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カイルに気持ちを伝えようと決めたリリアンナだったが、どうやって伝えればいいのか悩んでいた。
あぁ、前世の記憶まであるのになんでこう恋愛についてはなんの手立てもないんだろう。
前世でも年齢イコール彼氏いない歴で、一つも役立つ知識がない。
残念ながら乙女ゲームの知識なんて実際には役に立たない。
だって、私はヒロインじゃないんだもの。
何もしなくても、偶然会えるなんてことはないし、選択肢があって、選べばいいなんてことはない。
まずは会わないと始まらないけど、リリアンナが訓練場に行かなければそもそも接点がない。
だからと言って、あんなにたくさんの人のいる前で告白なんてできるわけない。
手紙?いやいやないない。
そんなの誰に届けてもらうの。
どう書いていいか分からないし、後々まで残るなんて怖すぎる。
「オリビア、告白ってどうやってすればいいの?」
リリアンナは色々検討した結果、親友を頼ることにした。
「そんなこと自分で考えなさいって言いたいところだけど、ずっと初恋拗らせていたリリィだからね」
オリビアは漸く前に進もうとするリリィを優しい目で見た。
「リリィのお姉様に相談したらどう?もうリリィの気持ちは知っているんでしょ?カイル様と二人で話せるように機会を作ってもらったらどう?」
「う〜ん、わざわざお姉様の手を煩わせていいのかしら」
姉とは言え、王太子妃なんだから色々忙しくしているはずだ。
こんな個人的なことで頼っていいのかな?
「むしろ頼って欲しいと思ってるわよ。きっと」
オリビアは何故か自信あり気に頷いた。
「分かった。確かに協力するとは言われたし、ダメ元でお願いしてみるわ」
「相談って何?」
侍女がお茶を淹れて部屋を出て行くのを待ちかねたようにシンシアは早速話し始めた。
「カイル様のこと?」
目をキラキラさせて詰め寄ってくる。
リリアンナはちょっと引きながらも頷いた。
「気持ちを伝えようと思って」
「漸くなのね。それで?」
嬉しそうに話の先を促した。
「二人で話す機会がないから、どうしたらいいか分からなくて」
「そうね。確かにみんなの前でなんて無理よね」
シンシアがどうすべきか考えていると、ノックもそこそこに入ってくる人がいる。
もちろん、ジルベルトだ。
「リリィ、シンシアに相談があるんだって?」
ジルベルトがニコニコしながらシンシアの隣に座った。
「王太子殿下…」
リリアンナが言いかけるのにジルベルトは被せてきた。
「ジルお兄様だろう」
暫く無言のやり取りをしたが、今日もリリアンナは負けた。
「ジルお兄様、なぜこちらに?」
「リリィが相談してくれるなんて初めてだろう?わたしも相談にのるよ」
ウキウキしたような顔をしている。
お姉様だけに相談する気だったのに、話が大きくなりそうな予感に、遠い目になる。
「分かった。二人で話せる機会を何とか作ってみるよ。だから、ちょっと待っていてくれるかな?」
ジルベルトは少しの間考えると、何事かを決めたようだ。
「ありがとうございます。でも、くれぐれもカイル様には何も言わないで下さいよ。絶対無理に話を進めないで下さい」
ジルベルトが無理矢理推し進めたりしないように念押しをする。
「分かってるよ。少しは信用して欲しいんだけど」
やれやれとばかりに肩をすくめた。
ちょっと念押しをし過ぎた。
「ごめんなさい。頼りにしてます、ジルお兄様」
「任せておけ」
ジルベルトはお兄様呼びに満足そうに笑った。
心強い味方が出来たので、ジルベルトから連絡が来るまで待つことになった。