表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/47

再びの状態異常持ち

 ダンジョン一階を隈なく歩き回った俺たちだったが、残念なことに採掘ポイントらしきものは発見できなかった。

 隠し扉みたいなものもない……というか、そもそも扉がない。


「仕方ない……しばらく休んでから下に降りてみるか」


 ということで三十分ほど休んでから下層へと続くスロープに向かった。



「ここも魔物多いな……」


 最大まで広げた魔力探知の範囲、直径約五百メートル内に二十匹以上はモンスターの反応がある。

 群れ自体は小さいものの広範囲に二~三匹ずつ点在しているので、戦闘に入れば近くの群れが寄ってきそうな予感が……。


 それに二種類のモンスターが居るようだが、片方は知らない反応だ。もう一方は多分、ゴブリン。

 どうもゴブリンと謎のモンスターは、必ず一緒にいるようだ。ものすごく嫌な雰囲気だ。


 未見のモンスターが、ヤバイスキルを持っている可能性があるか……。

 とはいえ、尻込みしてばかりもいられない。せっかく来たのだから、何らかの成果は得なければ。


「……一回ぶつかってみて、ヤバそうなら逃げるか」


そう結論し、俺はシロクロコンビと共に一番近い二匹の群れがいる場所に足を向けた。



(姿は見えないけど、天井にいるっぽいな)


 残り五十メートル程の距離まで近づいた事で、こまかい位置を魔力探知で見分けられた。闇に紛れ、天井にいるといえば……コウモリか?

 であれば、上下からの攻撃をさばかなければならなくなる。キラービーとジェルボールを同時に相手取った経験があるから、何とかなるとは思う。シロとクロもいるし。


(シロとクロは地上のやつを頼む。俺は上のやつをやる)


 小声でウサギ達に指示を出し、所持品欄に地図をしまって鉄の棒を二本とも取り出す。

 狙うは先制攻撃だ。相手に何もさせなければ、危険もなにもないからな。


(行くぞ!)


 シロクロコンビに声をかけ、一気に全力で駆け出す。二匹も俺に続き……というか追い抜いてった。速い! もうゴブリンに肉薄してる。


 一方、俺は薄暗い通路の天井を見回し敵を探していた。魔力探知の反応では、もうごく近くのはず……。


「うっ!?」


 かすかな羽音が聞こえた気がしたところで、俺はいきなり眩暈に襲われた。一瞬で平衡感覚を失い、地面に倒れ込む。

 ――これは、音波攻撃か!?


『ゴブリンが現れた! ディジーバットが現れた!』


 なるほど、こうやって動きを止めたところでゴブリンに攻撃させるんだな……などと冷静に考えていられるのは、ゴブリンがもうシロとクロに倒されているからだ。やっぱ強い。


 問題は相手が空を飛んでいて、天井までの高さが三メートルはあることだ。俺が倒れている現状で、シロとクロはどんな手段が取れるのか? シロは風属性の魔法スキルを持っているが――。


「キュー!」


 俺の心配を他所に、シロは口元から竜巻のような風を発生させた。さしずめ兎のバーストストリームというところか。

 フハハハ! 強いぞー! カッワイイぞー!


「あ、治まった」


 アホなことを考えている間にもコウモリはシロの風魔法に撃ち落とされ、クロ飛び蹴りで倒されていた。


「ふう……助かったよ、シロ、クロ」


 眩暈が治まった俺は、身を起こしてその場に座り込んだ。ぴょんぴょんと近づいてきたウサギ達に礼を言い、二匹の頭をナデナデする。


 それにしてもディジーバットというモンスターは、どうやら近づいてくる俺たちに気づいていたようだ。なにしろ先制するどころか、されてしまったのだから。


 一方でゴブリンは気づいてなかった気がする。気配に敏感なコウモリが機先を制する役、ということなのだろう。そして相手に眩暈を起こさせてしまえば、余裕を持ってゴブリンが攻撃に移れるわけだ。


 ……やはり、ヤバイコンビネーションだな。ソロだったら、死にはしなくても大ケガ確定の状況だっただろう。シロとクロには感謝だな。


 しかし、こうなると眩暈への耐性を身につけておかないとマズイ。

 今回はウサギ達が上手く対処してくれたが、全員いっぺんに眩暈状態に陥ったら瓦解必至だ。


 司令塔であり、いろんな状況に対応できる手札を持っている俺が動けなくなるのは特にヤバイ。

 ……久しぶりに、自傷気味の修行をするか。



 はい! という事で、次の群れの所にやってまいりました!

 今回やることは至極簡単! ある程度近づいたところで、ゴブリンはシロクロコンビに任せます。俺の方は眩暈状態になっても倒れないでいられるように、壁際にストーンウォールで囲いを作り胸まで収まっておきます。


 ゴブリンを倒したウサギ達が囲いの中に飛び込んでくることで、ディジーバットは彼らに釣られて俺に接近、音波攻撃を繰り出してくるというわけです。


 コウモリは翼長一メートルほどはありますが、俺は頭をちゃんと防具で守っているので直接攻撃をされても大したダメージは受けないでしょう。


 あとは、ひたすら耐えます!

 毒の時は解毒薬がありましたが今回はそんな対抗薬はないので、我慢するしかないのです。


 幸い眩暈は毒と違って数秒程度で回復するようなので、いよいよ辛い時は回復したところで適当な魔法をブッ放してコウモリを倒してしまえばいいでしょう。


「ふへー……」


 とまあ、そんな感じの修行をモンスターの群れに突っ込んでは繰り返したわけだ。

 一度、仲間を呼ばれてコウモリ数匹にたかられたりもしたが、なんとかかんとか耐性を得られた。


 詳しくはこちら。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV11】

【所持CP:6785】

【所持品:鉄の棒×2 ナタ 低級回復薬 低級解毒薬×2 小さな魔石×9】

【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV2 二刀流LV2 地属性魔法LV3 金工LV2 魔力増加LV3 水属性魔法LV2 風属性魔法LV2 火属性魔法LV1 植物鑑定LV1 恐怖耐性LV5 毒耐性LV2 魔力探知LV3 打撃耐性LV1 刺突耐性LV1 体術LV1 スタン耐性LV1】

【称号:7級冒険者】


【名前:シロ】

【種族:ブルーアイズ・ホワイトラビットLV10】

【所持CP:7402】

【所持品:銅の剣×3 錆びた鉄のナイフ×4 小さな魔石×7】

【所持スキル:気配察知LV2 獣体術LV2 風属性魔法LV2 スタン耐性LV1】

【称号:なし】


【名前:クロ】

【種族:レッドアイズ・ブラックラビットLV10】

【所持CP:6401】

【所持品:銅のナイフ×9 錆びた手斧×9 小さな魔石×9】

【所持スキル:気配察知LV2 獣体術LV2 無属性魔法LV2 スタン耐性LV1】

【称号:なし】


 眩暈は『スタン』という属性だったようだ。麻痺とは違うのかな?

 それと俺はこれまでの蓄積のおかげか、水と風属性の魔法スキルと魔力探知が一つ上がった。あと恐怖耐性もまた上がった。短時間とはいえ動けないのは、やはり怖いのだ。


 ドロップアイテムに関しては、ゴブリンたちがほぼ確実に金属製の武器を持っていたのが嬉しいところだった。コウモリの方は小さな水晶みたいな石を落としたが、何に使えるのかよくわからない。まあ、あとで確認すればいいだろう。


 なんにしてもシロとクロも頑張ってくれたし、さっさと返って風呂入って飯食いますかねー。



 無理をしたということで、ダンジョンから戻った翌日と翌々日の二日間を完全休養にした。

 シロとクロには、ちょっとだけ促成栽培した柿から採った実を思う存分食べてもらった。


 人間と違って「スキルを伸ばすためにわざと攻撃を受ける」なんて事は野生の生き物はしないだろうから、彼らのストレスは相当なものだっただろうと思う。


 ステータスの上では俺にも勝る能力を誇る二匹も体格的にはせいぜい柴犬と同じくらいなのだから、体力なんかは俺より少ないかもしれない。だから気をつけないと。


 こんな風に他者の事を考えていると、自然と休みを取ろうという気になるから不思議だ。

 まあ、塩のことを除けばそれなりに安定した環境を構築できたから、あんまり焦らないで冒険者活動をしていくことにするかなー。



 それからは一日ダンジョンに潜って一日休み、というサイクルを繰り返した。

 その結果、地下一階の奥地で塩の採集ポイントを発見することが出来た。ということで当面の問題は全て解決だ。


 ダンジョンも地上一階、地下一階は完全に踏破し、地下二階へと足を踏み入れている。

 まだスタン耐性はレベルが上がっていないが、LV1でもあるのと無いのとは大違いで、ディジーバットに音波攻撃を食らっても何とか倒れずに耐えることが出来るようになった。


 そして俺たちは、地下二階で初めて巨人っぽいモンスターと遭遇する。

 ――それは粘土の巨人、クレイゴーレムだ。


 最初は打撃が効きにくかったために厳しい相手か?とも思ったのだが、ちょっと火の魔法で炙ったら物凄く脆くなったので楽勝だった。


 ただ、やっぱり火で焼くとドロップアイテムに影響が出るらしく、【乾いた土】というよくわからない物を落とした。

 火を使わず倒してみたところ【粘土】をドロップしたので、こちらが本来の物なのだろう。


 ちなみに水属性を使うと【泥】になる。それ以外の属性はあまり効かないだけで、ドロップアイテムには影響はないらしい。

 なんとなくだが、もっと派手に焼いたらまた違うアイテムになりそうな気がする。


 とはいえ、火属性だけはほとんど使っていないせいでレベルが一のままだから、まずはこれを伸ばす訓練をしてからという事になるだろう。


 それと地下二階に出るモンスターは、クレイゴーレムの他にはオークがいる。これもゴブリン同様、武器を持っているので、金工スキルでサビを落としたり刃こぼれを直したりして売るか、潰して防具などの素材として使えるので嬉しい。


 ということで、お休みの日には武器防具をいじったりする事が多くなってきた。まあ、売店で買った革鎧一式の上に鉄板を貼り付ける程度の改造がメインだけどね。



 そんなある日、俺は自宅で銅をインゴットに加工している時に、変な感覚を覚える事があるのに気づいた。

 なんというか、加工のために流し込んだ魔力が目減りしているというか……。


「銅に魔力が吸い取られてるのか?」


 加工後のインゴットを見た限りでは、銅自体は何の変化もないようだ。しかし、魔力が吸い取られる感じがあるということは、その先に何かありそうな予感がする。


 金属に魔力がすい――あっ。魔法金属!?


「銀が魔力を帯びたものがミスリル、って感じの話があった気がする……」


 もし銅も同じように魔力を帯びさせることが出来たら、何らかの魔法金属になるかもしれない。


「いっちょ、やってみっか!」


 ということでインゴットを一つ手に取り、全力で魔力を流し込む!

 ……はい、久しぶりに魔力枯渇で気絶しましたよ。三時間後に目が覚めたわー。


 銅の様子はというと、何ら変化はなし。単純に考えると、流し込む魔力が足りないんだろうけど……。


「インゴット半分にして、もっかいやってみるか」


 金工スキルで大雑把に分割。インゴット自体、片手でつかめるサイズにしてあるだけの金属塊なので重さとかはよくわからんが、まあ、感覚としては五百グラムくらいかなー。


「という事で、トラーイ」


 ……はい、再び気絶しました!

 今回はどうかなーと確認してみると……おお!


【ヒヒイロカネのインゴット

 ・銅が大量の魔力を浴びて変化した魔法金属。元となった銅より軽く、強靭になっている】


 やったー! ヒヒイロカネが出来たよ!

 さっそく性能確認にナイフを作ってみる。


【ヒヒイロカネのナイフ:攻撃力21 属性:斬撃】


 強っ!

 刃渡り二十センチ程の無骨なナイフが、この攻撃力とは……。

 こりゃ、ヒヒイロカネ量産するしかないな!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ