常設クエストは便利なようだ
本日3度目の更新です。
さて腹ごしらえもしたし、次はクエストの確認だ。
ということで、俺はギルドの入り口脇の掲示板へと足を向ける。
「10級で請けられるのは……薬草類の収集に、ゴブリンの討伐、ジェルボール?の討伐か」
どうやら掲示板は等級に対応したクエストのみが表示されるようだ。
等級が上がればそれ以下の等級も請けられるだろうから、上がれば上がるほど選択の幅が広くなるか。
とはいえ、等級が上がってるってことはレベルも上がってるだろうから、低い等級のクエストを請ける意味はあまりないかもしれないが。
それと10級のクエストはどれも常設らしく、クエスト達成に必要な素材収集あるいは討伐をこなした後に窓口に申請することも可能なようだ。これは便利。
「しかし、薬草類はどうやって確認するんだ?」
俺が疑問を口にすると、例によってピロリンという音の後、ヘルプさんが答えてくれた。
『所持品枠に収納すれば各種アイテムの名称を確認することができます』
なるほどねー、ゲームっぽいわー。よくある鑑定スキルはいらない感じだね。まあ、アイテムの詳細を知るためには必要かもしれんけど。
「ま、クエストはこんなとこだな。次は売店いってみるか」
確認を切り上げ、次の目的地へ。といっても受付カウンターの向こうだから、すぐそこだけど。
「おお、色々あるな」
売店の陳列棚を眺めると、武器に防具、アクセサリーに薬品類と様々なアイテムが並んでいる。
といってもそれっぽい映像が表示されているだけで、購入は目をやったときに開くウィンドウで行うようだが。
「うーむ……高いな」
武器で最も安いのは短刀とナタだが、それでも100CP。防具類では布のマントが50CPだが、どの程度の意味があるかは不明だ。買って自分で確認しろということだろうか……。
そういえば「ひのきのぼう」とか「こんぼう」なんかはないな。
まあ、そこら辺に生えてる木を切って作れそうなものではあるし、木工スキルで作れるか試してみるのも良いかもしれない。
「とりあえず、ナタ買っとくか」
ということでナタを購入し、所持品枠に収納して詳細を確認する。
【ナタ:攻撃力10 属性:斬撃】
「おっ、これは良い」
どうやら武器ごとに、いくつか属性があるようだ。
ついでに鉄の棒も確認。
【鉄の棒:攻撃力10 属性:打撃】
概ね予想通りの性能だ。攻撃力こそナタと同等だが、鉄の棒のほうが倍はリーチがあるから使い勝手は良い。
ただ、今後打撃属性に耐性のあるモンスターが出てくるだろうことを考えると、剣なり槍なりを用意しておく必要はあるかもしれない。
本来であればこういった属性耐性への対処は仲間の力を借りるべきなのだろうが、あいにく俺はボッチなのだ。だから、一人で各種物理属性と魔法属性を揃えておくしかない。
器用貧乏になるだろうが、そこはどうにか戦闘と訓練の密度を上げて対処する他ないだろう。
なんとか効率のいい方法を考えねば……。
◇
一旦、冒険者ギルドを出た俺は、近場にある灌木を一本伐採し、適当な小石をいくつか拾って戻った。
もちろん、各種生産スキルを試すためだ。
ヘルプさんの言を信じるなら石工スキルで石を加工していけば自然と魔力の操作も身につくだろうし、うまく行けば地属性魔法スキルも生えるかもしれない。
ということで冒険者ギルド敷地内の訓練場――もともと駐車場があった広場――で実験開始だ。
「さて、何を作るか……」
どうせなら欲張って、細工スキルも伸ばせそうな細かいフィギュアでも作ってみるか。趣味でフィギュア作りもやっていたからな。
ということで、ゴブリンのフィギュアを作ることにする。なんでゴブリンかというと、初めて対峙したモンスターだから物凄く強く印象に残っているからだ。
「よし……」
まずは石工スキルが発動する様に念じてみる。すると自分の体から、手に持った小石に何かが流れ込むのを感じた。おそらくこれが魔力なのだろう。
流れを止めないように、大まかに変形させることを意識する。頭、手、足の基礎となる形へ、と小石が徐々に変形していく。
次はそのまま細工スキルを意識し、各部の細かい造形を行う。ここはイメージ力が物を言うのではないかと思うが、ゴブリンの姿は脳裏に焼き付いているから楽勝だ。
「ふう……」
二十分ほどで、びっくりするほどリアルなゴブリンフィギュアが完成した。
残念ながらスキルレベルを上げるために必要な熟練度とでも言うべきものを確認する方法は無いようだが、なんとなく強い手応えを感じたから無駄にはなっていないと思う。
とりあえず、今日は魔力が尽きるまで生産スキルを使いまくってみるとしよう。
◇
五つ目のゴブリンフィギュアを完成させた所で、どうやら俺は意識を失ったらしい。というのも、気づいたら地面に横たわっていて、太陽はすっかり中天を過ぎていたからだ。
大体、三時間くらいは寝ていたっぽい。
作業中は体感的に段々魔力が減っていっている感覚があったが、今はすっかり全快しているように感じる。
「……まあ、喉も乾いたし、遅めの昼飯でも軽く食うか」
飲食スペースへ向かう途中でふと思いついた俺は、売店に行ってフィギュアが売れるか試してみた。するとゴブリンフィギュアは、一個あたり20CPで売ることができた。
効率がいいとは言えないだろうが、訓練のついでに小銭が稼げるのはちょっと得した気分だった。
◇
食事中にメニューを開いてみたら、思った通り地属性魔法スキルが生えていた。これは嬉しい。
ただ、スキルに関する説明が何もないので、どんな魔法を使えるかは自分で考えるしかなさそうだ。
「まあ、色々やってみるか!」
ちょっとテンションが上った俺は、ゲームなどで出てくる魔法を試してみることにした。
その結果、土を盛り上げて防壁を作る【アースウォール】、地面に浅い穴を開ける【ピット】、小石を作って地面から飛ばす【ストーンショット】を発動することに成功した。
で、それらの魔法を五回目に発動しようとした所で、また意識を失ったらしい。気づいたら薄暗い空を見上げていた……。
「……もう、今日はギルドで夜を明かすか」
魔力を消費し尽くしたら気絶して、三時間経ったら回復する。これはまあ、確定だろう。とすると訓練の時間を差し引いても、一日に五~六回気絶できる計算になる。
一~二時間おきに三時間寝ていれば睡眠時間は十分だろうし、せっかくだから何かのスキルレベルが上がるまで頑張ってみるかねー。
◇
明けて翌朝。
一晩中、魔法系スキルの訓練に明け暮れた結果がこちら。
【名前:リョージ】
【種族:人間LV3】
【所持CP:885】
【所持品:鉄の棒×4 ナタ】
【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV1 二刀流LV1 地属性魔法LV1 金工LV1 魔力増加LV1】
【称号:10級冒険者】
石工のレベルが一つ上がり、新しいスキルが二つ増えたよ!
流石に魔法のレベルが上がったりはしなかったが、十分な成果と言えるだろう。
ちなみに金工スキルは、思いつきで「欠けたナタの刃を細工スキルで直せないか?」と試した所、一発で気絶することになったが習得できた。ついでにその時、魔力増加スキルも習得した。
無茶をすると負担はでかいが、スキルを伸ばすのにはかなりプラスになるっぽい。
「とりあえず朝飯食って、一旦家に戻って風呂入るかー」
その後は水火風の三属性も覚えられるように、取っ掛かりを探らねばなるまい。
◇
結果から言うと、水火風の三属性もなんとか習得できた。
水と風は、それぞれ水と空気に手を触れて魔力を流して操ろうとすることで比較的すんなりといった。
しかし火はかなり難儀した。というのも、火に手を触れるという時点で肉体的にも精神的にもキツイからだ。それでも意を決して自宅にあったランプの火に手を触れてみた。
はい、一秒も保ちませんでした!
単に火傷しただけで終わったよ……。
ちなみに、傷は冒険者ギルドの売店に売ってる回復薬を飲むことで治した。一番安い物でも100CPもするので、なかなか痛い出費だった。
とはいえ、そこそこ広範囲に渡って火傷を負っていた掌が一瞬で治ったので、いざという時のために持っておくべきだと実感できたのは不幸中の幸いだったと思う。
ということで二本買っておいた。
ここで火属性習得法に頭を悩ませる事になったのだが、風呂に入っている時に「熱を帯びていれば火でなくても良いんじゃ?」と思いついて、湯の中の熱を動かすことを意識してみたところ、なんとか習得することが出来た。
結局、ここに至るまで一週間の時間がかかってしまったが、目標としていた四属性習得が成ったので良しとしよう。
そして今日までの成果がこちら。
【名前:リョージ】
【種族:人間LV3】
【所持CP:270】
【所持品:鉄の棒×4 ナタ 低級回復役×2】
【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV1 二刀流LV1 地属性魔法LV1 金工LV1 魔力増加LV1 水属性魔法LV1 風属性魔法LV1 火属性魔法LV1】
【称号:10級冒険者】
ひとまずの目標をクリアしたということで、明日からは常設依頼をやってみようと思う。
残りのCPも心もとなくなってきたしね……。
◇
はい、ということで翌朝。やってまいりましたのは、ここ近所の川べり。
何のためかというと、常設依頼である「薬草類の採取」をこなすためなのだが……。
「どれがどれだか、さっぱりわからん」
当然といえば当然なのだが、薬草なんてものの知識は俺にはない。そのため、雑草なのか薬草なのか、はたまた毒草なのかがまったく判別できないのであった。
そこで俺が取った手段は単純明快。「片っ端から所持品欄に突っ込む」というもの。
最初は「無駄なもの多そうだなあ」と思っていたのだが、そんなことはなかった。
何故かと言うと、薬草でなくとも使えるものが大半だったからだ。
例えばハーブ類。これは料理や乾燥させてお茶にしたりできるし、安いが買い取りもしてもらえる。種々様々な花は、ポプリや香水の材料になるらしい。
そして本命の薬草類だが、これも実に多くの種類があった。
回復役に使う「ナオリ草」。解毒薬に使う「ドクキエ草」。薬品の品質を高める「エグ草」。保湿剤に使う「ウルオイ草」。胃腸薬に使う「セイロ草」などだ。
どの草花かが判れば、それぞれ別の麻袋に詰める事ができるので、所持品欄を圧迫することもない。まあ、多少手間ではあるが。
あと「マヒシ草」や「メマイシ草」、「ドクウケ草」なんかの毒草もあった。そのまんま毒薬の材料になるそうな。
……それにしても、薬草・毒草類の名前が酷い。まあ、分かりやすいのはいいんだけども。
あと、一日中採取してはしまって確認……を繰り返していたおかげか、植物鑑定スキルを習得することができた。これで採取したことのある薬草類は所持品欄につっこまなくても見るだけで判別できるようになったよ。
それぞれの薬草は一定量集めることで依頼クリア&報酬50CPなので、今日の収入は450CPと中々の額となった。
薬草採取はスキルを伸ばすのには適していないけど、いつでもどこでも採取しておけば後で提出できるしそこそこ儲かる……というのは実に魅力的だ。今後も、外に出て何かする時にはついでに採取しておこう。
【名前:リョージ】
【種族:人間LV3】
【所持CP:720】
【所持品:鉄の棒×4 ナタ 低級回復薬×2】
【所持スキル:木工LV2 石工LV2 細工LV2 棍棒術LV1 二刀流LV1 地属性魔法LV1 金工LV1 魔力増加LV1 水属性魔法LV1 風属性魔法LV1 火属性魔法LV1 植物鑑定LV1】
【称号:10級冒険者】