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異世界転移の引きニート!〜新作オンゲを始めたらそこは異世界でした〜  作者: 彼岸花
第一章:オンゲと思ったら異世界でした
2/12

1-2

 浮島で出会った案内役のNPCである女神サテラに背中を押された私が意識を取り戻すと、そこは鬱蒼と木の生い茂る森の中だった。

 グランドファンタジア・オンラインでは、新規プレイヤーはまず拠点となる街の近くにランダムに現れる。


 プレイ開始から魔物が目の前に、とはならない様には配慮されてはいるが、勿論ながらここは魔物が彷徨いている戦闘エリアだ。

 少し移動すれば、魔物と遭遇し、戦闘となる事もある。

 私はまず、敵となる魔物が現れない内に、自分の情報などを確認する事にした。


 「メニュー」


 操作を言葉にすると、眼前に自分の姿とステータス、そしていくつかの項目が表示される。

 開いたメニューにはアイテム、装備、アビリティ、マップ、クエストなど、RPGにおける基本的な項目が表示されていた。

 まず装備を確認すると、右手にはワンド、頭にはとんがり帽子、身体にはローブ、足には革のブーツが装備されている。魔術師クラスの初期装備だ。

 勿論これらは本来ならば自身の服装に反映されているものではあるが、容姿設定で外観用装備の項目にマークし、特典であるデモニックドレスで上書きされている為、本来ならばありきたりな魔術師の姿であるところが、魔族のお姫様と言わんばかりの華美な姿となっている。


 それからアイテムは初期の持ち物としてライフポーション(小)とマナポーション(小)がそれぞれ3つがアイテム欄に表示されていた。

 ちなみにアイテムは選択すると手元に現れ、拾ったアイテムは念じるだけで自動的にインベントリに収納されていく。拾う動作はやや面倒だが、取捨選択は出来るのは地味にありがたい。


 今度はアビリティだ。

 アビリティはスキルに近い要素で、武器や防具を装備することで身につけることができる。

 装備を外すとその装備のアビリティも外れてしまうが、その装備を身につけた状態で敵を倒したり、アビリティを発動させる事で熟練度が上昇し、一定量を超えると装備を外してもアビリティは習得されたままになる。

 また一部のアビリティについては習得後も熟練度が上昇する。

 今装備しているワンドのファイヤーボールや、とんがり帽子のアイスブレットなどが該当するアビリティで、習得後も熟練度を上げる事で威力と燃費が変わってくる。


 マップは見てもまだどこにも移動していない為、殆どが黒塗りで、現在地の周囲と最寄の拠点にピンが刺されているだけで、その他の項目も殆どが黒塗り、真っさらな状態だ。


 ところで私はメニュー画面を見て、ある事に気付く。

 βテスト中にはあった筈のログアウトの項目が何処を探しても見つからない。

 運営の不手際だろうか、これではゲームを終了して現実世界に戻る事も出来ない。


 「えっと…ああ、運営に報告はできるわね。不具合報告を出して…と。とにかく、返信が来るまでじっとしててもしょうがないし、経験値を稼ぎながら街を目指そうかな。ナビゲート、ティバニア」


 このゲームにはナビゲート機能があり、ナビゲートと発言すると、指定した場所への最適なルートが視覚情報に追加される。

 今指定したティバニアは先程マップ上でピン刺しされていた拠点となる街であり、他にもいくつかの都市が拠点になる様に設定されてある。

 ティバニアは魔族勢力の拠点の一つであり、上級魔族を選択したプレイヤーはまずこの周辺に降り立つ事にになっている。


 メニューを閉じてミニマップ表示に切り替えると、周囲にはプレイヤーを示す表示がいくつかあり、また敵である赤点の表示も見えていた。

 

 「キシシシ…」


 赤点に近づいてみると、子猫ほどの大きさの蟻、アントソルジャーが餌を探している。

 餌を探しているといっても、襲う相手は自分よりも小さな動物や花の蜜であり、プレイヤーに襲いかかる事はないいわゆる非アクティブのモンスターだ。

 ティバニア周辺で最も弱い魔物の一匹で、βテスト中でも魔族を選択した初心者達がまず最初に戦う相手によく選ばれ、狩られていたモンスターである。


 「じゃ早速…ファイヤーボール!」


 「ギィッ!?」


 杖から火の玉を発生させてアントソルジャーの背後から撃ち込むと、アントソルジャーは哀れにも爆発四散し、煙をあげて消える。

 レベル1ながら正直この威力は明らかにおかしい。

 平凡な能力であれば、ファイヤーボールでも殆どが瀕死には陥らせるものの一撃では仕留めきれない程だ

が、流石にボーナスポイントを知力に大きく割り振った結果だろう。


 「わ…流石にレベル1だとその差がはっきりわかるわね」


 自身でもその威力に驚きつつ、森を進んで魔物を倒しながらティバニアを目指す。

 その途中で誰かからのメッセージが届いた。


 「運営からの返信…じゃないわね。あ、サクちゃんからだ!」


 届いたメッセージは先程運営に送った不具合報告の返信ではなく、サクラというプレイヤーからのメッセージだった。

 サクラは以前プレイしていた別のオンラインゲームで知り合った友人で、彼女もこのグランドファンタジア・オンラインをプレイすると話しており、こちらでも合流しようと以前から話していた。


 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


 件名:フレンド登録申請

 差出人:サクラ


リリさんこんばんはー!なかなか検索で見つからなかったんですけどやっと見つけました!

またキャラクリ時間かけてたんでしょ?


 このプレイヤーをフレンドリストに登録しますか?


 △ △ △ △ △


 サクラから届いたフレンド登録申請を承認し、通話機能を利用して発信すると、サクラは直ぐにそれに応じ、半透明になった彼女の顔が視界に表示された。


 『リリさぁーん!』


 「はいはい。サクちゃん、お疲れ様」


 通話に応じるなり、抱きついて来んとばかりに両腕を広げてくるサクラは銀髪赤肌に二本の角を生やした姿をしている。彼女が選んだキャラクターは下級魔族の女性の様だ。


 『リリさん、お疲れ様ですー!なかなか見つからなかったんで、ずっとソロでレベル上げてましたよー!』


 「待たせてごめんね。サクちゃんレベルどこまで上がったの?」


 『今レベル4ですー!リリさんはどうですかー?』


 「私は…さっき2に上がったばっかり。ティバニアに向かってる途中でモンスター倒してたよ」


 メニュー画面を開き、ステータスを見てみるとレベルが1つ増えていた為、そのままをサクラに伝える。


 「先に始められた分、少し差がついちゃったね」


 『とか言いながらすぐ抜いちゃうじゃないですかー!しかも魔法職なんでしょー? ソロ効率完全にそっちのが上じゃないですかー!』


 レベルはサクラに少し先行されてしまっていたが、その事を話すと、サクラは頰を膨らませる。

 彼女のクラスは前衛クラスのオーガウォーリアで、凛々しい女性の姿をしているが、そうやっている姿はどこか愛らしい。


 『もー、リリさん!聞いてますかー? …って、あれ? 何かあったんですか? 浮かない顔してますケド…?』


 サクラの憤慨する声を聞きながら運営側からの返信がないか確認をしていたが、未だに届いていない。

 その表情をサクラに見られたのか、彼女は私を心配そうに見ながら尋ねてくる。


 「え、ああ…ちょっとね。どうも不具合おきてるみたいでね、ログアウトできないの」


 『あー、まぁサービスインしてすぐですからねー。システムのチェック漏れかもですね。運営にメッセは送ってます?』


 「勿論。気付いてから直ぐ送ったんだけどね…」


 『運営の不具合情報にもそれらしき情報は出てないですねー。別の不具合情報はいくつかあるみたいですけど、服や装備の表示バグとかそんなんばっかりですねー』


 サクラの話を聞いて自分でも調べてみようとする。


 「…あれ? サイトにアクセスできない…?」


 『ホントですか!? 接続障害とか…いやウチは普通に繋がるし…』


 他にも色々と試してはみるが、外部サイトにすら繋がらない。

 その中で私はある考えが、ふと頭を過る。考えたくないが、いやそんなことがあってはならないのだが…。


 『外にも繋がらないってことは運営への不具合報告も届いてないんじゃ…』


 「サクちゃんそれ!考えないようにしてたのに!」


 『ってことはリリさん、グラファンから出られないですよね…?」


 「だから言わないでってばーっ!」


 そう考えた時点で殆どわかっていたが、いざ言葉に出されるとキツい。

 ある程度整理した上で覚悟して受け入れつつ、ログアウトの方法を模索しようと考えていたが、サクラはこちらのそんな逡巡すら意に介す事なくストレートに言葉に出してしまっていた。


 「うう…ぐすん…」


 『わわっ、リリさん!? ごめんなさいっ!』


 「ぐす…。いいの…今の状況を考えたらそうとしか思えないし…。どうせ遅かれ早かれ、はっきりする事だし…」


 『と、とにかく!ウチも協力しますからっ!ティバニアでしたよね!テレポートステーションが使えるようになったらすぐそっちにいきますからっ!』


 「うう…ありがとう、サクちゃん…」


 溢れた涙の跡を拭い、サクラに協力してくれるお礼を言う。

 とにかく今は一人でなんとか出来る状況とは思えないし、運営と繋がるサクラがいればなんとかなるかもしれない。


 「あ、でもサクちゃん、リアルの方のお仕事は…」


 『一応今日は午前中は有給使って半休にしてますから昼からなんで、これから朝までノンストップでレベリングと金策がんばります!もしリリさんがホントにグラファンから出られなくなってたら、リアルの方の身体のが心配です!とにかく先にこっち側での救出を優先しつつ、時間がかかりそうならウチがリリさん

の家まで行って、食べ物と飲み物ねじ込みに行きます!確か前ざっくり住んでるトコ教えてくれましたから、行ける範囲内ですし!』


 「えっと…それだと身バレするよね…?」


 『そんな事言ってる場合じゃないでしょ!』


 いくらサクちゃんとは言え、名前や住所が知られるのはいいとしても、今の姿はとても見せられない。

 バリバリ働いていた頃ならともかく、今はただの自堕落ニートで激太りし、ましてやすっぴん…幻滅される事に違いない。

 それを心配していたら私の身を案じてくれている彼女に本気で怒られてしまった。


 「とりあえず一日二日は大丈夫だと思うから…家教えるのは後ででもいい…?」


 『わかりました。でも、マンションかアパートだとしたら大家さんにも話通す必要がありますから、近いうちに必ず。それにパソコンに機器を通して繋がってるなら、下手に動かせませんし…』


 今でこそ、こういったパソコンを介して電脳世界に意識を投影して潜り込むタイプのゲームは珍しくないが、初めて世に出てきた頃に一度、大変な事故が起きている。

 当時ある地域が地震で一斉に停電が起きた際、世に出たばかりのオンラインゲームがそれで強制終了されてしまい、電脳世界に投影した意識も強制的に本人へ戻された事があった。


 電子化した意識が強制終了で戻された際、完全な状態で現実には戻らず、結果、意識の混濁や人格の異常、最悪廃人になってしまったケースがある。

 そのゲームを運営していた会社は、当然ながら方々からの非難に晒され、ゲームはサービス終了を余儀なくされた。

 倒産こそ免れはしたが、別会社に吸収合併される形で事実上消滅し、今なお被害者達への補償に追われている。


 そういった背景から現在では可能な限りの対策が施されている為、何かしらの要因で強制的に終了して意識を戻されるとしても定期的にバックアップされている意識のデータが瞬時に本人にへと戻される事になっている。

 これによって、そういった命に対する問題は激減し、せいぜい記憶の巻き戻りが起こる程度にはなっていた。

 巻き戻る記憶もゲームの世界での記憶だけとなれば、その騒ぎは随分とすぐに落ち着き、次第に沈静化すると、ゲーム開発会社は再び意識投影型のゲームの開発を再開していった。


 「…わかった。今はジタバタしたってどうにもならないもんね…。とにかく今は合流するのを急いだ方が良さそう。サクちゃんに第三者として、私に起きてる不具合報告をスクショしてから送ってもらえば、運営にも届くはずだし…」


 『小さい不具合の報告を公式に乗せてるくらいですし、プレイヤーの命に関わる様なバグならきっとすぐ対応してくれると思いますよ!大きい会社でもそんな問題が起きちゃったら致命的ですから!』


 このグランドファンタジア・オンラインというゲームはβテスト以前からあらゆる媒体を通して宣伝しており、マトリクスゲームスの肝いり作品であることは疑い様が無い。

 そんな作品でこの様なバグが起こったともなれば、これまでの宣伝広告に掛けた費用どころかゲームそのものがお蔵入りし、会社への大打撃となり兼ねない。

 そうであるならば、マトリクスゲームスがこのバグの存在を把握すれば大急ぎで解決に乗り出す筈だ。

 この時、私はそうであると私とサクラの二人はそう考えていた。


 「じゃ、その為にもまずはレベリングからね」

 

 『テレポートステーションが使えるようになるのはレベル10からですから、ちゃちゃっと上げちゃいましょう!』


 テレポートステーションとは、大きい街やその中継地点、一部のダンジョンの入り口を繋ぐ施設であり、お金を払って移動することが出来る。

 ただし、利用するにはレベル10以上という条件があり、また離れた場所に移動する場合はその距離によって値段が変わってくる。

 また、プレイヤーは種族によって拠点が異なるが、各拠点は国というコミュニティが形成されており、種族間で友好、中立、敵対という関係がそれぞれ設定されている。

 その為、テレポートステーションも万能という訳ではなく、敵対勢力の地域には移動は出来ない様になっているのだ。


 今回の場合は私がサクラの拠点に行くか、サクラが私の拠点、ティバニアに来るかになる。

 どちらにしろ、合流するのは早いに越した事はない筈。


 「サクちゃん、せっかくだしどっちが先にレベル10になるか勝負しない?」


 『え、こっちは2レベル分先行して冒険に出る準備も出来てるんですよ!?』


 「それを言うなら私はβテストの時の情報を持ってるし、魔法職ってアドバンテージがあるから」


 『それでも私の方が有利だと思いますけど…わかりました、リリさん。私も全力で挑ませてもらいます!』


 「じゃ、決まりね!フレンド登録は済んでるから、レベル10になって先に連絡いれた方の勝ちってことで!」


 『はいっ!』


 お互いに通話を終了して、それを合図にレベリング勝負が始まる。

 とは言え、サクラが既に冒険に出られる準備を済ませているのに対して私はまだ初期装備のまま、拠点であるティバニアにすら到着していない。


 ファイヤーボールやアイスブレットの様な初期の魔法だけでは少し心許ないという事もある。まずは装備を整えないと!


 ティバニアに走りながらMPの残量を顧みず、道すがらファイヤーボールをばら撒いてアントソルジャーを始めとする、道中の雑魚を消しとばしていく。

 その傍らで換金アイテムとなる魔物の討伐証を回収しながらティバニアに向けて走っていた。


 「キィィッ!」


 「邪魔っ…とは言わないわよっ!アイスブレット!」


 「ギィイッ!?」


 ワンドから放った氷の礫に撃ち抜かれているのはヴァンパイアバットだ。

 この辺りでは少し強い相手ではあるが、此方には恵まれた初期能力がある。

 またレベルが上がった際に得たスキルポイントは既に消費しており、マジックマスタリーのTier1を獲得して、僅かではあるが魔法の威力とチャージ速度を向上させていた。

 加えて、散弾の様に拡散するアイスブレットは対空特効の副次性能を有しており、瞬く間にヴァンパイアバットは撃墜されて地面を這っていた。

 杖で叩いてトドメを刺すとヴァンパイアバットは煙を上げて消滅し、牙を残していく。


 「やった!これでお金にも余裕ができるわね!」


 ヴァンパイアバットのドロップ品はその翼が殆どだが、稀に牙を落とす事がある。

 先程のアントソルジャーからドロップする顎は店で15ピルムで売れるものだが、ヴァンパイアバットの牙は単品で650ピルムにもなるレアアイテムだ。

 盗賊用の短剣の素材としても使え、軽装備の為、魔術師も装備する事はできるが、武器の威力も低く、ましてや近接攻撃のスキルも持っていない私には無用の長物、というわけだ。


 「公開情報に"ヴァンパイアバットの牙あります。即金3000P"って載せて、と…」


 ドロップアイテムは基本的に店では買うことが出来ず、レアの素材に関しては売価の5倍程度が相場となっている。少し安くしているのは直ぐに買い手がつく様にだ。

 個人取引の情報を公開情報に乗せて、また走り出すと、すぐにメッセージが飛んできた。


 「えっと、"牙希望です、2500Pでどうですか?"…交渉かー、"2700ではどうですか?"、っと」


 返答のメッセージを送るとメッセージの送り主からはOKとの返事が返ってくる。

 売約済となり、先程の情報を消去すると、そのままティバニアの入り口に取引場所を指定し、しばらく走ってから漸く見えてきたティバニアの門に取引の相手であろう、軽装備の男性の上級魔族を発見した。


 取引の相手は"†漆黒騎士†"というプレイヤーでレベルは7。名前を†で囲っているあたり、厨二感が半端なく、全身を黒系の装備で固めているのもなかなかポイントが高い。

 私が†漆黒騎士†に近付くと、向こうから声がかけられる。


 「あ、リリアナさんですね!?」


 「はい、ヴァンパイアバットの牙を買うとメッセージ送ってくれた方ですよね? 漆黒さんでいいのかな?」


 「はい!早速ですけど、すぐ取引でもいいですか?」


 「ええ、私も急いでるんでその方が助かりますー」


 漆黒を指定して交渉を持ちかけると、すぐに応じてくれた。

 ヴァンパイアバットの牙を出品に出し、彼方からの金額が表示されると、取引確定のボタンに手を伸ばす。

 しかし、相手側から提示された金額を見返してみると、270ピルムとしか表示されていない。


 「あの、一桁足りてないんですけど?」


 「えっ!? あはは、入力ミスでした、すみません」


 提示金額が足りていない事を指摘すると、漆黒はこれ見よがしにミスをしたと言って2700ピルムに修正し、確定をした。

 ミスをしたというのは間違いなく嘘。間違いなく狙ってやったものだ。油断も隙もあったもんじゃない。

 道中でレベルが上がっていたとは言え、私のレベルほまだ3だ。おそらくは初心者だと思われていたのだろうが、生憎と此方はβテストでならしていたプレイヤーだ、そうは問屋が卸さない。


 「いや、不手際があって申し訳ない!」


 「あんまりそういう事してると晒されますよ? 意外にそういう情報、直ぐに広まりますからね。βテストからやってるプレイヤーからの忠告と思ってください。…それでは」


 ともかく取引は無事終了し、2700ピルムを手にした私は残りのコモン素材を売却しにギルドへと向かう。

 ギルドの下取り窓口は他のプレイヤーでごった返していたが、こういった窓口は少し離れた場所でもアクセスできるようにしてある為、特に問題は無い。

 早速窓口にアクセスし、売却枠に拾ったコモン素材を並べていく。


 ▽▼▽▼▽▼▽▼▽


 アントソルジャーの顎:14

 アントウォーリアの角:1

 ホワイトラビの耳:5

 センチピードの毒牙:2


 合計:392ピルム


 これでよろしいですか?


 △▲△▲△▲△▲△


 内訳はアントソルジャーの顎は単価15ピルム、アントウォーリアの角は30ピルム、ホワイトラビの耳は21ピルム、センチピードの毒牙は25ピルムで合計392ピルムだ。

 先程の取引と合わせて3092ピルム、これならば一通りの装備は揃うだろう。

 

 ギルドで簡単にクリアできる討伐依頼と収集依頼を受注し、今度は武具店へと向かう。


 武具店では装備を一新し、杖はワンドからスタッフへ、とんがり帽子は魔女のハット、ローブはウィッチマント、革のブーツはワークブーツに交換した。

 既にワンドととんがり帽子から習得できるファイヤーボールとアイスバレットは装備せずとも使用できるまでの熟練度は獲得しており、今度は新調した装備からスタッフからはライトニング、魔女のハットからはウィンドアロー、ウィッチマントからはヒートブリーズを習得できるようになっている。

 足装備についてはまだ魔術師クラスに特段有用なスキルを得られる装備がなかった為、ここでは追加効果に悪路走破のスキルがあり、守備力が高いワークブーツを選んでいた。


 締めて2700ピルム也。ウィッチマントが1200ピルムと値が張ったが、これについているヒートブリーズは火属性の範囲攻撃で、敵を纏めて倒すのに適した魔法だ。

 装備条件も初期値の高さのお陰でクリアしていた為、一つ前にあるリネンローブは飛ばした形になる。


 残った資金でライフポーション(小)3本とマナポーション(小)5本、そして食料のエッポー2つと飲料のワラーを1つ購入し、残金は2ピルム。

 もうこれ以上の準備は出来ない為、返す刀でティバニアの外へと向かった。


 「ふぅ…あとはステータスの割り振りね」


 ティバニアの入り口でスタミナを回復するついでにレベルが上がった時に貰っているボーナスポイントとスキルポイントの割り振りを行うことにした。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽


 名前 :リリアナ

 年齢 :85

 性別 :♀

 種族 :上級魔族

 クラス:デビルマジシャン

 レベル:3


 HP:381

 MP:203


 筋力 :18

 体力 :41

 敏捷性:35

 知力 :57

 精神力:55

 器用さ:31

 運  :30(+15)


 スキル:豪運 マジックマスタリー1


 BP:10

 SP:2

 △ △ △ △ △


 しばらく街に戻らずに戦い続けられる能力が欲しい為、ボーナスポイントはHPが伸びる体力とMPが増える精神力に5ずつ割り振る。本当は魔法の威力を上げる知力に割きたい所ではあるが、現状は火力過多で武器も新調した為、今直ぐに上げる必要はない。

 残っているスキルポイントについてはパッシブスキルの一つであるコンセントレートのTier1とスティッキーマインドのTier1、この二つを習得する事にした。

 前者は魔法のチャージにかかる速度が速くなり、後者は同じ攻撃手段を使用する際に魔法の威力を上げ消費MPを微量ながら減少させる。魔法職にとってはMPは生命線だ。


 他にもレベル10に上がるまでに取るべきスキルに目星を付けてからステータス画面を閉じると、正面に広がる街道を見据える。


 「じゃ、ぼちぼち始めますかっ!」


 右手に構えた杖に魔力を貯めながら、私は街道へと飛び出していった。

割り振り後のリリアナのステータスです。


 ▽ ▽ ▽ ▽ ▽


 名前 :リリアナ

 年齢 :85

 性別 :♀

 種族 :上級魔族

 クラス:デビルマジシャン

 レベル:3


 HP:396

 MP:214


 筋力 :18

 体力 :45

 敏捷性:35

 知力 :57

 精神力:60

 器用さ:31

 運  :30(+15)


 スキル:豪運 マジックマスタリー1 コンセントレート1 スティッキーマインド1


 BP:0

 SP:0

 △ △ △ △ △

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