表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/63

第6章 激突-その4

 バーを脱出した花水木は、フラフラになりながら通りを歩いていた。

 とにかく、離れたところへ。

 グズグズしていてまた敵の手中に落ち、人質になんてなったらシャレにならない。助けに来てくれた男、暮伊豆がどれぐらい強いかは知らないが、あのマスター相手に正面切って乗り込んでくるというのは、きっとバクチに近い方法だ。これ以上あの男に迷惑をかけるわけにはいかなかった。


 「くっ……そ……」


 俺が助けに行く。

 修行しているから大丈夫。

 そんな啖呵を切ってやってきたというのに、結果は惨敗だった。何もできなかった悔しさと、不甲斐ない自分への情けなさで泣きそうになる。


 「ウニ……大丈……夫……か……」


 やみくもに逃げてきたからか、気が付けば商店街を抜けて、住宅街に来ていた。動いたせいで薬が回ったのか、頭がガンガンして意識がぼやけていた。


 「ちく……しょお……」


 今すべきことは何だ、何をすればいい。必死で考えて、ようやく山に電話することに思い至った。

 幸い、巾着袋は持って脱出できた。

 山の電話番号なんて覚えていなかったが、携帯の電話帳を確認すると登録されていた。ボタンを押してかけると事務担当の人が出て、花水木が名前を告げるとすぐに師匠の由房に繋がれた。


 『バカ者が!』


 電話越しに一喝され、花水木はうなだれるしかなかった。


 『すぐに人をやる。そこを動くな。いいな、決して動くなよ!』


 電話を切った花水木は、少し先に見えた公園まで行き、そこのベンチに腰かけた。

 これでできることはもうない、後は迎えが来るのを待つだけ。

 花水木はそう思ったが、すぐに「違う」と思った。


 「ウニを……助けなきゃ……」


 だけど、どうやって?

 薬でフラフラな上、七百キロ以上も離れている場所にいて、花水木に何ができるというのか。


 「間咲……さん……」


 いや、一人いた、と花水木は急いで携帯を手に取った。携帯には間咲正樹の電話番号も登録されていた。あの人なら大丈夫、きっと伊賀海栗を助けてくれる。そう思って電話をかけたものの、呼出しコールが続くだけで間咲正樹は出てくれなかった。


 「法話会とか……してるのか……な……」


 こんな時にどうして、と恨めしい気持ちになった。

 だがそうじゃない、これはある意味自業自得。自分がこんなところまで来なければ、伊賀海栗を守ってやることができたのに。


 「ちくしょう……なんだよ、俺……全然ダメじゃん……」


 頭が痛い。意識がぼやける。何のために修行してたんだよ、と情けなくなる。


 「間咲さん……お願い……ウニを……ウニを、助けて……」


 もうだめだ、と花水木は目を閉じ。

 あっという間に、暗い眠りに落ちて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ