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巨人の迷宮をクリアしたぞ!

『巨人の迷宮をクリアした!』


「おおっと」


 扉が開いた途端、アナウンスが流れて驚いたが、とりあえず俺たちは室内へと歩を進める。


『初クリアボーナスアイテムを選択してください』


「お?」


 続けて聞こえてきた声に俺は疑問符を浮かべるが、それは目の前に現れた光るパネルのような物によって解消された。

 そこには『マップ』『守りのリング』『念話のリング』と、三つの項目が表示されている。


「うーむ……」


 名前はあるけど、詳細は分からないんだよな。まあ、だいたい想像はつくけど。

『マップ』は文字通り地図、オートマッピングみたいなものだろう。『守りのリング』は防御力アップ。『念話のリング』は離れてても話せるか、動物とも話せるか、どっちかかな。


 『守りのリング』はドワーフたちに協力してもらえば高い防御力を備えた防具が作れると思うし、無しかな。

 ウサギたちと話せるようになるなら嬉しいけど、そうでなければ無駄になるから『念話のリング』も無し。


 となると……。


「マップで」


『エクストラスキル、マップを覚えた!

 初クリアボーナスにより、10万の経験値を得た!

 レベルが上った!

 初クリアボーナスにより、100万CPを得た!』


「わーお」


 ものすごい大盤振る舞いだな。

 とりあえずステータスの確認しとくか。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV60】

【所持CP:1216111】

【所持品:アダマンタイトの棍棒×2 ヒヒイロカネの剣鉈×2 ナタ 低級回復薬×9 低級解毒薬×9 アダマンタイトの戦鎚 溶岩巨人の魔石 炎の剣】

【所持スキル:木工LV3 石工LV3 細工LV2 棍棒術LV6 二刀流LV5 地属性魔法LV4 金工LV4 魔力増加LV5 水属性魔法LV4 風属性魔法LV4 火属性魔法LV5 植物鑑定LV2 恐怖耐性LV6 毒耐性LV3 魔力探知LV5 打撃耐性LV3 刺突耐性LV2 体術LV3 スタン耐性LV3 魔力操作LV4 剣術LV3  皮加工LV3 無属性魔法LV2 冷気耐性LV2 炎熱耐性LV2】

【エクストラスキル:マップLV1】

【称号:4級冒険者 ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー 迷宮踏破者】


【名前:シロ】

【種族:ブルーアイズ・ホワイトラビットLV60】

【所持CP:1192115】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9 手長巨人のツナギ・改二】

【所持スキル:気配察知LV5 獣体術LV4 風属性魔法LV5 スタン耐性LV2 打撃耐性LV1 無属性魔法LV2 冷気耐性LV1 炎熱耐性LV3】

【称号:ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー 迷宮踏破者】


【名前:クロ】

【種族:レッドアイズ・ブラックラビットLV60】

【所持CP:1192036】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9 手長巨人のツナギ・改二】

【所持スキル:気配察知LV6 獣体術LV5 無属性魔法LV4 スタン耐性LV2 打撃耐性LV2 冷気耐性LV1 炎熱耐性LV3】

【称号:ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー 迷宮踏破者】


 ついに、レベルが60に到達したねえ。最初はゴブリンにすら苦戦してたのに強くなったもんだ。

 スキルは炎熱耐性だけ上がってるな。あの環境と敵が相手じゃ当然といえば当然か。


 耐火の魔法をかけていたとはいえ防具類はあちこち焦げているから、後で修理しないと。家に置いてある素材で足りるかな。

 まあ、まずはゆっくり休まないと。


 ちなみにシロとクロは『守りのリング』をもらったようだ。

 彼らは防具に制限があるから、賢明な判断と言えるだろう。


「さて……これで迷宮での用事は終わりかな?」


 しばらく追加のアナウンスがないかと待ってみたが、何も言われなかったので部屋の奥へと進むことにした。

 といっても、そう大した広さではなかったので、すぐに最奥に着く。


 そこには第一階層と第六階層にもあった転移装置があった。


「一階から、ここにも来れるのかな?」


 ピロリン。


『不可能です』


 あ、そうですか。久しぶりだなヘルプさん!

 ま、一方通行ってことだし、さっさと帰りますかねー。



 結局、三日ほどダラダラしまくった。

 まあ、防具の修繕とか、魔法金属の作成とかもしたけど。

 あと炎の剣もいじってみたり。


 ラーヴァジャイアントが振り回しているときには気づかなかったけど、刀身に細かい文様が刻まれている。

 魔力を流すとそこがぼんやり光るので、炎を出すためのいわゆる魔法陣みたいなモノなのかもしれない。


 ドワーフたちにも聞いてみたが、残念ながら「そういう物がある」と知ってはいても作ることはできないそうだ。ドワーフは魔道具にはあまり興味はないらしい。あくまで「素材と腕で勝負!」みたいな感じだとか。


 詳しいことが分かれば、自分で魔剣とか作れるかもと思っていたので、ちょっとガッカリだ。

 でも、完全に諦めたわけではない。なんせドワーフが現れたのだから、他の種族が現れたって不思議はないはずだ。もしかしたら、その中に魔法陣に詳しい者もいるかもしれない。


 とりあえずは、炎の剣の文様を研究してみるとしようかね。



 エクストラスキルに関してだが、予想通りオートマッピングだった。

 しかも、これまで探索した場所なら野外だろうとダンジョンだろうと保存されていて、自分で注釈を入れたりもできる。


 特にダンジョンは立体と平面の物を切り替えて確認できるので、ワンフロア内での高低差なども分かって便利だ。

 あいにく魔物の情報は保存されていないようだが、まあそれは注釈を入れておけば良いだろう。


 だが、一つデメリットというか、気になることができてしまった。

 それはマップ内の埋まっていない場所を放置したくないという、ゲームでも起きる気持ちだ。


 もしかしたら、そこに何か採掘できるポイントがあるかも……なんて事を考えてしまう。

 ということで、俺はお休みを終えた後、チマチマ巨人の迷宮に潜ってはマップを埋めるという行為を繰り返しているのだ。


 そして、それは無駄ではなかった。

 第三階層のとある場所に群生していた『マナ苔』という苔を採取して持って帰ったところ、中級回復薬が販売されるようになったのだ。


 その事実が判明してから、俺は定期的にそこに採取に行くようになった。もちろん取り尽くしたりはせず、繁茂する速度を鑑みて数日に一度だけだ。


 それに中級回復薬一瓶に必要な量はさほど多くないらしく、一度の採取で得た苔で三十本はつくれる。だから、少しずつ納品すれば自然と沢山備蓄できると思う。


 妖魔の迷宮の探索を本格的に始める頃には、気にせず使えるようになるかなー。

 あ、あとマナ苔の採取は常設クエストになったので、冒険者としての活動にもプラスになるのだ。


 まあ、ランクが上がっても大して依頼は変化しないんだけど。

 高ランクが対処しなきゃいけないような強い魔物があまり出ない地域だ、ってのは良いことだ。


 それから例のサドンクエストは、一定以上の数の魔物がダンジョンに溜まったら起こるそうな。以前は答えてくれなかったけど、迷宮をクリアしたことでヘルプさんが教えてくれたのだ。なんか制限があったみたい。


 それと一度クリアしたダンジョンは氾濫しなくなるそうで、巨人の迷宮の間引きとか考えなくて済むから助かる。

 うちの拠点は人手が少ないからねえ。


 妖魔の迷宮の方は先日のサドンクエストがソレっぽいけど、ダンジョンの外には溢れてないから、近い内に大規模な間引きを行おうとドワーフたちとも話し合った。


 近場で氾濫が起きると魔物の生息域が変化しちゃうし、うっかり強い魔物の群れなんかに住み着かれては困るからね。



 ということで数日後、俺たちはドワーフの戦士たちとともに妖魔の迷宮第二階層へと潜った。

 第一階層はドワーフたちの集落があり、出てくる魔物もボール系のアースジェルボールだけなのでスルー。


 ちなみにアースジェルボールのドロップは、魔石とアースジェルシート。このシートは、ドワーフたちの家を建てるのに使っているそうだ。


 どう使うかというと、いわゆるパッキンのように水が入ってきたら困る場所の隙間を埋めたり、石材同士をくっつける接着剤のように使ったり(熱すると固まるそうな)するようだ。


 色々使い途があるものだなあ、と感心する。



 結局、この日は第三階層までの魔物を殲滅した。

 第二階層はゴブリンと体長五十センチほどのネズミ・ヒュージラット、第三階層はオークとワイルドボアが現れたが、さしたる問題もなく倒せた。


 それぞれのドロップは、ヒュージラットが毛皮と前歯、ワイルドボアが毛皮と肉。

 ネズミの前歯は、ナイフや鏃に使うそうな。イノシシの肉は、ドワーフも大好きだというから食べるのが楽しみだ。


 例によって俺たちが一番多く狩ることになったから肉も大漁だ。

 ということで、大放出して宴会だな!



 そんなこんなで、もうすっかり冬の真っ只中だ。

 ちょっとだけだが雪も降り、ウサギたちははしゃいで跳ね回っている。


 俺はというと、炎の剣を解析してコタツを作った。

 何をしてるんだと思うだろうが、魔法陣の起動にジェルボールの魔石を燃料として使ってみると、丁度いい熱気を出したのだ。


 ということで猫小屋に掘りごたつを設置し、猫と一緒にダラダラごろごろするのが日課となっている。

 ちなみにコタツはドワーフにも好評で、うちの拠点に住み込みで農業をする人たちの住居にも導入された。洞窟内は一定の気温だから、今まで経験のなかった冬の寒さがきつかったみたい。


 それと本格的な冬の到来によって、スノーウルフやサスカッチが増えている。どうも、もっと北の地域から南下してきてるっぽい。

 となると、環境が変化しなければ冬になったら毎年移動してくることになるのだろう。


 俺とシロクロコンビには何ともないけど、戦士でないドワーフたちにはスノーウルフがちょっと危ないので気をつけておかねば。

 まあ、城壁の中にいればなんともないけど。


 ただ、完全に冬を越してみないことには他の魔物が移動してこないとも限らないから、ある程度は警戒しておく必要がある。

 特に空を飛ぶ系統のモノは要注意だ。でかい鳥とか飛竜とか、いかにも出てきそうだもんね。


 春までは三ヶ月ほどあるから、思いつく限りの備えはやっておこう。



 一週間おきに妖魔の迷宮の間引きを行うこと一月、第五階層まではおおむね浚うことができた。

 巨人の迷宮の氾濫は第五階層までの魔物しか出てこなかったから、おそらくこれで妖魔の迷宮も安心だろう。


 ちなみに第四階層はコボルトとケイブウルフ、第五階層はオークリーダーとコボルトリーダーだった。

 ……なんか巨人の迷宮に比べて、難易度が格段に低いんだけど。


 なぜ氾濫を起こしたダンジョンに限ってうちの近くだったのか、という理不尽を感じる。

 まあ、愚痴ってもしょうがないことだけどね。


 それはさておき、巨人の迷宮について分かったことが二つ。

 それは周回してもクリアボーナスの『守りのリング』と『念話のリング』は貰えるということと、マップは初回にしかもらえないっぽいということだ。


 最初にマップを貰っておいて良かった! と思ったよ。ホントに。

 二種のリングもゲットし、念話も試してみたのだが……ウサギたちとの念話は鳴き声しか聞こえなかった。無念。


 シロとクロは三回とも『守りのリング』を貰い、両足と首につけている。

 重複しても機能しないのでは? と思ったのだが、部位が違えばOKという仕様のようだ。


 実験してみたところ、頭・腕・胴体・足という四ヶ所に装備できる模様。ただ、ウサギは仕様が違うのか――あるいは装備部位が少ないことに対する救済措置か――両足につけてもちゃんと機能していた。


 あ、リングは自動でサイズが変化するので、どこにでもつけれるよ。

 それと残念ながらリングには魔法陣のような文様はなかったので、魔道具制作の研究対象にはならなかった。


 あと二回目以降のボスもラーヴァジャイアントだったのだが、喋りもせず戦うだけになっていた。唸り声は上げてたけど。

 ダンジョンという場所の機能で再生されただけ、って感じなのかなあ……。ちょっと哀れだ。


 だがまあ、自分たちの身を守り力を付けておくためには、何度でも倒すんですがね!



 その後、一月かけて妖魔の迷宮を踏破した。

 思ったとおり、難易度はかなり低かったよ。なにしろ、ボスがオークキングとコボルトキング、そしてゴブリンキングだったからねえ。


 一応、道中にも触れておくと、第六階層がゴブリンリーダーと体長一メートルほどのジャイアントラット(ゴブリンリーダーが乗ってることもある)。

 第七階層がコボルトジェネラルとトラくらいの大きさのレイジウルフ(コボルトジェネラルが乗ってることもある)。

 第八階層がオークジェネラルと軽自動車くらいあるブレードボア(オークジェネラルが乗ってることもある)。

 第九階層がゴブリンジェネラルと体長二メートルほどのギガスラット(ゴブリンジェネラルが乗ってることもある)が現れた。


 なんとも捻りのない構成だなあ……と思ったものだ。

 ただ、第十階層だけは時間をかけるとキングが配下を呼ぶということがあったので、適正レベルで戦っていたら相当苦戦していただろう。


 ま、先に難易度のずっと高い巨人の迷宮を踏破していた影響だね。

 初クリアボーナスの経験値やGPも控え目に感じるくらい差があったし。


 ちなみにボーナスアイテムは『マップ』『剛力のリング』『魔法耐性のネックレス』の三種だった。

 初回はためらわずマップを選んだよ。そしたらスキルレベルが2に上がって、近くにいる人がマップ上に表示されるようになった。これは中々の機能向上じゃないですか?


 レベル3になったら魔物が表示されるようになるのかも……と思うと希望が膨らむ。

 欲を言えば、数字も表示してくれると助かるんだがなあ。まあ、言い出したらきりがないんだけど。


 ふと気づいたら、もうとっくに年越してた。

 カレンダーも時計もないから、確認のしようもないけど。

 それにしても、なんとも怒涛の数ヶ月だったなあ……。


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