6話親睦会その二
待ち合わせ場所は、大隈くんの家となっている。
「よお!春馬!今日は早いな!」
そう僕を出迎えてくれたのは大隈くんだ。
「早すぎたかな?迷惑かけちゃってたらごめんね。
思ったより早くついちゃって。
「気にすんなって!俺も早くみんなと遊びたくて集合の1時間前からスタンバッてだし、な?」
「うん、助かるよ。」
大隈くんは、黒のTシャツに黒のスキニーと全身黒でコーデされてるかと思ったら、靴下はグレーで靴は黒よりの緑のスニーカーで、なかなかかっこいい私服だ。
服を普段ろくに買えず、センスも普通以下だろう僕が
大隈くんを上から下までじろりじろりと見ている間に、
「お待たせ!春馬くんと大隈くん!」
女子が3人一緒に揃ってきたようだ。
わぁお。
思わず僕と大隈くんは息を呑む。
水野さんはシンプルなTシャツにショートパンツで、
メッシュキャップを頭にかぶっていて、
ボーイッシュなコーデにしてきたようだ。
佐藤さんはぶかっとした長袖の白Tの袖を2回くらい織り込まれ、手首の透き通った肌をきれいに出している。
さらに台形ミニスカートと、誰が見てもオシャレだと
思える服装で個人的に好みである。
安土さんは、青と白で統一されたジップアップスポーティーのシャツとワンピースが組み合わさっているコーデに大隈くんは、僕に小声で、
「安土さん、やばい、タイプかも」と顔を赤くしている。
3人がきてから数分後、桐谷くんが来た。
「あれぇ?俺が一番遅かった感じ?」
「まだ待ち合わせ時間過ぎてないよ」
と僕がいう。
「おう、ならよかったよ。
じゃあみんな行こっか。」
さすがイケメン。
イケメンで終わり、イケメンではじまるって感じか。
僕は妙に納得してしまった。
今日の桐谷くんは半袖の白Tに、黒のスキニー、、
そしてピアスを両耳にし、髪型も丁寧にセットされてある。
そして仕上げに生地の薄い大きめのジャケットを羽織っている。
圧倒的な強キャラ感がする桐谷くんに僕の肩身が狭く感じる。
みんなが集合したところで、天津パークにつくリニアモーターカーに乗る。
この王国の技術革新にはいつも驚かされる。
でも、貧民街で暮らす僕を含む人々は、技術革新の恩恵を受けることはあまりないだろう。
お金がないのだから。
僕のようにまだ若い人は、仕事をもらえるが、
50歳以上の貧民は、探しても仕事をもらえず、
金がなくなっていくばかり。
次第に犯罪などに手を出さざるを得なくなる。
明日を生きるために。
僕はこの王国が抱える一つの問題を考えつつ、窓の外から景色を見ていた。
こうしてみると、この王国はどの建物もとても美しく、
貧民街の姿など一切見えないように高さのある建物に遮られているようだった。
きっとみんなも貧民街自体どこにあるかもわからないだろう。
そんな、普通の生活ができるみんなが羨ましいと思いつつ、ないものねだりは自分を苦しませるだけだと自分自身を言い聞かせてほっぺを2回叩く。
その様子が可笑しかったのか、
みんながくすくすと笑い出す。
「ちょっと春馬くん、どうしちゃったの?w」
「なんでもないよ水野さん」
「なんでもないわけあるかい!」
大隈くんがツッコミを入れる。
そして、しばらくリニアモーターカー内で
くだらない話を僕たちはするのであった。
「ついたみたいだね、天津パーク。
人がい〜っぱいいるね。」
桐谷くんが人の多さに驚いているようだ。
ーそれから2時間後ー
「いやぁあそんだ遊んだ!
てゆうか広すぎて1日だけじゃ全て回りきれないなこれ!」
興奮気味に大隈くんがいう。
僕たちは、からおっけで2時間熱唱した後、疲れたので休憩とパフェ屋で休憩しながらパフェを食べている。
人生で初めて食べたパフェの味に僕は感動してしまい、
みんなに引かれるほど涙を流していた。
「さっきも思ったんだけどさ、
みんなでより仲良くなるためには下の名前呼びしない?」
桐谷くんがそう言い出す。
いいねいいねと水野さんと大隈くんも賛成して、
みんなを下呼びすることになった。
僕は、口の周りについたくりぃむを取るため、
安土さんの近くにある、ティッシュを取ってもらえるようにお願いする。
「瀬奈、さん。そこにあるティッシュとってくれる?」
僕の顔だけでなく、手にもいっぱいくりぃむがついてたのに瀬奈さんは優しく微笑んで、
「春馬くんって子供みたい、フフフ。
自分で拭けないだろうから、ちょっと動かないでね?」
その瞬間、桐谷以外の3人は唖然とする。
「うん、これで口の周りのくりぃむとれたよ!
手も拭いたあげるね…これでよしだね春馬くん、フフ。」
瀬奈さんとの距離が縮まり、口を拭いてもらった時は、
僕はときめきそうになってしまった。
なんて可愛い子なんだろう、って。
こんな笑顔が可愛い子なんて好きになっちゃうよ、
と甘い世界の中でふわふわと2人の時間を楽しんでいたら。
「えぇ…あず、じゃなくて瀬奈ってこんな積極的なんだ、
ハハハハ、」
水野亜美が、ちょっと怒ったような少しひき笑い気味の顔をする。
また、大隈く…じゃなくて淳くんも僕に対してちょっと警戒しているみたいだ。
「いや…そんな関係じゃないよ…ね?…
瀬奈さんが優しかったから少し甘えちゃったみたいな?」
僕はなんとか弁明しようとしたが、遅かった。
瀬奈さんは、無意識に僕の口を拭いたりしてくれたらしく、急に顔を赤らめて、今の行動に恥ずかしさを感じたのか、
「あ、わわわわわ!ち、ち、ちがうんです!
そんな春馬くんが気になってるとかじゃないし、
たまたま自分でくりぃむおとせないから取ってあげようかなって、春馬くんが好きとかじゃないんですほんととです、す、す…」
手で赤くなった顔を隠すようにし、下に瀬奈さんはうつむく。
「かわ…い、い。」
そう小さくはいてしまった言葉が桐谷悟くんに聞こえてしまったようで、
「ヒュゥー!お似合いですねそこのお二人サン!」
「べ、べつにそういうことはまだ早いよ悟くん!」
あ、コホン。
ただいま時刻11時30分、
現場は修羅場とかしています。
なんとかならないかな?ヴィーナス様、助けて。
…といっても助けに来るはずがなく、
もう終わったと思った時、思わぬところから救世主が
現れる。
「それより、午後の予定どうすんの?」
ゔぉぉぉぉ!ナイスゥゥ佐藤柚さん!
「提案なんだけどさ、
午後は二人でペアを作って過ごさない?
男女ペアでデート的な?」
あれ?桐谷悟っていう人間、
性格ドス黒い感じかな?
悟くんの顔を見た時、彼は、楽しそうにニヤニヤと
笑いを堪えているような顔をしていた。
ー思わぬ伏兵がいたかー
「いいね!それ!」
亜美さんはノリノリみたいだ。
「ナイスアイデア悟!
で、どう決めんのよ!」
淳くんくんもノリノリみたいだ。
ハァッー。今日ため息をつくことなんてないと思っていたが、こうなるとは…。
「ジャンケンで男子が勝った人から女子を選ぶってことにしよう」
「「ノッタァ!」」
やけに亜美さんと淳くんは気が合うのはなぜだろうか。
ー結果ー
僕×瀬奈
淳×柚
悟×亜美
っと僕が最初に勝ち、淳くんが2番目に勝ち、
悟くんが負けた形だ。
悟くんと亜美さんはどちらもゾンビのような顔つきになっていて、絶望の中で打ちひしがれているのだろう。
僕は、瀬奈さんともっとお話したかったので、
幸運と言えるだろう。
瀬奈さんによろしくねと手を振ると、
少し恥ずかしがって、手を挙げずみんなに気づかれないように腰くらいの位置で手を振ってくれたー。
次回ペアデート編!お楽しみに。