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ダンジョンを発見した

 新たに仲間になったレッドアイズ・ブラックラビットのクロに関して一つ疑問がある。それはスキル欄に載ってる『無属性魔法』だ。

 俺自身は地水火風の四属性しか身についていない。結構、色々してきたつもりなんだけどなあ……。


「なあ、クロ。無属性魔法ってどんなのなんだ?」


 ウサギが人間の言葉を理解できるとも思えないが、一応聞いてみる。

 するとクロが立ち上がり、「キュ~!」と一鳴き。その途端、彼?の体が淡い光に包まれる。


「キュキュ~!」


 そして、おもむろに近場にある木の幹に飛び蹴りを叩き込んだ。

 ドゴッ、と言う音を立ててめり込むウサキック。反動を利用してクロが飛び退くと、今度はメキメキときしみながら木が傾き始める。


 ドスン――。


「お、おおー……すごい威力。つまり、強化魔法みたいな感じか……」


 地響きを立てて倒れた木を見下ろしながら、俺は無属性魔法について大まかに理解したのだった。

 これはまた、なかなか応用の効きそうな属性だ。なんとか身につけられるように訓練してみなければ。



 軽い昼食を挟んで、行きとは違う道のりで拠点へと戻っている最中のこと。


「でっかい洞窟だな……」


 俺は、むき出しの岩盤に開いた洞窟を発見した。かつては造成されて何軒も家が建っていた辺りのはずだから、それ以前の状態はわからないが……直径三メートルはある、それもかなり深そうな洞窟があったら子どもたちが探検しないわけはないだろう。もちろん俺もだ。


 だが、そんな事をした経験はないってことは……世界が変容して以降に出来たものと考えるのが自然か?

 魔力感知で探った限りでは、十メートルほど先には円形の小部屋があるようだ。そしてその中心には、強い魔力を発する何かがある。


「分かりやすいというか何というか……これは多分、アレだなあ……」


 そう、ファンタジーにつきものの存在。

 ――ダンジョンだ。


「……ちょっと入ってみるか」


 一階からいきなり殺しに来るタイプだったら困るが、今の所モンスターの反応はない。とりあえず、魔力を発しているものだけでも確認しておきたいところだ。


 てことで小部屋を目指してゴー。

 少し歩いてると、外から見たときと明るさがあまり変わらないことに気づいた。どうやら、奥の方の壁がほんのり光っているようだ。ダンジョンのお約束って感じだなー。


「あれか」


 さして時間もかからず小部屋に到着。魔力探知の通り、部屋の中央に魔力を発する柱のようなオブジェが設置されている。

 予想としては、他のフロアへの転送装置ってところなのだが……。


「……何も起きないな」


 柱に手を触れても転送されたりはしない。これはまあ、やはり予想通りでもある。というのも、入っていきなり深層に移動できるダンジョンなんて滅多にないというか、深層まで到達してそっちの転送装置を起動させていないと双方向移動できないというのがパターンだからだ。


 全何フロアなのか判らないから断定はできないが、一定数の階層ごとに設置されているんじゃなかろうか。


「うーむ……一階のモンスターだけ確認して帰るか」


 倒しやすい、もしくは良いドロップが出る魔物だと良いなーなんてちょっと期待。

 そんな感じで小部屋の奥に開いた通路にIN!


『巨人の迷宮』


「うおっ!?」


 通路の先、少し開けた場所に出た途端にアナウンスが流れた。まったくもー、びっくりするだろ……。

 しかし巨人の迷宮か。深層に向かう毎に、でかいのが出るようになっていくんだろうなあ。


「むっ」


 魔力探知にひっかかる反応で考えるのを中断する。

 ……これは、ジェルボールだな。巨人じゃないじゃん。しかし、外と比べると数が多いな。五百メートル圏内に二十匹はいる。


 うーむ、スキルを伸ばすという点では、ある意味いい環境か? ジェルシートも色々使えそうな予感はあるから、ここらで大量に備蓄しておくのも良いか。


 シロとクロとの連携も、弱いモンスター相手に練習しておく必要があるだろう。ぶっつけ本番で上手くやれるとは思えないからねえ。


「よし! シロ、クロ、ちょっとここで訓練していこう!」


 俺がそう宣言すると、ウサギ達も元気に鳴いて答える。うむ、やる気があってよろしい。



 魔力探知の反応に従い、俺達は近場から順番にモンスターの群れに突撃しては殲滅を繰り返した。

 最初はシロクロコンビの激しい動きに圧倒されて何も出来なかった俺だが、徐々に魔法で牽制できるようになってきた。


 俺は基本的には地属性の【ストーンショット】を使って動きを止める役。シロがダメージを重ね、クロがとどめを刺すという流れだ。

 本来なら、風の【エアスラッシャー】を使うのが楽なのだが、今回は連携の訓練とジェルボールのドロップ狙いなので打撃オンリーで戦っている。


 ストーンショットは石礫を高速でぶつける魔法だから、武器で言う打撃属性でもあるのだ。

 これは火属性以外の魔法全般に適用される。


 ちなみに、石礫をしこたま圧縮してドングリ型に整形し、回転を加えて射出することで威力を高め、なおかつ刺突属性を持たせる【スパイラルブレット】という魔法もある。ストーンショットの威力を高めようと色々試した結果完成したアレンジ魔法だ。キラービーによく効く。


 今まで使った感じでは火属性は威力が高いのだが、燃やせる相手に使うとドロップアイテムが出なくなったり「焦げた〇〇」みたいな微妙に劣化した物に変化してしまうのだ。


 多分、今後また新たなモンスターが出てくれば、そういった変化がプラスに働く場合もあるのではないかと考えている。

 まあ、その辺は追々だな。


「よーし、今日はここらで帰ろう」


 もうすぐ夕方という時間帯まで訓練を重ね、我々は帰路についた。

 そこそこ実りがあったかなー。



 自宅に戻った俺は、庭に大きな石造りの風呂を作りながら今日の成果を確認する。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV10】

【所持CP:6465】

【所持品:鉄の棒×2 ナタ 低級回復薬×2 低級解毒薬×2】

【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV2 二刀流LV2 地属性魔法LV3 金工LV2 魔力増加LV3 水属性魔法LV1 風属性魔法LV1 火属性魔法LV1 植物鑑定LV1 恐怖耐性LV4 毒耐性LV2 魔力探知LV2 打撃耐性LV1 刺突耐性LV1 体術LV1】

【称号:7級冒険者】


【名前:シロ】

【種族:ブルーアイズ・ホワイトラビットLV9】

【所持CP:7302】

【所持品:なし】

【所持スキル:気配察知LV2 獣体術LV2 風属性魔法LV2】

【称号:なし】


【名前:クロ】

【種族:レッドアイズ・ブラックラビットLV9】

【所持CP:6301】

【所持品:なし】

【所持スキル:気配察知LV2 獣体術LV2 無属性魔法LV2】

【称号:なし】


 俺は種族レベルと魔力増加スキルが一つずつ上がった。シロとクロは種族レベルのみのアップだな。まあ、CPはそこそこ稼げているし、良いんじゃないでしょうか。


 あと、シロクロコンビも酒場で普通に飲み食いできるようだ。カウンターに飛び乗ってマスターと何事かやり取りしたと思ったら、野菜盛り合わせが出てきたの。所持CPもちゃんと減ってたし……。


「よーし、できた! シロ、クロ、こっちおいでー体洗ってやるぞー」


 なんで大きな風呂を作っていたのかというと、シロクロと一緒に入れた方がいいなーと思ったからだ。湯は魔法で出せるし、排水は用水路に流してしまえば問題ないしね。


 どうやら二匹とも風呂が嫌いということもないようで、石鹸でアワアワにしても逃げたりはしない。

 さすがに野山で暮らしていただけあってすごい汚れだったが、何度か泡まみれにしては流しているとくすんでいた毛色に艶が戻ってきたようだ。


「よーし、湯船に浸かっていいぞー」


 俺がそう言うと、二匹はピョンとお湯に飛び込む。溺れたりしないように、量は少なめにしてあるので大丈夫だ。

 ウサギ達が気持ちよさそうにしているのを確認し、俺も体を洗う。湯船に入る前に綺麗にするのは入浴の作法だよねー。


 んで入浴。


「ふいー……極楽極楽……」


 ほとんど寝転ぶような態勢で湯に浸かり、大きく息を吐く。見上げれば満天の星空。


「星がハッキリ見えるんだなぁ……」


 世界が変容する以前は、この田舎でもここまでハッキリと星が見えることはなくなっていた。星空が綺麗だと思ったのは小学校以来かも。

 変容したことで、空気もきれいになったのかな?


「些細なことでも、落ち着く理由になるもんなのかもな……」


 シロ、クロと一緒に、ゆったりとした風呂で夜空を見上げる。たったそれだけの事で、この一月あまり張り詰め続けていた神経がほぐれていく気がした。


 よく考えたら、ほとんど休んでなかったなー……休みも挟まないとねえ。



 すっかりきれいになったシロクロと一緒にぐっすり眠り、スッキリ目覚めた翌朝。

 山で手に入れた幾つかの植物を、防壁を作る際に木を引っこ抜いた場所に移植しようと考えていた。


 残念ながら木の実のたぐいは全く手に入らなかったが、山椒、紫蘇、山葵、カラシナといった香辛料の元となる物は見つかったのだ。

 まあ、まだ本格的な秋じゃないんだから、木の実が熟してないのは当然といえば当然だったんだけどね……。


 だが俺は、そこで諦めはしなかった。

 木の実が拾えないなら、木そのものを持ってくればいいじゃない!という事で、栗の木と柿の木を数本ずつ引っこ抜いておいたのだ。

 こいつらを庭に移植しておけば、ちょっとした甘味も得られるようになるだろう。


 ちなみに木を抜くのには地属性の魔法を使った。畑を耕すのに使ったアレだね。魔法便利すぎる。

 あと、「どうせ冬になったら薪が必要になるんだろ?」という予想のもと、乾燥した枝や倒れた灌木なんかも拾い集めておいた。


 炭なんかも作れたら良いんだろうけど、「窯作って蒸し焼きにする」ってことくらいしか知らないからなあ……。

 なんもかんも一人でやらなきゃならない、というのが大変だ。ホント。


「まー、さっさと植えちゃうかねー」


 そんで、また促成栽培してギルドに納品しようっと。



 セーフティエリア内で植物の世話したり、魔法の訓練したり、売店で買った胡椒の苗木のためにジェルシート使ってビニールハウスっぽいものを作ったりしながら三日ほどのんびりした。


 合間合間にシロクロと戯れてはゴロゴロしまくったし、夜は露天風呂でまったりだったから実に良い骨休めになったよ。


「で、今日は久しぶりにダンジョンアタックだよー」


 現状、喫緊の課題は「塩」の入手先が無いという事だ。だからダンジョンという、普通でない環境の場所に何か希望がないかなーという考えなのだ。


 前回は戦闘メインだったが、今回は戦闘は控えめにしてマッピングを優先する。しかし紙が高かったよ。まさか、一枚50CPもするとは……。


 あとで藁を納品してやる。多分、次回以降は今回のより安い藁半紙みたいなのが出てくるだろう。

 あー、筆記用具も考えないとなあ……鉛筆作るには黒鉛と粘土だっけ? もう、問題山積みだよ。


 なんだかんだ考えながら、シロクロコンビと共にあっちこっち歩き回ること二時間ほど。深い階層へと続くと思しきスロープを発見した。ここまでは若干の起伏はあるもののアップダウンはなかったから、まず間違いあるまい。


「しかし今日は降りない!」


 という事でスルー。今日は地上一階を調べることが優先なのだ。

 なんとか、いわゆる採掘ポイントみたいなのを見つけたいところだが……。


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[一言] 面白い♪どうせならブルーアイズ何ちゃらドラゴンとかも出して仲間にして欲しいです(^w^)
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