表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/47

ついに最下層到達! そして……

 第九階層の探索を再開する前に、しっかりステータスと持ち物をチェックしておこう。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV57】

【所持CP:162111】

【所持品:アダマンタイトの棍棒×2 ヒヒイロカネの剣鉈×2 ナタ 低級回復薬×9 低級解毒薬×9 アダマンタイトの戦鎚 石の桶×9】

【所持スキル:木工LV3 石工LV3 細工LV2 棍棒術LV6 二刀流LV5 地属性魔法LV4 金工LV4 魔力増加LV5 水属性魔法LV4 風属性魔法LV4 火属性魔法LV5 植物鑑定LV2 恐怖耐性LV6 毒耐性LV3 魔力探知LV5 打撃耐性LV3 刺突耐性LV2 体術LV3 スタン耐性LV3 魔力操作LV4 剣術LV3  皮加工LV3 無属性魔法LV2 冷気耐性LV2 炎熱耐性LV1】

【称号:5級冒険者 ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー】


【名前:シロ】

【種族:ブルーアイズ・ホワイトラビットLV57】

【所持CP:138115】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9 手長巨人のツナギ・改二】

【所持スキル:気配察知LV5 獣体術LV4 風属性魔法LV5 スタン耐性LV2 打撃耐性LV1 無属性魔法LV2 冷気耐性LV1 炎熱耐性LV2】

【称号:ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー】


【名前:クロ】

【種族:レッドアイズ・ブラックラビットLV57】

【所持CP:138036】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9 手長巨人のツナギ・改二】

【所持スキル:気配察知LV6 獣体術LV5 無属性魔法LV4 スタン耐性LV2 打撃耐性LV2 冷気耐性LV1 炎熱耐性LV2】

【称号:ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー】


 ミノタウロスとファイアジャイアントが大量だったおかげで、レベルがゴリっと上がった。そして、ついにシロクロコンビとレベルが同じになった。メインで使ったスキルも、ちょこちょこ伸びている。


 それと冷気耐性・炎熱耐性が身についたのは、あの環境なら当然だろう。ウサギたちとのスキルレベルの違いは、種族的なものかな? まあ、そんなに気にする必要もないとは思うが。


 あと俺の持ち物で『石の桶』というのがあるが、これは水が満タンに入ったものだ。何のためかというと、ファイアジャイアント対策だね。


 風呂桶並みの桶に入った水を、あの大広間に到着次第ぶっかけまくるのだ。そうすればわざわざ魔力を消耗して水魔法を使う必要もなく、ファイアジャイアントを弱らせることができるだろう。


 魔石を持っておけば魔力が枯渇することもないだろうけど、魔法を使えば精神的に疲れるからねえ。

 さあて、チェックも終わったし、いっちょ行きますか!



 意気揚々と出発した俺たちだったが、第八階層で思わぬ足止めを食らっていた。


「……いつまで湧いてくるんだ」


 山と現れるフロストジャイアントに、いい加減うんざりしはじめた。

 どうしたことか、例の雪原に入った途端、襲いかかってきたのだ。それも先日よりも遥かに積雪量が多く、イコール霜の巨人も多い。


 これまでと違っているのは、強烈な吹雪が起こされていること。

 突っ込んでくる分にはフレイムウォールで対処するだけなのだが、吹雪のせいか耐久力も上がっているようで、炎の壁を抜けてきたモノへの対処に追われている。


 それに吹雪は、まるで意思があるかのように俺たちに吹き付けてくる。完全に視界が塞がれるほどではないが、白いフィールドに白い巨人と白い雪だ。どうにも反応が遅れてしまう。


 直撃を食らうことはないが、段々とフロストジャイアントの氷の剣が近くを通ることが多くなってきた。

 そんな中で、シロとクロは何やら明後日の方向を攻撃していることが多い。野生の勘が鋭い彼らのこと、無意味な行動を取っているわけではないと思うが……。


「あ……アレか、雪の精!」


 ようやくその存在を思い出したよ。初回しか出てきていない上に、いつの間にか倒してて未だに姿を見ていないアレ。

 ドロップアイテムの説明からフロストスピリットという名前だとは分かっているのだが、それ以外は何もかもが不明なのだ。


 しかしシロクロコンビの行動から考えれば、吹雪に紛れている……いや、吹雪そのものをフロストスピリットが起こしている可能性もある。


 だが……実際のところ、どれほど炎を浴びせようと吹雪を消すことは出来ない。それに、ウサギたちですら捕捉しきれないステルス能力は恐ろしく厄介だ。


「……吹雪に直接干渉するしかないか。シロ、クロ、フロストジャイアントの相手頼む!」


 切羽詰まったというわけではないが、であればこそ今のうちにできそうなことは試しておくべきだろう。

 ということで巨人の相手はウサギたちに任せ、俺はムリヤリ吹雪をどうにかしようと魔力を放出しはじめた。


 まずは無属性魔法を得た時の感覚を思い出そうと努める。無い物を自分の中から捻り出すイメージだ。

 今回の場合は、あるのかないのか分からない『氷属性』ということになる。


 だがまあ、イメージすれば大体はどうにかなるのが魔法だ。ならば、きっと氷属性も習得できる。

 ――そう信じ込むのだ。


 氷というか……低温を操るというのが実体か?

 湯の温度を操ろうとしたら火属性を習得できたのだから、おそらくはそうだろう。


 どっちも原子の動きを操るという意味では同じ、だったか?

 それを意識しつつ、相手より強い魔力でそこらにある水気を低温にする……そうすれば雪はさらに凝固し風に舞うほど軽くはなくなる。はず。


 ……あれ? なんかおかしくない? 吹雪って風と水と火の合成魔法じゃない? 氷属性ってのがあるとしても、単体で吹雪にはならないよね? んんんー?


「あ、うん。できるよな」


 試しに水を出して熱というか原子の運動を止めるのをイメージしてみると、見事に氷ができた。

 てことは――氷属性は、無い。


「もう、熱風で良いわ!」


 よく考えれば、普通にドライヤーとか魔法で再現してたわ!

 全力で風と火の合成魔法【ヒートサイクロン】をぶっ放す。

 遠回りしまくったバカバカしさに後押しされ、結構な魔力が込められた巨大な熱風竜巻がゆっくりと前進してゆく。


 すると吹雪は、熱によってあっさりと雨に変化した。それも温かい雨。そうなると、たまらないのはフロストジャイアントとフロストスピリットだ。


 吹雪の隠れ蓑が剥がされ、フロストスピリットが初めて姿を現した。正八面体の氷って感じの見た目だ。

 その形も、温かいシャワーを浴びると徐々に溶けて歪になってゆく。


 フロストジャイアントの方は溶けはしないものの、体が重くなったらしく動きに精彩を欠くようになってきた。また、もう仲間を呼ぶこともなくなっている。


 というか、ヒートサイクロンで地面の雪までどんどん溶かされているせいで、隠れていた霜の巨人はそのまま死んでしまっているものもいるようだ。雪が水になり、流れた後に魔石が残っているから間違いあるまい。


 それにしても、今回はバカバカしい足止めを食った上に、見当外れな推測でありもしない属性を身に着けようとしてみたり、散々な結果に終わったなあ……。


 気分を入れ替えるためにも、今日はもう帰ろうっと。



 ということで再びお休みです。

 今回はダラダラしつつ、合成魔法の実験をしてみた。

 その結果、水と火(熱の操作)で氷、水と風で雷、風(酸素と水素)と火で爆発を発生させられる事が分かった。簡単な科学知識とイメージの賜物だね。


 この合成魔法だが、見ての通り二つの合成でもかなり使える。だが、雷に関してはそれだけだとその場で電気が出るだけで正直危ない。


 そこでもう一つ、地を混ぜてみたところ、狙ったところに雷を落とすことができるようになった。要は発生させる部分と着弾する場所を指定する部分を担当させる属性が必要だったというわけだ。


 まあ、魔力の消費がでかいから、そう頻繁には使えないだろうけど、手札が増えるのは良いことだよね。

 それと今回のことから気づいたのは、魔物には普通に合成属性とでも言うべき属性や魔法を持っているモノがいるということ。


 今後は電撃持ちとかも出てきそうな予感。うーむ、事前に自分で感電して耐性を付けておくべきか……。



 はーい、気分も入れ替わったし、今回こそは第九階層を抜けるぞい!


「ミノタウロスは相変わらずだな……」


 一列縦隊で長い通路を駆けてくる牛巨人に呆れつつ、合成魔法【ライトニングボルト】で攻撃。すると一直線に奔った雷光がミノタウロスのロングホーンなトレインを貫通し、脱線事故を起こし全車両が転倒。感電して無防備になったところを、強化ウサキックで片付けられるという事態に。


 時間も短縮されるし、何度も魔法を使わなくて良いから消耗も減ったよ。

 そしてあっさり最深部『炎の大広間』と名付けた場所に到着。ここでは当初予定していた通りに、石の桶に満載した水をぶっかけまくる。


 やっぱり水が蒸発してサウナ状態になったけど、前回よりはずっと少ない魔法行使でファイアジャイアントを片付けることができた。

 蒸発しても水分はそこにあるのだから、熱操作で氷にしてしまえば、自然にもう一度ぶっかける状態にできるのが大きかったよ。


 そして、大広間を抜けた先にある通路を抜けると――。


「おお、やった」


 第十階層への階段が見つかったのだ。

 さて、階段でしばらく休憩してから降りてみますかね。



 階段を降りた俺達は、第十階層に足を踏み入れた。

 するとそこには、これまで見たどの大広間よりも広い――視界が届く限りでは壁が見えないほど――空間が広がっている。


 もしかしたら、ワンフロアまるごとで一部屋みたいな感じなのだろうか?

 俺の『魔力探知』には何の反応もないし、シロとクロも特に警戒した感じはない。


 ――しかし、これまでの事を考えれば、どこに何がいても不思議はないだろう。

 そして俺の考えを肯定するように、急な地震がダンジョンを揺らした。


「長いな……となると」


 下から何かが現れるだろう――という予想は当たった。ただし、その規模は想像の埒外だった。


「おいおい……! アンチフレイム!」


 地平線付近で真っ赤な何かが地面から吹き上がったのが見えた時、俺はとっさに耐火、それも上位の魔法を行使した。もちろんウサギたちにもかける。


 オレンジ色に光り高熱を発するそれは、どんどん地面を盛り上げながら周囲に溢れ出した。その輻射熱で、だだっ広い空間の気温まで上昇してゆく。


「地底火山かよ……」


 なぜか噴煙も上がらず火山弾も飛んでこないが、ゆっくりと広がる液体は明らかに溶岩だ。

 なんだか分からんが、自然? の相手なんてしてられん!


「シロ! クロ! 撤退――」


 全力で階段に戻る事を指示しようとしたところで、階段への入り口が音を立てて崩れた。


「マジかよ……」


 あまりのことに呆然としていると、段々と背後から感じる熱気が強まってきた。

 ――もしかして、ここって最下層なのか? それでいきなりボス戦だから、倒さないと脱出できないってことか……。


「……やるしかないか」


 覚悟を決め、振り返る。

 視線の先で人型の何かが火口から現れ、一際強烈な熱風が吹き上がった。


『ラーヴァジャイアントが現れた!』


 そして流れる、接敵のアナウンス。

 ラーヴァ……たしか溶岩のことだ。ということは、現れたのはファイアジャイアントよりも上位の火属性モンスターということか。


 刻一刻と、溶岩は流れ出る量を増やしている。このまま待っているのは悪手だろう。なにしろ相手は溶岩の巨人だ。つまりエネルギー源みたいな物が、どんどん増えてしまうということなのだ。


「シロ、クロ、二人は牽制に徹してくれ。俺が水と氷で攻撃する」

「キュッ!」

「キュ~!」


 ウサギたちに方針を伝え、俺はラーヴァジャイアントに向け駆け出した。シロクロコンビは俺の左右に別れ、大きく迂回するように巨人に向かう。


 レベルと魔法で強化された俺達の脚力は、地平線までの距離などあっという間に走破できるほどに高まっており、すぐに巨人を詳細に視認できる距離まで近づいた。


 ヤツは赤熱した岩のような十メートルほどの体を土台に、溶岩と炎をまとい、手に巨大な波打つ刀身を持つ炎の大剣を持っている。フランベルジュというやつだろうか。


「下賤なヒトごときが我が領域を侵すとは、許しがたい!」


 ラーヴァジャイアントは唐突にそんな言葉を発した。

 言葉を話す事もそうだが、この巨人はダンジョンを自分の縄張りだと思っているらしいことも驚きだ。


「我はここで進化を果たし、あまねく地上を我ら巨人族の物とするのだ! その覇道を邪魔する者は、この炎の剣で切り裂き、焼き殺してくれるわ!」


 わお、無茶苦茶なこと言いだしたよ!

 まあ、どうあれコイツを倒さなければ脱出できないわけで、やることは変わらない。


「アイスシールド!」


 振り下ろされる炎の巨剣を、水と火の合成魔法で受け止めた。

 接触した途端、氷が一気に蒸発し、激しく蒸気が上がるが、一瞬で両断されるほどではないようで、氷の壁はそこそこ持ちこたえている。


 だが、悠長にしているほどの時間はない。ということで、俺は飛び退りながらもう一枚の手札を切る。


「アイスウェポン!」


 これも水と火の合成魔法、火属性を付与するファイアウェポンをベースとした付与魔法だ。氷の属性を付与され、両手のアダマンタイトの棍棒が冷気を放つ。


 そこで氷の壁が割れ、炎の剣が地面を叩いた。


「キュキュッ!」

「キュキュ~!」


 ラーヴァジャイアントにスキができたと見て、シロクロコンビが全力で飛び出してきた。彼らは巨人の後方に回り込み、膝カックンを狙って膕にウサキックを叩き込んだ。


「ぬっ!?」


 シロの方は少々威力が足らなかったようだが、クロの蹴りは上手く効いたようで、溶岩巨人が驚きの声を上げながら右に傾く。

 剣の握りからして、巨人の利き手は右手だろう。ならば左側には対応しにくいと見た。


「オラアァッ!」


 俺は一直線にラーヴァジャイアントの左足に駆け寄り、全力で棍棒を二本とも叩きつけた。

 くるぶし辺りに当たったアダマンタイトの棍棒は見事に赤熱した岩石を砕き、ウサギたちの攻撃の余韻もあって巨人を跪かせることに成功した。


 このまま攻撃を繰り返せばどうにかなる――そう思ったのもつかの間、砕けた場所を溶岩が覆うと、ラーヴァジャイアントの傷はすっかり消えてなくなってしまった。


「バカめ! ここは我が領域! いくら傷を負おうと、たちどころに回復するのだ!」


 ――おいおい、マジかよ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ