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8.カイル視点②

「今日もリリアンナちゃん来てなかったな」

「公開練習の時はいつも来てたのに」

今日も今日とて訓練後の部下たちは騒がしい。


もう少し厳しくするべきだったな。

カイルはため息を吐いた。


大体なんだ。

リリアンナちゃんて、馴れ馴れしい。

仮にも侯爵令嬢に対して無礼にも程がある。


「最近、リリィは来てないんだね」

イラついていたカイルの後ろから聞き覚えのある声がした。


「殿下」

慌てて礼を執ろうとするのを、ジルベルトは必要ないと手を振った。


「騎士団の訓練をよく見に来てるって聞いてたんだけど」

「少し前までは、確かに見学に見えてましたよ」

「ふーん、リリィのお目当てが誰か知ってる?」

面白がっているようでいて、油断ならないような鋭い目をしている。


「いえ、差し入れは頂いてますが、特に誰にという感じではありませんよ」

そう言えば、キースが彼女と喋ってたなと思い出した。

話しかけられても、少し困ったような顔をしていたし、あんなちょっと軽薄な感じの男では彼女には相応しくないが。


「全く伝わってないな」

ジルベルトが嘆息して小さく呟いたがカイルには聞き取れなかった。


「リリアンナ嬢に何か用だったのですか?」

ここまでやって来るのだから、何か急用なのかと尋ねた。

「いや、そう言うわけじゃないんだ。リリィは大事な義妹だからね。確かめてみたかっただけだ」


「そう、ですか」

忙しいはずのジルベルトがこんな風に世話を焼きたがるなんて珍しい。


殿下とシンシア様が婚約した当時から、本人が意図したものかは分からないが、リリアンナ嬢は二人の間を行ったり来たりして、二人の仲を取り持っていたようだった。


そのせいか、殿下は殊の外リリアンナ嬢を可愛がっていた。

きっと、リリアンナ嬢が変な男に騙されていたりしないか気になったのだろう。



「ところで、来週、シンシアとリリィと一緒に街に行くんだが、カイルもついて来いよ」

「は?護衛ですか?」

王太子夫妻には専属護衛がいる。

それ以上に必要ということなのか?


「まぁ、護衛でもいいけど、リリィの相手をしてやってくれ。カイルならリリィと顔見知りだし」

「わたしでいいのですか」

わざわざ指名してくる意味が分からない。

「他にリリィに相応しい奴がいるのか?」

「いえ、いませんけど」

咄嗟に答えてしまったが、これでは自分が一番相応しいみたいじゃないか!


「ひとつ訊いておくが、リリィと一緒にいるのを見られるとまずい相手とかいるのか」

ジルベルトが探るようにカイルを見た。

「残念ながら、そんな相手はいませんよ」

この間も、久しぶりに姉が訪ねてきていい人はいないのかとしつこく訊いてきたなと思い出して、苦笑した。


「そうか。ならいい。詳しいことはまた連絡する」

話は終わったと、踵を返したジルベルトが振り向いた。

「お忍びなんだから、間違っても隊服なんて着てくるなよ」

ニヤッと笑って、去って行った。


殿下は昔から悪戯小僧みたいなところがある。

きっと何かあるんだろうなとは思うものの、そう悪いことではないだろう。


それにしても、リリアンナ嬢とお出かけか。

いつも恥ずかしげに話す彼女を思い出して、ほっこりしていると

「どうした?何かいいことでもあったのか?」

バルトが不思議そうな顔でカイルを見ていた。


「いえ、そんなことないですよ」

「顔がにやけてるぞ」

慌てて顔を引き締める。


「お前でもそんな顔するんだな。まぁ、楽しんで来い」

少し笑いながら肩をぽんぽんと叩いた。

バルトも近くで話を聞いていたらしい。

全く人が悪い奴ばかりだ。


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