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状態異常持ちは恐ろしい

本日4度目の投稿です。

 近隣にあらたなモンスターが現れた。

 その名もハームラビット。でかいウサギだ。近づかない限り攻撃してくることもないので、驚異にはならない……と思いきや、こいつは恐ろしい害獣だった。


 というのも、田んぼに実っている稲穂を食いまくるのだ!

 間もなく刈り入れという時期に、これはメチャ許せんよな~!


「オラアアァ!」


 灰色の毛並みを持つ害獣・ハームラビットを発見した俺は、一心不乱に鉄の棒を振り回す。

 ウサギは体長一メートル前後でゴブリン程度の強さなので、全力の一撃をブチ込めばほぼ一撃で倒せるから、発見次第ダッシュで駆除に向かっているのだ。


 ドロップアイテムは毛皮か肉で、どちらも50CPで売れるのでまあ悪くはない。とはいえ、あまり頻繁に来られても困るのだが。

 何故かと言うと、現在、急ピッチで田んぼを囲む土壁を建造中だから。


 ウサギが現れたことで、無防備な水田をどうにかしないと米を食い尽くされてしまうと慌てた俺が「田んぼごとセーフティエリアに出来ないのか?」と呟いたところ、ヘルプさんが『周囲を柵などの防壁で囲えばOK』と教えてくれたのだ。


 という事で地属性の魔法【アースウォール】を使いまくって防壁作成に勤しんでいる。

 一辺約三十メートルの田んぼを一枚ずつ土壁で囲んでいくわけだが、現在の俺では一回あたり十メートルの壁を作るのが限界だ。


 そのため、壁を立てては三時間休憩し、休憩中に薬草類を採取したりウサギを探しては駆除したり……というサイクルを繰り返している。三時間休めば(魔法を使わなければ)魔力が完全回復するのは、以前の試行錯誤で判明しているからね。


 そんな感じで、六日ほど自宅近辺の田んぼを土の壁で囲いまくった成果がこちら。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV7】

【所持CP:3400】

【所持品:鉄の棒×4 ナタ 低級回復薬×2 低級解毒薬×2】

【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV1 二刀流LV1 地属性魔法LV2 金工LV1 魔力増加LV2 水属性魔法LV1 風属性魔法LV1 火属性魔法LV1 植物鑑定LV1】

【称号:9級冒険者】


 見事に地属性魔法と魔力増加がレベルアップした。あと大量のウサギのおかげでCPがスゴイことに。それと所持品枠が四枠増えて十二枠に。

 しかし棍棒術は伸びないなあ。結構、ウサギ叩きまくってるのに……。


 ともあれ、魔法関連スキルのレベルアップに伴い【アースウォール】の効率が三倍近く高まったおかげで、二日目以降は一発で田んぼの一辺に土壁を建てられるようになった。


 なので、この六日間で五枚の田んぼがセーフティエリアになったよ!

 いや~一時はどうなることかと思ったけど、これで俺一人が食べる米くらいは確保できたはず。まあ、一人で刈り入れから何からやらなきゃいけないわけだけど……。


 今ぐらいは、この達成感に浸ってもよかろうなのだ。


「ん?」


 そんな風に考えながら川近くの薬草類を引っこ抜きまくっていた時、なにやら「ブブブブブ」という虫の羽音が聞こえてきた。


「うおっ!? でけええ!」


 川の対岸に目を向けると、深い雑木林の中から一匹のハチ型モンスターが飛んできた。なんと体長三十センチはあろうかという、バカでかいススメバチだ。

 完全にロックオンされてる!と思ったところで、案の定『キラービーが現れた!』というアナウンスが流れたよ……。


「うおおお! アースウォール!」


 アナウンスと同時に針を伸ばして突っ込んできたキラービーにビビって、思わず防壁を立てる俺。

 でも意外なことに、割と悪手ではなかったようだ。


 というのも針がそこそこの長さであるという事と、さんざん使い倒したアースウォールがかなりの密度で構築できるようになっていた事で、刺さった針がなかなか抜けないという状態を作り出せていたのだ。


 そこで若干冷静になれたと同時に、鉄の棒を取り出す余裕ができた。

 少し間合いを取る意味と、セーフティエリアに逃げ込む選択肢を増やすために数メートル後退する。


「……来い!」


 両手に握った棒を和太鼓を叩くような態勢で構え、針を抜き終えたキラービーを迎え撃つため気合を入れる。

 俺の声に反応したか、再び巨大スズメバチは翅を激しく振って土壁から飛び立った。


 初撃同様に毒針を構えて迫る魔物に対し、俺は右の鉄の棒を縦に振るう。するとキラービーは、風に舞う木の葉のごとく自然に横へと移動して攻撃をかわした。


 ハチに表情があれば、きっとニヤリと笑っただろう。今度はこちらの番だと、そして貴様は死ぬと。――しかし、こちらも回避されることは織り込み済み。本命は左の鉄の棒なのだ!


「はぁっ!」


 裂帛の気合とともに、鉄の棒を横薙ぎにする俺。それは横に移動していたキラービーの胸に、狙い過たず叩き込まれた。

 硬質な甲殻が攻撃の威力によって砕かれ、翅の一枚も脆くも折れてちぎれ飛ぶ。


 飛行能力を失い、地面に落下する巨大スズメバチ。そこに俺は無慈悲なトドメの一撃を振り下ろした。

 メシャリという、乾いたような湿ったような音を立てて頭を破壊されたキラービーは少しの間痙攣し、光の粒子となって散っていった。


『戦闘に勝利した!

 50の経験値を得た!

 50CPを得た!

 巨大蜂の毒針を得た!』


「ふいー……」


 戦闘終了のアナウンスを聞いて、俺はようやく体の力を抜いた。

 いやあ、初顔合わせの戦闘は緊張するねえ……。

 予想はしていたけど、ドロップアイテムの名前からして状態異常持ちだったようだ。


 毒がどういう性質のものかわからないけど、食らったら一発アウトって可能性もあるから気をつけねば。


「……ん?」


 すっかり脱力していた俺の耳に、また「ブブブブ」という音が聞こえてきた。


「おい……おいおい……おいおいおい!」


 音の発生方向であろう川の対岸を見ると、十匹以上のキラービーが木々の間から次々に現れた。

 当然、逃げの一手である。


「うわああああ!」


 編隊をなし飛来する巨大スズメバチの群れに背を向け、俺は一目散にセーフティエリアである冒険者ギルドの敷地を目指して駆け出した。

 何故か、最初に現れた(倒した)キラービーより移動速度が速い気がする。


 チラリと後ろを振り返ると、その理由がわかった。奴らは毒針を構えず飛ぶことにのみ注力しているのだ!

 ヤバイ、このままでは追いつかれ……。


「ぐっ!」


 刺された! と気づいた時には、もう呼吸がおかしくなっていた。さらに、足の踏ん張りが利かなくなり前進速度が落ちる。

 不幸中の幸いは、背中を狙っていたらしき個体が、力が抜けて前かがみになった俺の上を通過していったことだ。


 鉄の棒を二本とも取り落とした俺は、とうとう立っていることができなくなって前転するように地面を転がる。

 そのままの勢いで転がり続けた俺は、ギルドの敷地へとつながる柵の入り口を通過し仰向けに倒れた。


 ハチの群れはセーフティエリアの境界を越えられないようで、柵の周辺をウロウロと飛び回っている。

 これで一安心、ではあるのだが……問題は毒が回ってしまったことだ。


 すっかり手足はしびれて動かず、呼吸が浅く細くなっている上に刺された所がメチャクチャ痛い!

 おそらくは神経毒なのだろうが、これは時間経過で回復するものなのだろうか……?


 とはいえ、手が動かなければ解毒薬を飲むことも出来ない。回復することを祈りながら耐えるしかないか……。



 耐え続けること五分ほど。やっと手が動くようになったので、何とか解毒薬を取り出し、プルプルしながら小瓶の蓋を外して半ば放り込むように口に突っ込んだ。


 一息に嚥下した解毒薬はしっかりと効果を発揮し、数秒後には完全に体が動くようになった。呼吸もちゃんと出来るようになっている。


「ハァハァ……ああ~、怖かったああああぁ……」


 ハチの群れに追われたのもさる事ながら、毒で動けず激痛に耐え続けることしか出来ないというのは精神的にキツかった……。

 これは今後のことを考えると、なんとかして毒耐性を身に着けなければ「ハチに襲われる=死」みたいなことになりかねん。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV7】

【所持CP:3450】

【所持品:鉄の棒×4 ナタ 低級回復薬×2 低級解毒薬 巨大蜂の毒針】

【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV1 二刀流LV1 地属性魔法LV2 金工LV1 魔力増加LV2 水属性魔法LV1 風属性魔法LV1 火属性魔法LV1 植物鑑定LV1 恐怖耐性LV1】

【称号:9級冒険者】


 あ、恐怖耐性なんてスキルが生えてる……。ありがたいけど、毒耐性も一緒に生えてほしかったなあ。

 ……とりあえず、毒針の詳細見てみるか。


【巨大蜂の毒針

 ・キラービーの毒針。毒を帯びているので、取扱には注意が必要】


「…………これは」


 自傷してスキル身につけるしかないな!



 はい!ということで用意したのは低級解毒薬十本! これで1500CP、お高いですね~。

 さておき、これと毒針を使ってなんとか毒耐性を習得できないか頑張ってみたいと思いまーす。


 まずは解毒薬を口に含んだ状態で寝転びます。この時、飲み込んでしまわないように注意!

 次は……おもむろに毒針を腕にブッ刺す!

 そして毒が回ったのを確認次第、口内の解毒薬を全て飲み干します。

 あとはこれを解毒薬が尽きるまで繰り返すだけ!

 いや~、実に簡単な作業ですね!


 ……言葉にすれば簡単だけど、自分で自分を傷つけるのって心理的なハードルはものすごく高いよね……しかも毒のせいで普通に刺した時よりもずっと強烈な痛みを感じるし。


 でも、やらないわけにもいかないんだよねえ……。

 刺されて麻痺したら、逃げることも出来ずになぶり殺しになってしまうのは確実。あまつさえ食い殺されでもしたら……考えるのも恐ろしい。


 まあ、そんな感じなので頑張ってみた結果がこちら。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV7】

【所持CP:1950】

【所持品:鉄の棒×4 ナタ 低級回復薬 低級解毒薬 巨大蜂の針】

【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV1 二刀流LV1 地属性魔法LV2 金工LV1 魔力増加LV2 水属性魔法LV1 風属性魔法LV1 火属性魔法LV1 植物鑑定LV1 恐怖耐性LV2 毒耐性LV1】

【称号:9級冒険者】


 いや~、なんとかかんとか毒耐性を習得できたよ! あと、恐怖耐性がレベルアップしたね。怖かったからね!

 どうやら、十回くらい毒状態になったあと生きてたら毒耐性が身につくみたい。……相当厳しい条件だなこれ。他の状態異常もこうなのか?


 あと十回使ったら毒針の毒がなくなって、ただの針に。何かに使えるのかねえ?

 まあ、それは良いや。


 次は、この耐性にどの程度の効果があるのか確かめなきゃいけないんだけど……。それはすなわち、キラービーと戦わなきゃいけないってことで……。


 嫌だなあ……とりあえず回復薬と解毒薬買っとこ。



「ぬっ……ぐああ!」


 嫌なことはさっさとやってしまおう、という事で川のそばまで出かけた俺がしばらく立っていると、キラービーが二匹やってきた。

 やはり俺を見るなり臨戦態勢になって襲いかかってきたので、まずは一匹ずつ……と片方に集中。すると、残った一匹に見事に毒針で左腕を刺されましたとさ。


 いきなり呼吸が苦しくはならないが、メチャクチャ痛いのは変わらない。それにやっぱり、ジワジワ毒が回っている感じがする。

 とはいえ、ここで背中を見せても状況は好転しないから何とか倒すしかない。


 一匹は前回と同じ戦法で地面に叩き落としたから、二匹目も同じ手順で撃墜。受けた毒のせいで左手が若干しびれているため、二匹目はまだ元気だ。


「オラァ!」


 動き回られるのも嫌だから元気な方から倒す、ということで全力で頭を殴打。上手いこと一匹を倒せたので、次に取り掛かる。結果的には、特に問題なく二匹とも片付けた。


 息を抜いたところで新たな群れが現れたので、全力で撤退! 今回はセーフティエリアに近い位置で戦っていたので、無事ギルドの敷地内に退避できた。怖い怖い。解毒薬を飲んで回復。


 どうやらLV1でも毒耐性は結構な効果があるようだ。この感じならもう一つレベルをあげておけば痛みはともかく、毒で動けなくなることはなくなりそうだ。


 という事で、以後三日間に渡り「ハチ倒して毒針拾う→自傷でスキルレベル上げ」を繰り返した結果がこちら。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV8】

【所持CP:65】

【所持品:鉄の棒×4 ナタ 低級回復薬 低級解毒薬】

【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV1 二刀流LV1 地属性魔法LV2 金工LV1 魔力増加LV2 水属性魔法LV1 風属性魔法LV1 火属性魔法LV1 植物鑑定LV1 恐怖耐性LV3 毒耐性LV2】

【称号:8級冒険者】


 なんとかかんとか毒耐性が上がったよ! 恐怖耐性もあがった。しかし解毒薬を山ほど使ったために、CPがカツカツに……。

 薬草類の採取を並行してやっていなければ、飯も食えない状態になるところだよ。


 毒が抜けた巨大蜂の針も売っぱらった。あまりに金欠だったので。

 まあ、何かに使えるとしても思いついた時にまたハチを狩ればいいだろう。もう毒食らっても、二~三回刺されたくらいじゃ痛いだけで耐えられるようになったし。


 そう! 毒が回っても動けなくなることがなくなったのだ! もっといっぱい刺されたらわからんけども。

 何にせよ、当初の目標は達せられて一安心だよ……。


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