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10話〜リプレイの性質

 

 レベルアップにより、リプレイを5個獲得しました。


 総リプレイ数6個。

 現在ディレイとストックが利用可能です。


 ・現在可能なディレイ・リプレイ。


 ――レベルアップスキップ

 上がったレベルをスキップし、自在のタイミングでレベルを上げることが可能です。スキップしたレベルアップには、ステータスへのボーナスポイントがつきます。



 ・現在可能なストックリプレイ


 ――ダメージストック

 戦闘による受けたダメージをストックして、総ダメージをリプレイで放出することが可能です。


 ※なお、剣か体術のみ利用可能となります。

 ストックした総ダメージは分散可能ですが、その度にリプレイを1つ消費します。


 リプレイコードと書かれた物質を、無言でスクロールするコウ。なんとなくだが操作してる内に、使い方を理解できた。


 それにしても、なぜ急に謎の能力を具現化したのか思いあたるフシがなく。


 もしかして、ここはゲームの世界なのか?

 それならこの現実味のない全てに納得がいく。

 コウはそう結論づけた。


「ステータスっ! オープン!」と恥ずかし気もなく急に叫んだ。


 しかし何の反応もなくクリスティが「勇者様、さっきからどうかしましたか?」


 優しい声色で、頭の中の心配をされコウは急に恥ずかしくなって、「なんでもない」とうつむいて後悔した、とんだ見当違いであった。


 リプレイコードを観察すると左端にディレイ、アクション、ストックと3つの項目が並んであった。


 どうやらリプレイをセットし使用するタイプらしい。


 ゲームの要領でコウは、上の表記のリプレイ総数から指でスクロールし、ダメージストックとレベルアップにそれぞれリプレイを1個ずつ使用した。



 リプレイの総数が4と表示され、セット完了という文字が表記された。



「勇者様。その手に持っているのは何ですか?」


 見たこともない物体に、興味津々の表情を向けるクリスティ。


「それが俺にもサッパリさ。気づいたら手にあったんだよ、少なくとも俺の手品のレパートリーにはない芸だな。先代の勇者もこういうの使ってた?」



「えーと先代の勇者様は剣と魔法を得意としてたようです。文献にはなかったはずです、はい」


 クリスティが曖昧に答えるのは、メサイア文献をサボってちゃんとは読んでないからだ。


「まあいいよ。物理現象じゃ説明つかないものを色々あれこれ考えても仕方がない。質問なんだが……レベルってなんだ? この世界に本当に存在する?」



 こればかりは納得がいかなかった。

 レベル制だとすると魔物をバッタバタと倒さないと、レベルは上がらないのだろうか?




「ありますよ」


「あんの!?」


「はい」


「それは……どうやって確認すんの?」


「冒険者ギルドにレベルを計る可視の宝珠がありますよ。それ以外ですと、貴族や王族の人しか持ってないと思います。なにせなくても生活には困りませんし、値段高いみたいですから」


「なるほど、レベルという概念は世界にあると。戦いを生業にする冒険者や、金策などの観点から貴族しか持ってないし気にしていない。こういう解釈でいいか?」


「それで合ってますよ。私なんてレベル不明ですし」



 レベル不明と聞いて少し躊躇した。

 恐ろしく弱く足手まといでも困るし、コウより強すぎて自分が足枷になるのも考えものだと思った。



 クリスティの話によれば、レベルは戦闘だけではなく、力仕事をすれば力が上がり、足を鍛えれば速度が上がるのだそうだ。


 言われてみれば鍛えれば能力が上がるのは、至極真っ当な話だ。



「それで話は変わるけどさ、魔物って何を食べてどうやって生活してんだ?」



 動く生物である以上は、何かを食べて生きているはず。霞を食べて生きていけるでもないし、魔物にも食物連鎖があるなら、元を絶てば魔物を一網打尽にできるのではないか。


 コウはそう考えた。


 それに対しクリスティは首を傾げた。



「言われてみれば、考えたこともなかったですね。うーん……何も食べないんじゃないですか?」


 ふわふわした回答に、コウはげんなりした。




「お前、なかなか鋭いところに気がつくぜルーキー」



 それは城の方から、こちらに歩いてきた二人組の声。どうやら話を聞かれていたらしい。



 またか。

 コウはそう思った。

 やたら知り合いでもないヤツに話かけられる。



「勇者様のお知り合いですか?」


 と、クリスティのすっとぼけた質問にコウは。


「……さっきも言ったけど俺、今日来たばかりだからね」



「それもそうですね。どうして私達がルーキーだと?」



 二人組の冒険者の内一人が、コウの首からかかっている冒険者のプレートを指差した。そこには名前の横にランクGと印字してある。


 身長180センチほどで黒いクロークを着た三白眼の男だ。もう一人の剣士風の短い金髪の女は、腕組みして興味なさそうに話を聞いている。


 偶然にも二人とも、コウと同い年の冒険者であった。



「なるほど」


 クリスティは自分の手をポンと叩いた。

 もしかしてクリスはアホの子ではなかろうか……とコウは思った。



「多くのやつは疑問に思わない。ただ魔物を倒して稼げりゃそれでいいと思っている、そこで思考停止だ」


「何か知ってるのか?」



「お前と同じようなことを言いだした冒険者がいたよ。赤の爪団、酒豪強者の集い、疾風の早歩き、真夜中のマヨネーズ団、これら高ランクの冒険者パーティーのそれぞれのメンバーが個人的に集まって調査を開始した。結果どうなったと思う?」


「さあ」特に考えずにコウは返答をした。


 それよりも冒険者パーティーの、1つを除きやたら変なネーミングが気になった。



「全員死んだよ」



「……それは魔物に?」



「俺が聞きたいとこだな。ただ死体と傍にあるはずの、彼等の道具類が全て持ち去られていた」



「それは盗掘者や、同じ冒険者の可能性もあるんじゃないかな? 冒険者といっても善人ばかりじゃないし中には金に困ってるやつもいるだろう。死体のそばに高級品があったら盗むんじゃないかな」



「……だろうな。まあ変な気を起こすなってこった、お前らも気をつけろよ」


 そう言い二人組の冒険者は去って行った。




「そういやクリス」



「なんでしょうか?」


「冒険者パーティーの名前の申請ってさ、なんて書いた?」



 この世界の文字が分からないコウは、ギルドの書類を全部クリスティに書いてもらったのだ。厨二を気取りすぎても困るし、ウケを狙いすぎても寒いとコウは考えていた。




「勇者様と私です」


 クリスティは花のような笑顔で言った。



「……今すぐ変更申請を出しに行こう」






ジョバンニが一晩でやってくれました!

依頼するから一晩で作品仕上げてほしい。

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