犯すに値するメリットがあれば話しは別でしょうが。

 普通に考えて良縁は無理というものです。

 婚約している方は解消される恐れすらありえる状況。

 結婚している方は離婚でしょうか?


 ……未婚の令嬢でなくても悲惨かもしれません。


 こちらも鬼ではありません。

『誠意』さえ見せてくれたら穏便に済ませて上げても良いと思ってます。

 裁判だとアレな部分は追及しないであげたり……考慮してあげる私は随分とお人好しだと我ながら呆れているくらいです。

 もっとも『誠意』の見せ方が悪かった場合には覚悟はして貰いましょう。


 そこのところをよ~~く考えて行動して欲しいものです。



 後日、王家を始め各家から謝罪と莫大な慰謝料が私個人に支払われました。

 嫌がらせと言う名の犯罪行為を行った妃たちは後宮を去り、各家で軟禁または修道院入りとなったそうです。詳しいことは知りません。

 ただ、全面降伏していたのは間違いないらしく、お父様は「これでやり易くなった」と喜んでいました。少し遠い目をしていのは気のせいでしょう。ええ、若干顔色が悪く震えていたことは気付かないフリをしておきました。

 他にも言いたいことはありましたが、まあ、いいでしょう。

 なにはともあれ、終わりよければ全てよし、です。

 この件があったこともあり、我が家を恐れる貴族が一気に増えてしまったようでした。


「侮られるよりも恐れられた方がまだやりやすい」と兄は嬉しい悲鳴を上げていましたので問題はないのでしょう。



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― 新着の感想 ―
×は愚か ○は疎か
内容証明だけでなく、配達証明付きの郵便が宜しいかと存じます。 公営とはいえ、配達員が故意に或いは不注意から、郵便物が相手側に届かない場合が 稀にあるかと思います。
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