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涙、全ての色

ウミネコの一件があってから。

俺は、シロネコさんとの距離を置くのは、

ウミネコの思い出に対する逃げと思って、

俺はガンガン話すように、がんばってみた。

シロネコさんは、ウミネコの思い出を楽しそうに話す。

本当に、楽しそうに。

そして、話し終えてから、ちょっとさびしそうで、

「空を飛べたらいいでしょうね」

と、空をじっと見る。

「シロネコさん。どこか、行きたいですか?」

俺は知っていて、問う。

きっと、ウミネコのところに行きたいのだと、そう思って。

「俺でよければ、いつか飛びますよ」

俺は繰り返す。

いつか飛べると。飛ばなくちゃいけないと。

シロネコさんは俺のほうを向いて、

「ありがとう。優しいですね、トビウオは」

さびしそうに、笑う。


「シロネコさん、そんな笑顔じゃ飛べません」

俺は、シロネコさんの両肩をつかんだ。

「俺は、優しくもありません」

シロネコさんの目をじっと見る。

蜂蜜のきれいな目は、驚きで見開かれている。

「俺は、独りよがりの道化です。今までも、これからもきっと」

「トビウオ…?」

俺はうつむく。

ひどい顔は、見られたくない。

今、シロネコさんは俺をなんだと思っているだろう。

顔を上げるのが、怖い。

「泣いているのですか、トビウオ」

「道化は泣きません」

「道化、なんですね、いつでも」

そうだと言おうとして、

俺は、シロネコさんの肩が震えていることに気がついた。

顔を上げれば、シロネコさんが、涙を浮かべていて。

大慌てして言葉をかけようとする俺より前に、

シロネコさんが、言う。

「トビウオ。涙が止まらないんです」

きれいなきれいな涙が、あふれて落ちる。

泣かせちゃいけない。

「ごめんなさい」

俺は、謝る。

「ごめんなさい」

俺は、本当に、シロネコさんを泣かせたくなかった。


シロネコさんはしゃくりあげて泣く。

「道化のあなたの代わりに、泣いているのです」

シロネコさんは言う。

「トビウオ、これはあなたの涙です」

俺は、シロネコさんの頬にそっと触れる。

涙はきれいな色をしていた。

本当に、泣きそうなくらいきれいな。

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