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拝啓、空を飛んだ君へ  作者: 月影うるか
1章
4/5

3

 少し歳とったおじいちゃん先生の古文の授業をダラダラと聞いている。一限目の古文というのは本当につまらない。一限目じゃなくともつまらない。クラスの大半は夢の国へ片足を突っ込んでいたり、全身夢の国だったり。黒板に書かれたことを淡々とノートに書き写していくだけの作業。古文というものは暗記だ。授業で出てきた文法やら用法やら意味やらを暗記さえすれば点数は取れる。こんなことを先生に聞かれたら怒られそうだが。

 ずっと先生が話をしてるだけの授業が終わり、先生が出て行った教室には喧騒が戻ってくる。さっきまでスヤスヤと寝ていた奴は水を得た魚のように活気に溢れている。そんなクラスメイトを見てると笑いがこみ上げてくるったりゃありゃしない。

 そうだ、雫からノートを回収しなければならない。二限の授業中に少しでも復習しておきたい。

 隣のクラスに入るというだけで緊張するのは何故なのか。そっと息を吐いて閉まりきっているドアをノックをする。すぐに少しだけドアが開いてクラスの住人が顔だけ外に出して要件を訪ねる。


「誰かに用事?」

「雫にノート返してもらおうかと」

「ちょっと待ってて」


 このクラスは俺のクラスと違って休み時間でも静かだ。微かな話声は聞こえど大声や甲高い声は聞こえない。クラスの奴らは見習ってほしいものだ。

 三〇秒ほどすればさっきの生徒がまた出てきた。


「このノートであってる?」

「うん、それ」

「雫、御手洗い行ってるから返しておいたって言っておくね」

「ありがとう」


 正真正銘、自分のノートを受け取って自分のクラスに戻っていく。ドアを開けてすぐ女子の耳が痛くなるような高い声が聴覚を刺激する。それを無視して席に座ってノートを開く。捲る手に違和感を感じてノートを見る。数ページの角が濡れていた。違和感の原因はこれのようだ。匂いを嗅ぐ限り変な匂いはしないからただの水と予想する。なにかの拍子に水をこぼしてしまったのかもしれない。昼休みにでも聞けばいいだろう。

 あと数ページで終わるノートだったし見るのにも使うのにも支障はない。

 小テストの範囲のページをパラパラとめくっていく。

 ノートの隅に自分が書いた覚えのないイラストが書かれている。可愛らしい兎のデフォルメイラストだ。


 《先生に怒られずにすんだ!ありがとう!》


 吹き出しでそう書かれていた。雫らしいなんとも言えぬ気遣いというか、可愛らしいところもあるのだなと微笑ましくなる。これは消さずに取っておこう。


 予鈴の音楽が鳴ると騒いでいた奴らも慌ててロッカーから教科書を取り出す。

 本鈴がなれば先生が入ってきてまた退屈な授業が始まる。こんな後ろの席の生徒なんてほとんど手元なんて見えていないに等しい。さっきから見ている数学のノートと問題集を広げてこの後出るであろう問題を解いていく。所謂、内職と呼ばれる行為は背徳感があって少し楽しい。

 しかし、それすらもそのうち退屈に思えてきて小さなあくびをする。


「空峰さん、この英文を訳してください」


 そのあくびを目ざとく見つけたのか先生の指名がかかる。半分以上咎めることが目的の指名であるならば寝ている生徒を当てればいいのに。


「もしも、私に羽があればとべるのに」

「うん、それでいいでしょう。授業中は寝ないでくださいね」


 その先生の言葉に数人の生徒の肩がピクッと震える。寝てるって自覚あるんだな。

授業中に寝たら内職するのダメ(よくしてます、ごめんなさい)

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