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父は変わる

「いきなり何を言っているのだ。まったくわけがわからん」

国王に定例の事業報告をおこなったあとアーネストは辞意を表明した。いきなりの出来事に国王以下重鎮たちは驚きを隠せない。

「息子に父親はいらないとか娘にあなたは誰、とかいわれるのは父親としてどうなのでしょうか。もっと子供たちの身近な存在として、また大事な家族としてそばにいなければと、今日一日考えたうえでそういう結論にいたりました」

アーネストは淡々と、しかし、はっきりと理由を述べる。

「気持ちはわかる」

重鎮たちはアーネストの言い分に理解を示す。帰宅できない理由の一端は彼らにある。

「だが、辞職を認めるわけにはいかない。ここで君に抜けられるのは国家に多大な損失を与えることになる。それだけ君は国家にとって重要人物であるのだという事を理解してほしい」

「しかし……」

アーネストの決意は固い。重鎮たちは困っていた。どうすべきか、すると

「一度子どもたちを連れてきたらどうだ」

国王は意外な提案をした。

「どういうことでしょうか?」

アーネストは国王の提案に戸惑った。

「子供たちに自分の仕事ぶりを見てもらえばよかろう。自分の父親がいかに国家のために尽くしているかを直に知れば邪険にあつかわれることはなかろう。私の息子も私の仕事を直に見ているからな。いかに大変か、いかに重要か、ということがわかってもらっていると思う。なあ、アーネスト、正直言うと私は君がいないと何もできないのだよ。特に財政は国の根幹、こんな大事なことは君にしか任せられない」

国王のその言葉にアーネストは感動した、と同時に周りにいる重鎮たちの妬み、嫉妬を感じていた。平民出身の彼がもっとも重用されていることが彼らは気に食わなかった。

「分かりました。いったんこの件は保留とさせていただきます」

「撤回はしないのだな」

「子供たちの反応を見て今後の対応を考えたいと思います」


この件はこれで一旦終了となった。気持はわかるがよく考えろと説得しようとした者以外は苦々しい表情を浮かべる。

「さっさと辞めさせればよかったのに」

「まったくだ、なぜ陛下はお止めになったのだ。平民に国家財政を任せるなどと」

彼らは口々に不満を述べる。そんなに彼らを見ながら溜息を付くものが一人、

「平民も貴族もない、能力があってやる気に満ちている者に任せるのがなぜいけない。彼こそが適任なのだ。彼がいなくなればこの国はいずれ破綻する。そのときに後悔してももう遅いのだそ。それがなぜわからん」 

そう思っていたのは国王とその者だけだった




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