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ラーヴァジャイアントとの死闘!

 俺たちの攻撃からあっさり立ち直ったラーヴァジャイアントは、優位に立ったと判断したか、炎の巨剣を気分良く振り回してきた。

 大きさのせいで速度そのものは遅いのだが、その分リーチが長いため、いちいち全力で避けることを強いられる。


 体力は低級回復薬でどうにかなるとはいえ、そう長々とこの状況を続けていたくはない。しかし、攻撃しても即座に再生されてしまえば意味がないのだ。


 ――となれば、エネルギー源になっているであろう溶岩をどうにかするしかない。


「シロ! クロ! 魔石使いまくって顔ばっか狙ってくれ!」


 ダメージは大したことなくても顔を狙われれば注意はそれるだろうということで、ウサギたちに指示を出す。

 魔石はここまでにそれなりの数が拾えているので、低位の魔法をメインにすれば消費を気にする必要はないはずだ。


「キュキュッ!」

「キュキュ~!」


 シロクロコンビは早速攻撃を開始、俺は巨人の意識が彼らに集まったのを見て、溶岩の流れ出す火口へと駆け出した。

 さて、見切り発車で行動してしまったが……どう対処すべきか。


 水をぶっかけるのは現実的ではないし、火属性で熱をどうにかするのも難しそうだ。となると……やはり地属性でどうにか塞ぐしかないか。


「でけえな、おい……」


 火口のすぐ側まで到達した俺は、思わず愚痴をこぼした。

 なにしろ、直径百メートルはあろうかという巨大な火口だ。思った通り、冷やすのは絶対ムリ。


「床を、もう一枚敷く勢いでやるしかないか……ストーンウォ――――――――ル!」


 魔石を一気に九個取り出し、それを全て費やして一気に石の壁――もとい石の床を、火口を構成している岩石を変形させて作り上げる。


 これなら火口を塞ぐのもヒビを塞ぐのも一度にできるし、魔力で石を作り出すよりローコストだ。

 とはいえ範囲が範囲だけに、魔石は次々と魔力を失って砕けてゆく。


「ぬっ!? 貴様! 何をしている!」


 俺の行動に気づいたラーヴァジャイアントが、焦ったような怒ったような声を上げて振り返る。

 まあ、これだけ派手に動いていれば気づかれるよね。


 だが、止めようとするということは、火口というか溶岩が生命線であると言っているようなものだ。ならば、このまま完全に塞いでしまえばいい……と言いたいところだが、当然、巨人が邪魔しようと駆けてくる。


 巨体故に遅く見えるが、歩幅が人間の五倍以上あるので、俺はあっという間に射程距離に収められた。


「我が領域を改変しようなど、許さぬ!」


 そして巨人は、怒声とともに巨剣を振り上げた。火口だった部分を破壊しようというのだろう。

 だが、こちらもそう来るのは分かっていた。だから魔法を発動する。


「アイスストリーム!」


 吹雪ではなく、氷の流れ……つまりウォーターストリームを低温にしたもの。ぶっちゃけ氷水だ。


「ぐおお!?」


 顔面に氷混じりの冷水をぶっかけられ、ラーヴァジャイアントがのけぞる。


「キュキュッ!」

「キュキュ~!」


 そこに巨人の後方から走ってきたウサギたちが、またしても膕に全力ウサキックを叩き込んだ。良いタイミングで入った攻撃で、ラーヴァジャイアントはものすごい勢いで仰向けに転倒した。


 叩きつけられた背中が地面を砕き、辺りを揺らす。


「おりゃあ!」


 倒れている巨人のつま先に、俺は全力でアダマンタイトの棍棒を叩きつけた。比較的厚みの薄い場所だけに、指に当たる部分は全て砕けて飛び散り、巨人が悲鳴を上げる。


「おのれぇ! 調子に――」


 怨嗟の声とともに起き上がろうともがくラーヴァジャイアントの顔面に、シロクロコンビの無属性魔法・マナボルトが何発も炸裂した。ナイスフォローだ。俺も続けて攻撃しよう。


「もいっちょ、アイスストリーム!」


 今度は、足元から巨人の全身をまんべんなく濡らすように魔法を放つ。文字通り焼け石に水ではあるが、溶岩による回復がほとんどできなくなっている現状では多少は意味があるはずだ。


 事実、さっき砕いたつま先はまだ回復しきっていない。赤熱していた岩石の色も、冷水を浴びて若干暗くなっている気もする。

 それに冷やされるとラーヴァジャイアントは悲鳴を上げているから、少なからずダメージが入っているのだろう。


 なんとか火口(封鎖済み)を守りつつ、このままの流れでダメージを重ねていきたい。



 火口防衛戦を続けること一時間強、俺たちは未だに耐えしのいでいた。

 一方、ラーヴァジャイアントは徐々にダメージが蓄積し、漏れ出ていた溶岩はもう吸収し尽くしている。体の岩石もヒビが目立つ有様だ。


 だが、こちらも相当な消耗を強いられている。

 低級回復薬はすでに五十本は使っているし、魔石も残り少なくなってきた。


 シロとクロは武器が持てないため、どうしても攻撃する時に熱によるダメージを受けてしまうので、アイテム類の消費が激しい。

 何度となくアイスストリームで冷やしてはいるが、巨人はまだまだ強力な熱気を帯びているのだ。


 こちらの狙いが足であることもバレているので、ラーヴァジャイアントは炎の剣も使って防御を優先するようになっている。そのため決定的な一撃が放てない。


 いつもなら落とし穴を使うところだが、ここではうかつに穴を掘ったら敵に利する事になりかねないため、手札が制限されてしまっているのも悩みどころだ。


「おのれ……! この我に、これほどの手間を掛けさせるとは……!」


 ふと互いの手が止まった瞬間に、巨人が怒りの声を漏らす。

 その顔は岩でできているのに、怒りの形相が浮かんでいるのが分かるほどだ。


「もはや容赦はせぬ! 全身全霊を持って焼き尽くしてくれるぞ!」


 そう言うやいなや、ラーヴァジャイアントは自身の魔力を炎の剣に流し込み、剣がまとっていた炎を何倍にも拡大させた。轟々と燃え盛る炎はヤツ自身の身長をも超えるほど、高く立ち上っている。


 しかし、逆に巨人の体を覆っていた炎は勢いを弱め、僅かな溶岩と赤黒い岩石が露出してしまっていた。

 防御を捨ててまでも、早い決着を望んでいるということか。


 こちらとしても、それは望む所。

 耐火の魔法で十分熱を防げるようになったと見て取っったシロクロコンビが、ラーヴァジャイアントの背後から駆け寄る。俺は変わらず火口の防衛だ。


「死ね!」


 巨人が真っ向唐竹割りに巨剣を振り下ろす。恐ろしいサイズの炎をまとった刃を避けようと思えば、全力で横っ飛びしなければならない。が、床を叩かれてもマズイため、防御せざるを得ない。


「アイアンウォール!」


 ここで俺は、これまで使っていなかった手札を切った。

 地属性のウォール系魔法の三つ目、鉄の壁を発生させる魔法だ。

 石の壁よりは熱に弱いが、頑強さでは勝る。それが証拠に、炎の剣は壁の半ばまで食い込みはしたが、砕けることはない。


「もいっちょ、アイアンウォール!」


 魔力の消費はかなり大きいが、ここが勝負所と判断し連発する。今度の狙いは炎の剣――その鍔だ。

 刃が食い込んでいる鉄壁の頂点から、さらに伸びた鉄が巨剣の鍔を飲み込みその場に固定する。


「なっ!?」


 ラーヴァジャイアントの驚きの声を尻目に、ウサギたちが突進の勢いのまま滑り込むようにして、それぞれ片足のくるぶしに全力ウサキックを叩き込んだ。


「ぐおおっ!! おのれ、小虫が!!」


 痛みに悲鳴を上げながらも、巨人はシロとクロを追い散らそうと足踏みする。

 ヤツの両足首は大きくひび割れ、もう一撃でも強い攻撃を喰らえば砕けてしまいそうだ。


 俺は完全に注意がそれたのを見逃さず、鉄壁の上に飛び乗った。

 ラーヴァジャイアントはどうしても炎の剣を離したくないのか、両手でしっかりと握ったままだ。


 ――おかげで、伸び切った手首を狙える。


「ドラアァッ!!」


 一足飛びに間合いを詰め、俺は両手持ちにしたアダマンタイトの棍棒を全力で巨人の右手首にブチ込んだ。


「がぁッ!?」


 当然、気づかれるが、構うものかともう一撃を振り下ろす。

 そして――バゴッ、という重い音が響き、ラーヴァジャイアントの手首が砕けた。


「ギャアアア!! おのれ! おのれえええ!!」


 とうとう剣から手を離した巨人が、何度目かわからない怨嗟の声を上げながら俺を捉えようと左手を伸ばす。

 だが、その行動はシロクロコンビによって阻まれた。二匹は再び足首に全力攻撃を加えたのだ。


 危うい状態だったラーヴァジャイアントの両足首はいよいよ亀裂が広がり、巨体の重さでギシギシときしむ。

 そして――。


「ウグアアアア!!」


 ついに荷重に耐えられなくなった岩石の足首が折れ、巨人は悲鳴を上げながら地面に倒れ伏した。


「アイスストリーム! アイスストリーム! アイスストリーム!」


 ダメージがかさみ、さらに赤みを弱くしたラーヴァジャイアントの岩石ボディに、俺はさらに追撃する。

 冷水が体表を洗うたび、蒸気が上がり熱が奪われ、ジュウジュウと水が蒸発する音に紛れ、岩が縮むビシビシという音が響く。


「があああ!! やめろ! やめろおおお!!」


 急激な温度変化で体中の岩石がひび割れ、巨人の身も世もない哀願とも取れる叫びが上がる。

 しかし、俺たちがここで手を緩めるわけもない。


 なんとか身を起こそうとするラーヴァジャイアントの左手首に、クロが全力ドロップキックをかます。

 今現在、残っているパーツで最も脆いであろう場所だ。――期待通り、その一撃は巨人の手首をへし折った。


「グゴオオオ!! なぜだ! なぜ我が、こんな目にいいい!!」


 そりゃ管理者とやらのせいか、いきなり俺たちを殺そうとしたからか、どっちかだな。

 哀れとは思うが、殺されてやるつもりはないし……。


「キュキュキューッ!」


 シロが「お前の事情など知らん」とばかりに跳び上がった。その跳躍には風の勢いが加わっており、強化した脚力も相まって普段の倍近く上昇している。


 ジャンプの頂点に達したシロは、竜巻の力で体を錐揉み回転點せながら落下してきた。そして彼の両足は、まるで強化をそこにのみ集中したかのように強い光を放ち、螺旋の尾を引いてグングン勢いを増してゆく。


 ――その姿は、さながら光のドリルだ。


「キューキュッ、キューッ!!」


 一際声高く鳴いたシロの両足が、巨人のうなじに炸裂した。


 ――ゴガァン!


 重々しい衝突音を響かせ、巨人の顔面が地面にめり込む。

 そしてシロは、どうやら足がすごく痛かったらしく、急いで低級回復薬を飲みまくっている。


 ……いやまあ、あの勢いでぶつかれば痛いわな。


「お……ご……」


 さておき、シロの必殺キック? は、見た目通り凄まじい破壊力を叩き出したようで、ラーヴァジャイアントはうめき声を上げることしかできなくなっている。


 シロが飛び降りた後、巨人の延髄付近はシロの足型に凹み、ひどくひび割れているのが見て取れた。今にも砕けそうだ。


「キュキュ~!」


 そこに飛び込むのはクロ。彼もまた、両足を激しく輝かせながら両足によるキックを叩き込んだ。

 そして――今度こそ、ラーヴァジャイアントの首は音を立てて砕け散る。


 しばらく巨人が動き出さないか警戒していると、その体を構成していた大小の岩石がバラバラと崩れていった。


『ラーヴァジャイアントを倒した!』


 と同時に、戦闘終了のアナウンスが流れる。

 いやいや、長い戦いだった……。



 ラーヴァジャイアントのドロップアイテムは魔石のみだった。

 ……ラスボスつーかダンジョンのボスっぽいのに、なんかしょぼいな。


 あ、でも炎の剣も残ったか。

 刃渡り五メートルくらいあるから使えないけど……。


「にしても、開かねえな……」


 しばらく休憩した後、俺たちは階段への入り口を確認していた。

 戦いが始まる直前に崩落して埋まってしまったのがそのままで、なぜか押しても引いても岩の一つも動かない。


 魔法的な何かで閉じ込められてるのかなあ……。


「まあ、奥に向かってみるか」


 ということで、俺はシロクロコンビとともに火口の向こうへと歩を進めた。



「お、扉だ」


 巨大な広間の一番奥――入り口からすると十キロは歩いただろうか? ――そこに、これまた巨大な扉があった。巨人でも通れそう。


 無骨な両開きの鉄の扉って感じで、扉の合わせ目付近に拳大の水晶玉? がはめ込まれている。

 多分、触るか魔力流すかするんだろうなーということで、高さ五メートル程のそこまで、ストーンウォールで足場を伸ばす。


「触るだけじゃ無反応か。じゃあ、魔力を流してみる……と」


 ということで魔力を流すと、扉は音を立てて開きはじめた。

 はてさて、この先には一体なにがあるのやら。


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