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罠っぽい巨人って、ちょっと意外な存在だな

 ウサギたちの誘導に従い歩くこと十五分ほど、遠くに見えていた丘の上まで到達した。

 どうやらここはこの大広間? の中央付近らしく、三百六十度どこを向いても雪原だ。雪が降っているせいで壁が見えないが、足跡が俺たちの歩いてきた方角を教えてくれる。


 マッピングのしようもないが、おそらく今は第八階層の入り口から見ると反対の方角を向いているはずだ。であれば、あと確認すべき方角は正面と右方向となるか。


 ここまで魔物には遭遇していないから、ここからは厳しくなると考えるべきだろう。

 気合を入れ、武器に火属性を付与しなおし、身体強化も施す。シロクロコンビも俺に倣い、身体強化をかけた。


 いよいよ深くなる雪で足元がおぼつかなくなってきているから、少しでも動きやすくしておく必要がある。

 まずは正面から……ということで、俺達は丘を下りはじめた。


「うおっ!? 来た!」


 というところで、いきなり魔力の反応が現れた。予想通り、雪の中からだ。

 全力で飛び退くと、足元から透き通るような刃が生えてくる。氷の剣か?


 周囲の雪が集まり、あっという間に真っ白な人型を形成してゆく。身長は七~八メートルほどで、片手には氷の大剣を持つ巨人――。


『フロストジャイアントが現れた!』


 どうやら予想は正解だったようだ。


「先手必勝! フレイムウォール!」

「キュキュキュッ!」


 もはや定番となったシロとのあわせ技、炎の竜巻でフロストジャイアントを攻撃する。効果はばつぐんだ!


「グオオオオ!!」


 霜の巨人が熱さに悶え、悲鳴を上げた。雪でできた体は、すでに半分くらい融解している。これなら簡単に倒せる――と思ったのだが。


 ――グオオ。

 ――グゥウオ。

 ――グワォ。


「おい……おいおい、おいおいおいおい!」


 悲鳴が木霊しているのかと思ったら、周り中からフロストジャイアントが湧き出てきているんだけど! 十体を超えてるぞこれ!


「ああ、もう……とにかくフレイムウォール!」

「キュキューッ!」


 迫りくる巨人の群れを押し止めるため、俺は自分たちの周りを囲むように炎の壁を発生させた。それに呼応してシロも風を巻き起こし、広範囲に届くよう炎の竜巻を左右に動かす。


「グオオオ!!」


 あちこちから悲鳴が起こり、嫌な予感がする。


「やっぱ、そうなるよな!」


 どうやら悲鳴ではなく仲間を呼び起こす声らしく、追加で十五体ほど現れた。

 すでに最初に現れた増援は半分ほど倒しているが、それでも二十体ほどだ。……まさかとは思うが、このまま無限増殖しないよな?


 嫌な考えがよぎるが、それでも倒さざるを得ないし、弱点を攻めないという選択肢はとりたくない。

 限界になる前に、撤退の決断をする必要があるかも知れないな……。



 結局、一時間ほど戦い続け、百二十六体ものフロストジャイアントを倒した。飛んで火に入る夏の虫状態で、本当に山ほど出てきたよ……。


 どうも火で攻撃すると、狂乱して攻撃一辺倒になる上に悲鳴で仲間を呼ぶモードに入る気がする。無理して潜ってたら、シャレにならない被害が出るぞこれ……。


 戦場周辺も火にあぶられた上にフロストジャイアントが出てきた影響で、雪原だった場所が広範囲に渡ってぬかるみになっている。本当にひどい有様だ。


 まあ、多数の魔物を倒したおかげでレベルが上ったのは良かったが……。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV51】

【所持CP:149911】

【所持品:アダマンタイトの棍棒×2 ヒヒイロカネの剣鉈×2 ナタ 低級回復薬×9 低級解毒薬×9 鉄球の魔石×7 焦げた手長巨人の毛皮×4 手長巨人の毛皮×3 土巨人の魔石×9 岩人形の魔核×5 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9 霜巨人の魔石×9】

【所持スキル:木工LV3 石工LV3 細工LV2 棍棒術LV6 二刀流LV4 地属性魔法LV4 金工LV3 魔力増加LV4 水属性魔法LV2 風属性魔法LV4 火属性魔法LV5 植物鑑定LV2 恐怖耐性LV6 毒耐性LV3 魔力探知LV5 打撃耐性LV3 刺突耐性LV2 体術LV3 スタン耐性LV3 魔力操作LV3 剣術LV3 皮加工LV3 無属性魔法LV2】

【称号:5級冒険者 ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー】


【名前:シロ】

【種族:ブルーアイズ・ホワイトラビットLV49】

【所持CP:125915】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9 雪巨人のツナギ 雪精の魔石×2】

【所持スキル:気配察知LV4 獣体術LV4 風属性魔法LV5 スタン耐性LV2 打撃耐性LV1 無属性魔法LV1】

【称号:ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー】


【名前:クロ】

【種族:レッドアイズ・ブラックラビットLV49】

【所持CP:125836】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9 雪巨人のツナギ】

【所持スキル:気配察知LV5 獣体術LV5 無属性魔法LV4 スタン耐性LV2 打撃耐性LV2】

【称号:ジャイアントキラー オークキラー コボルトキラー】


 ご覧の通り、みんな二つレベルが上った。あとは俺の火属性とシロの風属性だな。アホほど使ったからなあ……。

 ドロップアイテムは見ての通り、霜巨人の魔石ばかりだ。多すぎ!


「ん?」


 シロの所持品欄に【雪精の魔石】というアイテムがある。もしかしてこれが第八階層の二種類目の魔物のドロップアイテム?

 雪精ってことは、アイスエレメントとかかな。しかし姿が見えなかったが……火属性魔法の巻き添えかなんかで死んだのだろうか。なかなか切ない扱いだ。


 まあ、こんなところで長時間留まっているのも良くないから、移動してしまうとしよう。

 もう出てくるなよ……?



 俺の祈りが天に通じたか、その後は何もなく第九階層への階段に到達した。大雑把に言うとS字に移動しただけでたどり着いたわけだが、雪原での戦いがめんどくさすぎたわなあ。


 ここに至るまで約六時間、現在は午後二時くらいというところか。

 適正レベルのことを考えると、あと一階層は潜れるとは思うが……まだ行けるは、もう危ないだな。


 ということで、今日は撤収!



 一度戻って二日ほどゆっくりしつつ、アイアンボールを打撃で倒すための武器を作ったりした。まあ、ただ柄が長いだけの金槌なんですけどね。アダマンタイト製の。


 これでもってストーンウォールに埋めたアイアンボールをぶっ叩くのだ! さすれば、きっと打撃で倒せるであろう。


【アダマンタイトの戦鎚:攻撃力54 属性:打撃】


 あとトロールの毛皮でコートを作ってみたところ、イエティの毛皮より防御力が高く弱点のない物が出来た。


【手長巨人のコート:防御力25 付与効果:物理耐性LV3】


 冷気耐性がない分、寒冷地では寒そうだが、かなりの物と言えるだろう。何しろ、ヒヒイロカネで補強した革鎧よりずっと防御力が高い。ということでシロクロコンビ用のツナギも作った。防御力・耐性はコートと同じ。サイズが違うのに不思議だ。


 ともあれ装備も整ったし、レベリングがてら第六から第八階層の探索をしよう。



 探索すること三日、順調にレベルも上がり新装備の成果も上がっていた。

 懸案のアイアンボール関連だが、考えた通りの状況にすれば、アダマンタイトの戦鎚で大体三発全力攻撃すれば倒せるようになった。そしてこれも予想通り、【アイアンジェルシート】というボール系の基本となっているシートがドロップした。


アイアンジェルシートは鉄なのに柔らかいという不思議な素材で、見た目に違わぬ物理耐性を持っているようだ。

 サイズの問題でシロクロコンビのツナギしか作れなかったが……。


【手長巨人のツナギ・改:防御力35 付与効果:物理耐性LV4】


 見ての通り、トロールの毛皮で作ったツナギの裏地にする形で仕込んだら、見事に期待以上の物ができたよ。これでウサギたちの装備は現状で最高に近いものになっただろう。


 そして明日は、いよいよ第九階層に挑む。



 第六階層だけ普通に戦い、第七・第八階層は半ば魔物を無視するように駆け抜け、俺達は第九階層に到達した。ここまでにかかった時間は二時間ほど。


 階段でしっかりと休憩とエネルギー補給を済ませ、ついに第九階層の探索を開始した。

 そして進むこと、しばし――徐々に気温が上がっていく気がする。


 なんとなく嫌な予感がするので、耐火の魔法を全員にかけておく。

 またしばらく探索を続けていると、予想とは違うが魔物が現れた。


「ミノタウロスか!」


 それは牛頭人身で、巨大な斧を持った巨人だった。身長は五メートルほどと下層の巨人としてはやや小柄だが、そこに長さ三メートル程の斧が加われば危険さは劣るまい。


 そしてそれが九体、一列縦隊になって通路を駆けてくるのだから恐ろしい迫力だ。

 しかし――。


「シロ! 全力で行くぞ!」

「キュッ!」


 俺とシロの合体魔法・炎の竜巻によって、ミノタウロスは火の海に飲まれた。巨人が使えるほど広い通路とはいえ、一列になっていれば放射する魔法から逃げられなくなるだけであった。


 とはいえ深層の魔物のこと、一撃必殺とは行かない。

 俺たちが魔法の行使をやめ、少し間合いを開けたところに炎の壁を突き破って牛巨人が飛び出してきた。


 だが、そこには手ぐすね引いて待っていたクロがいる。


「キュ~!」


 狙いすました全力のウサキックがミノタウロスの長い鼻面を横から叩き、捻転の勢いで太い首を支える頚椎にダメージを与えた。

 神経がやられたか、衝撃にふらついたか――巨人は前のめりに倒れる。そこを叩くのは俺だ。


「せいっ!」


 倒れたミノタウロスの首に薪割りのように剣鉈を叩き込む。絶命した魔物は、あっさりとドロップアイテムに変わった。

 そしてその頃には次の牛巨人が現れ、今度はシロの全力ウサキックが放たれる。


 首を捻られたミノタウロスは、さっきの個体と同じく倒れ、俺に首を刈られる。

 あとはその繰り返しだった。



 なぜか常に通路を一列縦隊で駆けてくるミノタウロスを数度殲滅し、俺たちは第九階層の奥地と思われる大広間に到達していた。

 どうして奥地と判断したかというと、環境がまた大きく変化したからだ。


 なにしろ地面と言わず壁と言わず、可燃物もないのに(空気はもちろんあるが)そこかしこが燃えているのである。

 進むごとに徐々に高くなっていると感じた気温は、ここに原因があったということか。


 そしてこういう環境であれば、これまでの流れから現れる魔物は予想がつく。

 ――十中八九、炎の巨人・ファイアジャイアントだろう。


 そうと分かれば、何も現れるまで待ってやる理由もない。


「てことで、ウォーターストリーム!」


 目につく火に、片っ端から水をぶっかける。すると、その中の一部が人型を取りはじめた。


「ボォオオオ!」


 その間も水をかけまくっていると、完全に巨人の姿になると同時に悲鳴らしき声を上げた。

 ……また仲間呼びじゃないよな? 大広間と言っても百体も収まれる広さじゃないし、多分、大丈夫だよな。


「ボボォオ!」

「ボゥオオ!」


 フラグかなあ……やっぱり湧いてきたよ。

 水魔法が使えるのは俺だけだから、俺が全力で頑張るしかないな。



 大広間へつながる通路で迎え撃つこと一時間ほど、結局、九十体ものファイアジャイアントを倒した。もう、辺り一面蒸気だらけで、視界が悪いことこの上ない。


 完全に水魔法でのゴリ押しだったよ。たまにシロクロコンビの無属性も飛んでたけど。

 やっぱりパーティメンバーが少ないことで、一人あたりの負担が大きいなあ。と言っても仲間に当てはないし……どうにか頑張るしかないか。


 しばし警戒しつつ蒸気が収まるのを待ち、ドロップアイテムを回収する。といっても魔石ばかりだが。

 そういえば、ミノタウロスの方は複数種のドロップアイテムが出た。


 まずは持っていた大斧、角、皮、そして魔石だ。

 皮に関しては火の魔法で大ダメージを負った個体からは出なかったが、それ以外の三種は確実に出たので、ある意味おいしい魔物と言える。まあ、まだ何に使えるのかは分からないけど。


 ともあれ、魔力も心もとないし疲れてもいるから、しばらく休んだら今日は帰ろう。



 お休みすること二日、ダラダラしつつも防具のアップグレードを行う。まずは最初期から使い続けていた革鎧だが、これを参考にミノタウロスの皮で革鎧を作りお役御免に。お疲れさまでした。


 そして、これまで補強材として使っていたヒヒイロカネのパーツとジェルシートを移植。さらにミノタウロスの皮でサンドイッチし、新たな防具の完成だ。


【牛巨人の複合鎧:防御力45 付与効果:物理耐性LV3】


 これは強い! この上に手長巨人のコートを着るのだから、防御力は驚きの70だ。もう、オーガくらいなら殴られても平気そうだな。まあ、質量の問題でふっとばされるだろうけど。


 シロクロコンビのツナギもミノタウロスの皮でさらに改良し、防御力が10プラスされた。サイズの問題で皮を薄く加工せざるを得なかった影響で少々控えめな向上にとどまったが、それでも十分な強化と言えるだろう。


 それからミノタウロスの持っていた大斧だが、これは黒鉄(『くろがね』ではなく『こくてつ』だそうな)という金属で出来ており、ドワーフによると粉末にした魔石を混ぜた鉄だとか。


 魔力の通りがよく、魔力を込めることで攻撃力や耐久力が増すという話だ。

 非常に興味を引かれたが、さすがに魔法やスキルだけでは作れそうもなかったので断念。もうちょっと落ち着いてから、色々考えてみることにする。


 最後にミノタウロスの角だが、これも粉末にして金属に混ぜることで合金を作り、武器や防具に使うらしい。

 なんでも魔物素材を使うと、武器なら同種の魔物によく効き、防具なら攻撃を減衰させるそうな。うーん、ファンタジー。


 それはさておき、準備も整ったし、第九階層の完全攻略に乗り出しますかね。


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