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予言書

初めましてお読みになって頂きありがとうございます。

  引き出しの鍵を開けノートを取り出し「これが予言書...」ユウトはノートを開く前に数時間前の事を思い出していた。


【話は数時間前に遡る】


ユウトはジンからの手紙に書かれていた通りに病院に来ていた。「なんだ、こんな時間に呼び出して」ユウトが病室のベッドに座っているジンに話しかける。「予言書に抵抗しようと思ったのさ」ニヤリと笑うジンに呆れたユウトは近くにあった椅子に座り手と足を組みハァとを息を吐いた。


「予言書通りに行けば世界は滅びる」


「どうやらそのようだな」


 この世界は予言書通りに時が進んでいる。予言書の中には科学者ジンの事も書かれている。そして今日午前6時にジンは永眠する。さらに二日後には世界はウイルスによって滅びると予言されている。だが予言書は特殊な文字で書かれおり世界が認めた天才科学者にしか読むことはできない。その天才がジンだ。


「ユウト、僕は【世界の始まり】を追い求めて様々な研究をしてきた、そして世界中のあらゆる遺跡を解読してあるノートにたどり着いた....このノートを研究しているうちに僕はとんでもないモノを見つけたと恐怖に震えていた」


「それが予言書か...」


「ああ、それから今日この瞬間までこのノートに書かれている通りに世界は動いていった、不運な事に僕が解読し終わった時にはその出来事は終わっていた、出来事が起きる前にこの予言書を解読する事が出来ていればウイルスによって世界が滅びるのを防げたかも知れない」


 何て声をかけてあげればいいのか分からない。ユウトはただ後悔をしているジンの話を聞く事しか出来ない、ジンはどれだけ世界に貢献してきただろう、世界中の人に夢とロマンを与えた。順風満帆な人生を歩んでるように見えるかも知れないが本当は誰よりも重いものを背負っていた。


「ユウト、最後にバイクで海に連れてってくれないか」


 微笑みながらユウトに聞いた。ずっと聞き手だったユウトもこの質問に喋らないわけがない。なぜなら二人は別々の道を歩んでいてもお互いが共感し合える親友なのだから。


「いいのか?時間まであと二時間だぞ」


「最後の景色は病室ではなく輝かしい海もいいだろ?」


「・・・分かった、行くぞ」


「さすが親友、最高だ」


 二人は病室を抜け出し、バイクでまだ薄暗い朝の街を走った。こんな時間に人がいないのは普通だが半年前にどこからか生まれたウイルスで人類の数も数えられる程までに減り、ついに世界滅亡の日が近づいた。五分もかからず目的の海に着きバイクを止め二人は砂浜に座った。「よかった、まだ日が昇っていなくて」水平線の海を眺めてジンは微笑んだ。


「なぁユウト、どうせもう死ぬからよ、聞いてもいいか?」


「ああ、いいぞ」


「あの予言書って誰が書いたんだろうなぁ」


「おいおい、それを俺に聞くか?」


 天才のお前が分からないなら誰も分からないだろと思っていたがジンは真剣だった。正直、学者でもないし自分が思ったことをそのまま言おうと質問答えた。


「誰が書いたとかは想像もできねぇよ、だから自分の目で確かめるしかねぇだろ」


「やっぱり...さすがだな」


「何がだよ?」


「自分の目で確かめる、そうだそれしかないんだよ」


 ポケットからエメラルドグリーンの液体が入った小さな瓶をを取り出しユウトに見せた。


「何だそれ?」


「僕が二年前、約五百万年前に作られたと思われるオーパーツの石盤の文字を解読したのを覚えてる?」


「ああ確か、その時代の王の墓の場所が書かれていたんだろ?そのあと有名な考古学者達がお前を先頭に実際にその場所を確認して王家の墓と名付けられた奴だろ?」


「そう、今だから言えるんだけど僕は考古学者達と王家の墓に行く前に実は一人で一足先に墓の中を確かめに行っていたんだよ」


「ん?でも王家の墓をお前が発見したのは変わりはないだろ、世界はみんなジンの功績だと認めてるよ」


「いや、一足先に行ったのはそれが理由じゃないんだよ、もし考古学者達と一緒に墓の中を探索すればそこで見つかった物は全部政府に回収されるだろ?」


「まぁ実際、遺体も金目の物も回収されたけどな、実際お前そういう宝とか興味無いだろ、それでも一足先に行く理由があったのか?」


「うん、実はあのオーパーツの石盤の文字には続きがあるんだ、僕は王家の墓の場所だけを世界に公表してるけど、最後の行には [神の悪戯を暴く者が現れた時には人類は滅びかける、その時王の左手に持っている物を使え] と書かれていたんだよ、そして僕は一足先に王の遺体の左手に握っている物を取り出してきた」


「それがまさか、その液体か?・・・ちょっと待て人類が滅びかけるって今じゃないか、王はこの時が来る事を予想していたのか?」


「ああ、王は何らか方法で二日後の出来事を予想していた」


「まさか予言書?」


「僕もそう思う、王も予言書を解読していた人間だった。だけど王も不遇な事に予言書を解読できた時にはその出来事はすでに終わっていた、覚えてない?僕たちが小さい時、先生に王の逸話を聞かされたの」


「毎日後悔していたってヤツか?」


「そう、王が戦争が起きる前に予言書を解読すれば戦争などでたくさんの命を失わなくてよかったのに神はいつも王に一つ先の出来事を解読させてくれなかった、予言書なのに先を解読させてくれない、まさに悪戯さ 」


「だから後悔していたという逸話が残されていたのか...だけど王は人類滅亡のところを解読したって事なのか?」


「いや、それは解読したんではなく先を予想したんだと思う、僕が王の墓を見つけた用に王も誰かの墓か何かを見つけ、液体を手に入れ神と予言書に抵抗するために同じ歴史を繰り返すわけいかないら」


「同じ歴史を繰り返すって...どういう意味だ?」


「今までは出来事が過ぎてからやっと解読できていたが優位出来事が起きる前に予言書を解読できた事がある、それが二日後の世界滅亡の日だ。僕はこの王のおかげで人類が滅亡する前に解読する事ができ、これをユウトに渡す時が来た」


「は?お前、何言ってんだ」


「君は神に挑み、世界の始まりをその目で確かめるんだ、僕達は世界が誕生して今日この日までこの液体を受け継いで来た。神に対抗する者が現れるまで」


「俺が...神に対抗する者?どういう事だよ、全く分からない」


「・・・ユウト、もし運命を操作している者がいたらそいつはどうすると思う?」


「それは、自分に都合が悪いと思ったら、消したりするだろうな。・・・ん?それって」


「僕も王も[世界の始まり]を知ろうとしていた人間は神にとっては都合が悪く、運命操作で死を向けられたのかも知れない、そしてこの世界も神にとっては都合が悪いから一旦滅ぼす為に操作したのかも知れない」


「だからって何で俺が...」


「それは君が自分自身で確かめるんだ」


 ジンは液体を注射器に入れ、ユウトの身体に液体を入れる準備をした。ユウトはまだ納得していなかった。それはそうだ、世界は滅亡するっていうのに自分だけ生き残るのだから。納得しないまま親友と別れるのかと思うとさらにモヤモヤする。


「よし、じぁあ腕を出して」


「・・・最後になりそうだから一つ言わせてくれ・・・・俺はお前みたいに天才じゃないし頭悪いから気を使った言葉は言えないけど、もし神が運命操作でこの予言書にお前の事を書いたのなら、それはジンという天才を恐れていたんじゃないかな?つまりお前はこの世界で神に抵抗できた男なんだ、凄い生き様だよ、だから...誇りに思えよ」


「ありがとう...でもやっぱり一番はユウトの親友でいれた事だ」


「そうか...俺もお前が親友でよかったよ...」


 液体を身体に入れ終わり、水平線から日が昇り始めるとジンは立ち上がり同時にユウトに最後の言葉を残した。


「ユウト、世界が滅ぶ二日以内にこの鍵を使って僕の部屋から予言書を持ち出してくれ」


「...分かった」


「これから君にどんな症状が起こるかは本人のみぞしか知ることができない。一説には世界が滅ぶ度にこの液体は選ばれた者に受け継がれている。王も僕も各歴史の選ばれた者にこれを渡すのが宿命であり、そして君は[世界の始まり]を知り神に対抗する事が宿命だ、僕が調べた各遺跡の謎を解いた後、ある文章が刻まれた遺跡を見つけた」


「宿命...世界の始まり...」


「繰り返される歴史はいずれ変化を起こす、我々は世界に平和をもたらす者を[世界の始まり]で待っている。その者は世界を自由にする為に神に挑む、 名は........」


「...............」


 日が昇りきり、光が二人を照らす。ユウトは立ち上がりお互い向き合った。


「...じゃあな...ジン...」


「僕の役目は終わった...さよなら...ユウト...そして...ありがとう...」


 ジンは微笑みながら両手を朝日に向かって広げる。足の先から少しずつ朝日に吸い込まれていった。「おつかれ...」最後を見届けたユウトは右手で太陽の光を握った。




【話は現在に戻る】




「あの名前、どこかで聞いた事があるような」予言書を見つめていたユウトはジンが言っていた遺跡に書かれていた文章の名前を気にしていた。

だがいくら考えても思い出す事は出来ず、予言書を開く事にした。


フゥと息を吐き予言書を開こうとしたらウニャウニャと蛇のような黒い煙が予言書を開かさないようにユウトの腕を締め付けた。

「クソ!なんだこれ!」締め付ける力がどんどん強くなっていきこのままでは腕が引きちぎられると思い、予言書を離した。


すると黒い煙は予言書に吸い込まれていった。「危なかったぁ」ユウトは近くにあった椅子に座り息を整えた。ユウトは予言書を開く事は出来ないと思い、とりあえず予言書だけ持ち出しジンの部屋から出た。


「どうやら、もう俺だけのようだな」外に出て辺りを見渡すが人の気配はなかった。ユウトは誰もいない街を歩きながら(本当に世界は滅ぶんだな...)と青い空を眺めた。



『貴様...生きていたのか...』


「誰だ!」不気味な声に反応し、後ろを振り向くが誰もいない。生き残りかと思ったがこの世界の人間とは何かが違うとユウトには感じた。


『単なる偶然か...だがお前も二日後には...もう記憶もない...ただの無になる...どう足掻こうとも...我の決めた運命には逆らう事はできない...』


「誰なんだ!隠れてないで出てこい!」


『...世界の始まりは...闇で始まる...お前は...記憶がない...ただの人間...我々に逆らう事も触れる事も出来ない...フフフ...』


不気味な声は笑い声と共に消えていった。「今のは一体」誰だかは分からないが人間ではない気配をユウトは感じていた。


「うわ!何だ‼︎」


突如ユウトに電撃のような頭痛が襲い始めた。その場で倒れ込み頭を抱えるが頭痛は治らない。気を失いそうになりかけた時、かすかに見える視線の先に誰かが立っていた。

誰なのかどうにかして確認しようとしたがそのまま気を失ってしまった。


(...私のところに予言書をもってきて...)


どこからか優しい声が聞こえた。


目を覚ますとユウトは目を疑った。「どこだここ?」目の前に映ったのは自分がいた街ではなく空の上にいた。広い円形の白い床が空の上に浮いている状態であった。円形の真ん中に何か落ちているのに気付き、ユウトは真ん中に近付いて行った。


「何だ、この絵?俺は一体...」


今の状況を飲み込めず、床に落ちていた一枚の絵を拾った。絵には綺麗な草原に真ん中に大きな木が描かれていた。


(...恐れずに聞いて...)


「この声さっきの?」


(...あなたに話さなければならない事がある...こうやってあなたと話せるのは時間が限られている...)


(さぁ...この階段を登って...)


ユウトの持っていた絵が浮き光を放ち上に続く階段がユウトの目の前に現れた。

階段を見つめるユウトの姿は何かを考えているようだった。親友のジンに言われた事を知るために迷う事なく階段を登り始めた。



【世界の始まり】を知るために


最後までお読みになって頂きありがとうございます。

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