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騎士団の公開訓練はお目当ての騎士を見ようと集まる若い女性たちでごった返している。

いつものことで、リリアンナは愛しのカイル様には話し掛ける勇気がなく、差し入れを手近にいる騎士に

「皆様でどうぞ」

と言って渡して来るだけなのだ。


「リリィ、こっち来て」

リリアンナの恋に協力を申し出てくれたオリビアに呼ばれて、他の人が入れない騎士たちが通る通路に引き入れられた。


「ここは関係者以外立ち入り禁止でしょ?大丈夫なの?」

小心者のリリアンナはドキドキだ。

「大丈夫大丈夫」

オリビアは軽く受け合うと、訓練場を出て通路を歩いて来る騎士たちに手を振った。


彼らは目の前まで来ると、物珍しそうにこちらを見た。

その内の20歳くらいの人懐っこい感じの青年がオリビアに話しかける。

「今日は珍しく見に来てくれたんだね。ところでオリビア、そちらの御令嬢は?」


「私の親友のリリアンナよ」

オリビアはとっても簡潔に紹介した。

もうちょっと説明して〜


内心の焦りを隠して

「リリアンナ・キリシマールです。どうぞお見知りおきを」

優雅に挨拶した。


キリシマールの家名に驚いた顔をしたものの、すぐに元のにこやかな笑顔に戻った。

「オリビアの婚約者のクリス・レイトルです」

婚約者⁉︎

クリスはどどーんと爆弾を落としてきた。

え?オリビアの婚約者の伯爵家の次男って騎士だったの⁉︎


驚くリリアンナの傍でオリビアとクリスが話を進めていた。

「副団長様はまだ訓練場にいらっしゃるの?私たち、副団長様にお会いしに来たんだけど」

「オリビアは俺に会いに来たんじゃないの?」

オリビアのあけすけな言い方にクリスは苦笑した。


「副団長ならもうすぐここを通ると思うよ。ところで副団長にどんな用事なの?」

「用事があるのはリリィよ」

二人が話しているのをソワソワした気持ちで聞いていると、訓練場の方からカイルが歩いて来るのが見えた。


キタキタ来たー!

え?私、何話せばいいの?


混乱するリリアンナをオリビアはカイルの前にグイッと押し出した。


久しぶりに間近で見るカイルは精悍な顔つきに磨きがかかっている。


訓練の後の為、黒髪は若干汗で湿っていてツヤツヤと輝いている。

大人の色気垂れ流しだわ!


突然のことに脳内が処理できず、内心ワタワタとしているものの、表面上は淑やかに礼をした。

残念ながら顔が赤いのだけは誤魔化しようがなかったが。

「お久しぶりです。サンダリー副団長様」

突然現れたリリアンナに驚いた顔をしたもののすぐに目元を和らげた。

「リリアンナ嬢ですか。お綺麗になられましたね」

おっお綺麗に!って!

だっダメよ。調子にのっては!

私はしがないただのモブ。

華のない地味な容姿なのだから。

お世辞に違いないわ。

リリアンナはにやけそうになる顔をなんとか引き締めた。


「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」

「いや、お世辞っていうわけでは」

言いかけるカイルにサンドイッチの入ったバスケットをグイッと差し出した。

「サンドイッチです。皆様でどうぞお召し上がり下さい」

「あっありがとうございます」

カイルは突然差し出されたバスケットをびっくりしながらも受け取った。


初めて差し入れを直接渡せたリリアンナはそれだけで満足してにこやかに微笑んで、その場を去ろうとした。

その気配を察知したオリビアはリリアンナの腕をがっと掴んだ。

「クリス・レイトルの婚約者でリリアンナの友達のオリビア・バセリーです。不躾で申し訳ありません。また、リリアンナと一緒に訪れてもよろしいですか?」


オリビアの勢いに押されたのか

「もちろんいいですよ。こちらこそ差し入れまで頂いて申し訳ない」

ちょっと驚いた顔をしつつも了承してくれた。


ありがとう!オリビア!

これで気兼ねなくカイル様を見に来れる!


内心オリビアに感謝の涙を流しながら、表面上は淑やかに

「ありがとうございます。それでは、失礼致します」

礼をしてその場を去った。


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