機械仕掛けの悪魔、クチナワ
「なんでお前がここにいるんだよ!!」
ヨーヘイの脳裏に様々な記憶が蘇る、崩壊を引き起こした引き金、人類の愚かさ故の手段、そして強大なる力。全ての終わりを引き起こした化け物が目の前に居る。それは機械仕掛けの悪魔、識別名クチナワと呼ばれる蛇に似た形状の災害である。
「ヨーヘイ様!! 逃げましょう!! ニーズヘッグが解き放たれてしまった以上はもうできることはありません。大樹都市は終わりです」
「……せぇ」
「ヨーヘイ様?」
「うるせぇ、俺は今理解したぜ。俺がここに来た意味をよ」
「おやめください!! 大風に立ち向かう人間がいましょうか、大波に臨む人間がいましょうか、あれはそういうものなのです!!」
説得しようとするヒルデの声を国崩しが遮った。銃声は大きく響きニーズヘッグの注意を引くことに成功する。
「見てろ、今からその人間が災害を踏みつけにする様を見せてやる。人類舐めんな、死にかけようが滅びかけようが、立ち上がって前を向いた先祖のおかげで俺がここに居るんだよ。災害程度で止められるわきゃねえだろうが」
我者髑髏の間接部分が光を放つ、紫色に染まりながら同色の電気がバチバチと弾ける様は明らかな過負荷であることを示している。
「行くぜ、1分でカタをつける」
この発言はニーズヘッグを侮って言っているわけではない。我者髑髏の最大出力モード「紫電改・神風」は1分しか保たないのである。自壊をいとわぬ攻撃100%ゆえの短時間駆動なのだ。時間を過ぎれば我者髑髏はただの鉄塊と化し、そして、ヨーヘイもまた死に至る諸刃の剣である。
「シュァアアアアアアアアアアアア」
駆動音を響かせながら巨体でもってヨーヘイを押しつぶしにかかるニーズヘッグ。圧倒的質量でありながら高速移動が可能な性能は恐ろしいと言う他ない。だが、ニーズヘッグは知らない。別の世界で自らの影法師と言える個体がどのようにして破壊されたのか、ちっぽけな存在が生み出した恐るべき武器を知らない。
「おあつらえ向きの武器があるぜ……たっぷり味わいな」
国崩し3丁、加えて舞草と菜切が合体し1つの武器となる。長い射程を誇る光学兵器のエネルギーを一点に収束させた武器が完成した。かつては極太のビームを撃てば足りる話だと誰もが思っていた、しかし、クチナワの表面は再生するうえに常に鱗が高速で移動している。つまり照射では受け流される、実際に衛星軌道からのレーザーは傷を与えたが破壊には至らなかった。故に、人類は開発した、まず物理的に切り落とし、しかる後に熱で消し飛ばすという超兵器を。それは鱗で受け流されないように極めて重く、そして極めて鋭い刃を持つ、ぶつ切りになったクチナワを可及的速やかに消し飛ばすために莫大な熱量を内に秘めた刀である。
「超重量焼滅刀アメノハバキリ」
完成した刀は大太刀と言って差し支えない大きさではある、しかし、ニーズヘッグを斬るにはまだ足りない。本来ならば強化外骨格10機でもって使用する武装を1機で作っているのだから仕方がない。となればどうするか、その解答をヨーヘイは持っている。
「大きさが足りねえなら、足せば良いよなあ?」
我者髑髏から紫の光の柱が立ち上る。
「全部ぶち込んでやる」
足りない大きさを補うのはエネルギー量であった、それでも1機で10機分のエネルギーなど用意できる筈がない。普通に考えればそれは至極当然の考えである、それがこの我者髑髏でなければ。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
光の柱が小さくなるにつれてアメノハバキリが白く染まっていく。それに合わせて我者髑髏が少しずつ崩れ始めていた。機体そのものを燃料にしているのだ。我が身を死者と同じと扱い、髑髏になるまで使い潰して敵を殺す。我者髑髏とはそういう兵器である。とはいえ10機分などという莫大にも程があるエネルギーを維持できるのは一瞬、その刹那を逃せば死あるのみ。
「すぅ」
振り抜くだけの1呼吸、それだけあれば後は何も要らない。全身を襲う激痛を無視しながら時を待つ。永遠に等しいコンマ数秒が過ぎた。
「シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ニーズヘッグの体当たりが触れる瞬間、我者髑髏のエネルギー供給は頂点に達する。
「シィッ!!」
口から漏れる空気の音が妙に大きく聞こえた。それが何故か。
「シャァ、アア」
ニーズヘッグの発する音が無くなっているからである。静寂を保っていたのはまばたき3回の間だけであり、命を懸けた攻撃の結果が分る時が来た。
「流石に、壮観だな……」
ニーズヘッグの身体は横一文字に切り裂かれていた、刃渡りを越えるリーチを発揮したアメノハバキリは見事にニーズヘッグを2分割したのだ。そして、ニーズヘッグの身体が切り口から一気に灰と化す。巨大な構造物が崩れる様は一種の美しさすら感じさせる。
「ぶはぁ……きっつ。1人で倒すもんじゃねえよあんなの」
筋肉の断裂と我者髑髏の補助の喪失によってヨーヘイは座り込んだ。視線の先では灰の山の1部が動く。
「おいおい、まさかまだ動くってのかよ」
動く力が一滴すら残っていないヨーヘイは苦笑いをする、我者髑髏と共に武装もほとんど機能停止状態に陥っているため抵抗らしい抵抗などできはしない。もしニーズヘッグの一部でも襲いかかってくれば5体はバラバラにされるだろう。
「げほっ、げほっ!!? あれ? 生きてる!! やったー!!」
「マジか」
ニーズヘッグ討伐完了です、ここからもっと面白くなるよう頑張ります。壊れた我者髑髏をどうするかと灰から出てきた誰かの謎が次の話で明らかに!?
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