15話遠雷(前編)
遅れてすみません。
今日の天気は、薄暗く、重い空気が漂う曇りであり
今にも降ってきそうな空模様である。
過去に遡る事数日、
僕たちは、入学してたら今まで教室を使った授業は
一度もせず、戦ってばかりだった。
少しはしっかりとした勉強を学校でした方がいいのではと甚だ疑問に思うところがあったが、
先生曰く、
「勉強かぁ。お前らは一人で勉強した方が効率がいいじゃないか!違うか?」
という事らしい。
僕たちSクラスの生徒は皆、先生の教育方針に賛同したため今に至る。
「まぁ、わからないところがあったら俺には聞くなよ?
勉強なぞ今までの人生の中で無縁だったからなぁ、
ハハハハハ!
というわけだ生徒しょーくん!
お互いwin -winな関係を築いていこうぜ?ハハハ!」
と、本命は後者のようだ。
僕たちはいつも先生の話を聞く時につい
顎に目がいってしまう。
巷では既に〝顎将軍〟という呼び名がつけられているとか…。
先生の見た目は、いかにも戦士だと思える身体つきをしていて、がっちりとした身体に屈強そうな顔、
そして、特徴的な琥珀色の眼。
ここまでを聞いたら歴戦の中年ながらも渋いイケメンだと思うが、顎というマイナスポイントのせいで
プラマイゼロの普通という評価を女子生徒達の中でされている。
そしてどうやら僕たちの担任の先生は、
D.Eクラスの副担任もしているらしい。
シンプルに仕事が回るのかと僕は思ったが、
どうやら華麗にこなす執事でもなく、
忍者のように分身をするわけでもなく、
単に副担任の仕事はないに等しいらしい。
中には、喋り方が苦手、うざいといった酷評をする
D.Eクラスの生徒が一定数いるとか。
それらはさておき、僕たちは闘技場に着いた。
既に、Sクラスの生徒がちらほらと姿を見せているが、
皆いかにも話しかけてくるなオーラを全開にして、
入ってくる僕たちを睨んだ。
「今日はやけにピリピリしてるな、
一体どうしたんだ?」
秋良が睨まれた視線を乱反射させながらいう。
乱反射させた負の感情が果てなき空に届いたのだろうか、
次第に大粒の雨がぽつり、ぽつりと降ってきた。
それから間もなくして次第にぽつりと音を立ててから次にぽつりと音を立てるまでの時間が短くなっていく。
やがて大粒の雨は、膨大な数となって怒号のような〝ザァァァァァ〟ていう音に変化して、
闘技場の外には雨が降っていないのに〝まるで〟誰かが意図的に曇を作り、雨を降らせたとしかた思えないほどの勢いで闘技場だけに雨が発生した。
コートにいた僕たちは慌てて屋根のついた観客席へ向かう。
すると、屋根からは、ボボボォーという耳に直接入ってくる。そしてどこか心が少し沈むような音に僕は意識を飲み込まれた。
僕がおじさんに拾ってもらった時にも
今みたいな雨に屋根が打たれるような音が響く中
身につけていた服を頼りに縮こまっていたっけな…。
5歳の時、記憶を無くしてから最初に意識が戻ったのは、
海岸でだったな。
ほのかに感じる潮風や、
騒がしいほど荒れていた海の波、
そしてカラスが鳴いているのに気づき目を覚ました。
全身が濡れていて、意識を取り戻した直後に口の中からしょっぱい水が一気に出てきたのには苦しかった。
そして、そこで僕は海から見える地平線をぼんやりと
眺めていた後、遠雷がこちらに迫っているように見えた。
そして点と点は線につながった。
時期に嵐がこの地を襲う。
そして、僕は荒れ狂うであろう豪雨から身を守らなければいけない。
幼くして記憶をなくしていた僕でも、
身体が発する危機反応に気づいた。
といあいず逃げなきゃ…。
どこに?
海から離れたところ
それでも嵐は君を襲って、喰らうよ?
だから、僕を守ってくれるところに行くんだ。
君が逃げる事はできない。
絶対にー。
だから、大人しくその身を海へ委ねなさいー。
さすれば、君の魂を永遠の楽園に送り込んであげよう。
望むものは全て手に入る、
なくなった記憶も全て蘇る、
おもしろおかしな愉快な仲間たちが君を歓迎するよ。
入場料はいらないよ。
そのかわり、君の身体をいただくよー。
そう、海の奥底にいる何かに脳に直接言われるような気がした。
その何かは、僕に絶望を知らせにきてくれたのだろうか。
僕は、自分が何者かもわからないながらも
〝この言葉にだけは〟惑わされてはいけないと感じていた。
だから僕は必死に海から離れて、野原を駆け、
排気ガスに覆われた街を駆けた。
必死に…、必死に必死に
得体の知れない恐怖から逃げた。
そして僕は、薄暗いボロボロで今にも壊れそうな
屋根の下で美しく、そして儚く倒れた。
もう逃げられないんだ。
時期にこの屋根も壊れてしまう。
そう思い、僕は降ってきた雨にボロボロな屋根が打たれ、次第に壊れていく様を見続けながら身を丸くして
空を見た。
まん丸に美しく輝く月は、邪悪な曇に飲み込まれるように光を失い、姿を消した。
僕の頬にピチャリと雨垂れがする。
その時、聞いたことのあるような歌声が近づいてきた…。
あめにも負けズ………。
「おい、おい!おーい!!!大丈夫か春!」
急に今までの映像がまるで幻想だったかのように
現実に引き戻される。
「あ、うん。心配かけてごめん秋良」
「ったく、急に倒れるからびっくりしたぜ。
なぁ、進之介?」
「えぇ、後次の試合は僕と春馬だから準備しといてよ」
僕は、はっ!と今までの現実を思い出して、コートを見る。
そこでは雨ながらも、泥だらけで戦っているカルミアの姿と何やら神妙な顔つきをした先生がいた…。
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