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9話~初戦闘とレベルアップとスキル発動

 

 冒険者ギルド案内人の説明に、コウはうんざりしていた。

 説明が長すぎて、早く話終わらないかなと足が棒になった気分で聞いていた。


 思いのほか、コウが想像したギルドとは一線を画すルールが存在している。


 ・冒険者パーティーはの制限人数。


 1パーティーの登録につき10人まで。これは、大多数の方が圧倒的有利になるのを防ぐ為の措置で、ダンジョン攻略、魔物の素材狩り、高ランクチームによる富の独占を防ぐ為のルールだ。

 なお別の冒険者パーティー同士の協力は、暗黙の了解とされている。



 ・冒険者パーティーの増加と離脱。


 パーティーの増加と離脱の際はギルドに、申告を1季が変わる前に以内に行うこと。これはギルドでおおよその人数を把握する為の処置である。




 ・依頼の失敗。


 請け負った依頼を一定回数失敗すると、ランクに応じた違約金が発生する。





 ・冒険者ランクの昇進と下降。


 冒険者はその実力に応じて、GからSまでの8段階でランク分けされている。

 ランク昇進と下降の詳細とはギルドの規定により、明かされていない。




 ・緊急要請による出動。


 緊急事態において、冒険者はギルド職員、又は国家の要請に従う義務がある。





 コウが退屈な説明を受けてる間にクリスティは空いたテーブルに座り、飲み物を頼んでちびちび飲みながら暇そうにあくびをしていた。コウはギルド員の長い説明を受けぐったりした様子で席につく。


「勇者様。話は終わりましたか?」


「はぁ……ようやくね」


「それで、この後はどうするんですか?」


「買い物の後にさ外に出て、ちょいと腕試しに行こうと思う」




 コウは防具や生活に必要な道具よりも、強い武器に重きをおいた。ホワイトキャスル中の武器屋を巡り安くて物がいい場所を選んだ。武器選びは相当迷ったが有り金と相談し、選んだ剣は全長1.4メートル刀身が1メートルほどあるツヴァイハンダーにした。


 これはホワイトキャスルの兵士達に国が支給する、ナイトソードよりワンランク上の剣であった。


 防具選びは、武器のように簡単にはいかなかった。


 それもサイズが微妙に合わない問題が、浮上したことが原因だ。

 防具屋の親父の話だと、加治屋に依頼し寸法を合わせてもらう、いわゆるオーダーメイド方式の注文をとる者も多いという。コウは服屋に服を買いに行く感覚だった。現代のように大量生産が可能ではないので、サイズが合わないのは当然のことであった。



 アーレスとの再戦を10日後に控えたコウには、余裕をもって防具選びをする時間はなく。


 装備の重さも考慮して、無骨な鉄の胸当てと手首を覆う皮のコテ。ちょうど運よくサイズのあったレザーブーツに留めた。もう少し高い防具を買う余裕もあったが、装備の重さはそのまま速度の低下を意味することを懸念する。



 ホワイトキャスルは高い石璧に囲まれており、出入口の門は屈強な門番のロッドという名の兄弟が見張りをしている。


「こんにちわクリスティさん」


「もうじき陽が落ちるので、外出にはお気をつけください。ところで、こちらは……彼氏ですか?」


 何でいちいちマッスルポーズするんだろうか。

 コウは口には出さなかった。





「勇者様です」と笑顔で紹介するクリスティ。



「勇者様……えぇと、あの文献の!?」


「兄者。俺は今伝説の勇者を目にしているということか?」


「そうだな弟よ。勇者様、時間があれば何卒、我々兄弟と手合せしていただきたいのだが」


「……気が向けばね」


 ……暑苦しい。コウの感想はこれだけだ。

 一銭にもならない手合せは、王子アーレスだけで十分だった。


「「勇者様お気をつけて!」」






 街の外に出ると、ちょうど太陽が地平線に沈んでいき、黄金色の光と濃い影をコウが目にする世界に投げかける。



 視界を隔てるような建造物もなく、木やあ草葉や初めて目にする魔物までがコントラストに彩られていく。


 世界の時は動いているんだ。

 時間が流れていくのを肌で感じた。

 その光景をコウは素直に美しいと思った。




「悪くない光景だ」


「ここ白金草原は、世界でも美しい草原に数えられますからね」




 しばらくそのまま夕日が沈むのを眺めていた。


 同時にコウの視界に入っていたのは、二足歩行で歩く狼を小さくしたような存在コボルト。


 そのコボルトが申し訳程度のボロ切れを身に纏い、ナイフでナッツのような木の実を剥いているのを見ていた。街から外に出たのなら最大限の警戒をするべきだった、何故ならここは、コウがいた世界ではないのだから。


 コウの背中から野生の生物の唸り声がした。


 振り返ると別のコボルトがいて、コウは急に襲われた。


 背の高い草にちょうど隠れていたので、発見するのが遅れ――



 行動は後手に回ってしまう。


 そのコボルトは簡素な槍を手に持っていた。


 その槍でコウの胴を狙い突いてきたのを、どうにか反射神経でぎりぎりのところで避けた。



 準備不足を痛感する。

 武器や道具のことではない。

 精神面のことだ。


 一歩魔物がいるところに出れば、こちらの状態がどうであれ会えば戦闘は必然。


 基本的に生きるか死ぬかのどちらかだ。


 コウにはまだ魔物を殺す覚悟、これができていなかった。


 せっかく買ったツヴァイハンダーは背中の鞘に収まっており、剣を抜く暇も今はない。


「……くっ」


「グルルウルルルゥウ」


 コボルトの獰猛な息遣いと突然の奇襲に、まだ戦闘状態でないコウは防戦一方。


 二度目の上段への突きもなんとか避けたが足がもつれ、尻餅をついて転んでしまう。


「……ちょ、ちょっとタンマ!」


 見上げる形でコボルトに休戦を申し出るが、言葉が通じる相手ではなかった。


 そこにそれほど速くない白い光が飛んできて、コボルトの背中に当たった。

 コボルトは吹っ飛んで、コウの視界より後ろにいって見えなくなった。



 正面にいるクリスが手をかざしており、魔法を放ったのだとコウは気づいた。


「勇者様、今です!」



「……っおぉおおおおおおおおお!」


 コウは弾かれたように走り出し、叫んだ。


 多分、生まれて初めてあげる叫び。


 背中のツヴァイハンダーを抜き、飛んで起き上がろうとしているコボルトの背中に剣を突きつけた。



 手に返り血を浴びコボルトの断末魔を聞いたコウは、何ともいえぬ疲労感に襲われた。


 コウの手の平は、やや赤い返り血がついていた。



 この初めて知った生々しい感触を、コウは忘れることがないだろう。

 動く大型の生物をこの手で殺した感触を。


 いずれはきっと、魔物を殺すことに慣れるのだろう。

 コウはどこか、そんな予感を感じていた。



「大丈夫ですか勇者様!?」


「おかげさまでね。サンキュー助かったよ」



「これが戦闘ってやつか。ゲームのようにはいかねえな……」


「勇者様。戦利品ですコボルトの槍を頂戴しましょう」


「おっ。それもそうだな」



 神官であるクリスの方が戦闘に慣れていることに、若干の役不足を感じつつ、コウはコボルトが持っていた槍を拾い上げ――


 ふと、なんてことはない疑問が、ふつふつと生じた。



 この武器は、どこから手に入れたのか?

 魔物は、どこから沸いてくるのだろうか?

 魔物は、どんな生活をしているんだろうか?

 魔物は、全てが魔王の指示で動いているのだろうか?


 などなど。


 それはこの世界のほとんどの冒険者が気にしなかった、当たり前のことだ。

 当たり前のことなのだから、誰も気にもしない。


 人と魔物は互いの生存競争の為にどちらかが、どちらかを殺すもの。


 遠い昔から、そのように受け継がれてきたのだから。


(ストックリプレイを1つ獲得しました)


「……ん?」


「クリス何か言った?」



「え? 私何も言ってませんよ」



(レベルが1つ上がりました。レベルをディレイ(遅らせる)ことが可能です)


 まただ。

 偶然ではない。

 機械的な、某女性ボーカロイドのような声が確かに頭に響いた。


 コウは手に違和感を感じた。


 気がつくと手にスマホのような機械的な物体を持っていた。


 その液晶画面にはこう書かれていた。


(ストックリプレイを1つ獲得しました)


(レベルが1つ上がりました。レベルをディレイ(遅らせる)ことが可能です)






冒険者ギルドの設定は、ぶっちゃけ無職転生を参考にさせていただいた。

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