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クエストのリザルトとその後

 あの日、サドンクエストをクリアした俺達は、疲れと達成感、そして全員無事に終わったことへの安堵から、あの戦場でそのまま丸一日眠り続けた。


 クエストの影響で魔物がほとんどいなかったため、ハームラビットが数匹セーフティエリアに入り込んでいた以外には特に問題がなかったのは幸いだ。


 まあ、慌てて壁は直したけどね。

 で、クエストをクリアした俺たちがどうなったかと言うと、こうなった。


【名前:リョージ】

【種族:人間LV44】

【所持CP:154421】

【所持品:アダマンタイトの棍棒×2 ヒヒイロカネの剣鉈×2 ナタ 低級回復薬×9 低級解毒薬×9】

【所持スキル:木工LV3 石工LV3 細工LV2 棍棒術LV5 二刀流LV4 地属性魔法LV4 金工LV3 魔力増加LV4 水属性魔法LV2 風属性魔法LV4 火属性魔法LV4 植物鑑定LV2 恐怖耐性LV6 毒耐性LV3 魔力探知LV5 打撃耐性LV3 刺突耐性LV2 体術LV3 スタン耐性LV3 魔力操作LV3 剣術LV3 皮加工LV1】

【称号:5級冒険者 ジャイアントキラー】


【名前:シロ】

【種族:ブルーアイズ・ホワイトラビットLV42】

【所持CP:130435】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9】

【所持スキル:気配察知LV4 獣体術LV4 風属性魔法LV4 スタン耐性LV2 打撃耐性LV1】

【称号:ジャイアントキラー】


【名前:クロ】

【種族:レッドアイズ・ブラックラビットLV42】

【所持CP:130316】

【所持品:低級回復薬×9 低級解毒薬×9】

【所持スキル:気配察知LV5 獣体術LV5 無属性魔法LV4 スタン耐性LV2 打撃耐性LV2】

【称号:ジャイアントキラー】


 なんと全員、種族レベルが32も上がった。

 それ以外にも戦闘で使ったスキルは軒並み上がっている。

 GPも十三万も増えていたので、それがクリア報酬の一部だったのだろう。


 山ほど転がっていたドロップアイテムも回収し、適当に家に放り込んだ。ぶっちゃけ何もする気が起きなかったから後回しにしたのだ。なにしろ三百を軽く超える数だったからね。


 ちなみにクエスト前まで未見だった魔物のドロップは、ストーンゴーレムが魔核、オーガが魔石と皮、アイアンゴーレムが魔核と鉄を落としていた。


 特にアイアンゴーレムは、バカでかい鉄塊が転がってたので驚いた。

 今後のことを考えると、装備は充実させておかなきゃならないから助かる。


 鉄はまだ魔法金属化を試していないから、後でやっていかないとなあ。

 あと魔石も今回のことでしっかり調査しておかないとマズイと分かったから、色々やってみないと。


 それからゴーレムの魔核だが、魔石と名前が違うということは違う効果なり機能なりがあると思われる。

 なんとなく予想がつく気もするが、これもまた調査しておく必要があるだろう。


 とはいえ、しばらくは骨休めしないとね。



 ということで、今日も今日とてシロクロコンビとともにのんびりしています。

 二匹ともサドンクエストでは物凄く頑張ってくれたし、クロは一時瀕死の重傷だったし、しっかり労わないと。


 お風呂用品というか石鹸とかリンスみたいなものは売店に売ってるので、二匹をキレイに洗っては毛並みを整えるのも日課になっている。


 ただまあ、材料になるものが枯渇すると困るので、ちょくちょくギルドで依頼が出ていないか確認する必要はあるが。

 枯渇しそうになるまで依頼が出ないのは困ったものだが、一度分かれば暇を見て集めることもできるから後は楽になるだろう。


「よーし、綺麗になったぞ。じゃあ寝るか!」

「クゥ」

「クゥ~」


 風呂上がりにキッチリと毛を乾かし軽くブラッシングしたことでフワフワになった二匹のウサギとともに、俺は自宅の寝室へと移動するのだった。


 さてさて、あと数日はゆっくりしてから色々やりますかね。



 たっぷり一週間ほど休暇を満喫し、俺はまずセーフティエリアの拡大と多重城壁化を進めることにした。

 というのも、今回のクエストで破壊された時の備えをしておくべきだと痛感したのだ。


 田畑とギルド以外は区切りというものがなかったからねえ。

 てことで、まずは果樹園、自宅、川原をキッチリ石の防壁で覆う。ここはそこまで分厚くなくていいだろうということで、せいぜい三十センチほどの厚みと三メートルほどの高さの壁だ。


 あと、この一週間で、魔物が減ったためか野良猫がちょこちょこ顔を見せるようになったので、猫用の通路や出入り口もあちこちに設けることにした。


 どうやらウサギたちとは仲が良いようだし、猫たちは魔物と違ってセーフティエリアへの出入りは自由だから、遊びに来てくれればいいなーというところだ。


 内部での作業が終わると、今度は外壁の新設に入る。

 南北はもう山際まで防壁が到達してしまっているので、東西にのみ増設する形だ。


 せっかく五稜郭っぽく星型にしていたのに無駄になってしまったが、まあ実際のところ三人しかいない現状ではあんまり意味はないから気にしないことにした。


 一応、殺し間みたいな感じにはするということで、最終的には変形した矢羽みたいな感じの形になるんじゃなかろうか。あるいは底辺の長い台形を二つくっつけた感じかな?


 まあ、作っていく時の気分でどっちかになるだろう。

 空間が広がってもマンパワーの問題で有効活用は出来ないだろうけど、これも気にしない。


 ここは俺の拠点なのだから、好きにやるのだ。



 秋も深まる今日このごろ、俺たちは拠点周辺の間引きも兼ねて秋の実りを採取しに山に来ていた。

 セーフティエリアの多重城壁化も完了し、食糧問題も魔法による促成栽培で解決済み。


 ということで、冬ごもりの準備も概ね万端である。

 まあ、世界が変容したことで気候まで変化したのでなければこの辺りは雪もたまにしか降らないので冬だからといって困ることも殆どないのだが。


 中世ヨーロッパ風な世界観だと燃料が重要かつ貴重であることが多いが、先日のサドンクエストのおかげ(?)で大量の魔石が得られたので、これが各種施設の燃料として使われるから安心だ。


 以前から売っていたジェルボールの魔石も、密かに役に立っていたというわけだね。

 この事で、ドロップアイテムに無駄なものは無いと再認識。


 ドロップアイテムといえばゴーレム系の魔核だが、大方の予想通り地属性魔法と組み合わせることでゴーレムを作ることができる事が判明した。


 ただ、魔核を落としたゴーレムと同じ物が作れるというわけではなく、ゴーレム系下位と思われる『リビングドール』が出来た。材料により『クレイドール』『ストーンドール』と変化する。


 これらはごく簡単な命令を遂行させることができ、防壁上を巡回させつつ何か問題があれば各所に設置した半鐘を鳴らすようにした。人手不足が思わぬ形で解消されて万々歳だ。


 あと、どうやらアイアンゴーレムの魔核はストーンゴーレムの物よりグレードが高いらしく、より高度な命令を出せるし多少は自分で考えて行動できるようだ。


 今後、より上位のゴーレムが出てきたら、その魔核はもしかしたら自律行動可能なドールがつくれたりするかもしれない。これは非常に期待が高まる……まあ、アイアンゴーレムですら死ぬほど苦戦したのだから、上位のゴーレムと戦いたいとは思わないんだけど。


 例のクエストはハッキリ言ってヒヒイロカネ装備が出来ていなければクリア不能だっただろう。

 なにしろオーガも鉄の剣じゃ切れないだろうという実感があるし、イエティとストーンゴーレムもあの時点では完全に格上だったのだ。イエティは明確な弱点があるから、多少くみしやすかったというだけの事。


 本当はじっくりとレベル上げと装備の強化をしながら進めたかったのに困ったものだよ。

 まあ、一気に種族レベルが上ったのは苦労した甲斐があったと言えるけどね。


 一度試しにイエティと戦ってみたところ、強化+ヒヒイロカネの剣鉈で楽勝になっていた。シロクロコンビも一対一で余裕。これはスゴイ。


 とはいえ、これからもまたああいった突発的なクエストが発生する可能性もあるので、まだまだ強化は続けていかねばなるまい。

 ただ、現状魔法金属に使えるのは鉄と銅しかないので、どこかで金とか銀とかを採掘できないものかと考えている。


 で、鉄の魔法金属だが――なんとアダマンタイトになった。その特性はヒヒイロカネより重く硬いというもの。

 試しに武器を作ってみたら、攻撃力自体はヒヒイロカネより上になった。しかしヒヒイロカネとアダマンタイトを打ち合わせると、ヒヒイロカネが勝つ。つまり耐久はヒヒイロカネに劣るということになる。


 この結果から、刃物はヒヒイロカネ、鈍器はアダマンタイトにするのが良いだろうと判断。現在はヒヒイロカネの剣鉈とアダマンタイトの棍棒を常用している。


 ちなみに剣鉈は刃の厚み・長さ・刃幅をほぼ倍ほどにしたので、攻撃力も相応に高くなった。柄以外がデカイため不格好だし、六十センチも刃渡りがある物を剣鉈と呼んで良いのかは甚だ疑問だが、システム表示的には剣鉈のままなので気にしないことにした。


 それからクロの一件でウサギたちにも装備を準備しようと考えた。

 着やすいように皮系の素材を使い、フード付きのツナギを作ったり、その上につけるヘルメットや胴鎧を作ったりといろいろ試作している。


 ただ、自前の毛皮がある二人はどうしても暑いらしく、ダンジョンのイエティのいる階層くらいでしか着ない。

 ということで、温度調整とかの効果を付与する方法が無いものかと頭を捻っているのだ。


 異世界ものだと割とポピュラーな機能だし、魔法にも熱や冷気への耐性を高める魔法がある。だからそれを装備に付与する方法も多分あるはず。


 でも、今のところ何の手がかりもないんだよねえ……。

 ドロップアイテムにマジックアイテムがあれば調べられるのになあ、と思ったりもするが、あくまで魔物の素材だから無理だろうな。


「キュッ!」


 シロが声を上げて飛び跳ねる。

 何事かと目を向けると、どうやらイガグリを踏んだようだ。


「お、栗か。拾っておこう」


 と、イガを両足で踏んで割り、中身を拾うべくしゃがむとシロが俺の背に飛び乗ってきた。よほどイガグリを踏んだのが嫌だったらしい。


 クロは強化しているから、平気な顔で俺の真似をして栗を回収している。シロが俺の背に退避したのを見て「情けない」とでも言いたげな声を漏らした。


「ははは、落ち葉なんかで見えにくくなってるからな。そういう事もあるさ」


 俺は二匹の行動に笑いを誘われ、肩車状態に移行したシロをなでて慰める。

 せめてオーバーオールみたいなズボンだけでも用意したほうが良いかな。ウサギたちはなで肩だから、ズレないような構造を考えないといけないけど。


 そんなこんなで、俺達は秋の野山を満喫したのだった。



 田んぼに山から持ってきた腐葉土を混ぜまくったり、猫やウサギたちが遊ぶキャットタワーみたいな物を作ったり、猫が寒さをしのぐ小屋を作ったりしている間にとうとう冬が来た。


 吐く息はすっかり白くなり、俺も拠点でもイエティコートを着ている。

 秋に考えたウサギたちのオーバーオールも完成し、さながら服を着たぬいぐるみのような愛らしい姿になっている。どうやら今の時期でも寒くはないようで、シロもクロも上着やツナギは着ない。


 あと冬になったからか、どこからか今まで見なかった魔物が現れるようになっている。

 アイスジェルボール、スノーウルフ、そしてサスカッチがそれだ。


 アイスジェルボールは通常のものより青くなったジェルボールで、体当りされると冷たい。どうも弱い冷気をまとっているらしい。通常個体よりは強いのだろうが、今の俺達にとっては誤差みたいなものだ。


 ドロップアイテムは、クールジェルシートと魔石。クールジェルシートは、名の通りひんやりするジェルシートだ。夏には活躍するだろうということで、見つけ次第狩っている。


 スノーウルフは白い狼の魔物で、感覚としてはオークと同程度の強さだ。スノーと付いている割には冷気攻撃などはしてこず、群れによる集団戦を得意としている。常に五~六匹で行動しているようで、レベルが低いままだったらかなりの強敵になっていただろうと思われる。


 ドロップアイテムは毛皮。これもコートにできるが、作ってみたらイエティの方が高性能だったから全部売却することにした。

 やはりイエティは格上だったんだなあと分かるね。


 サスカッチは白い毛でモコモコしている、なんというか猿と羊の間の子みたいな感じの魔物だ。身長一メートルほどで一見かわいらしいが、やたらと好戦的で俺たちを見つけたら即座に襲いかかってくる。まあ、そんなに強くないので簡単に対処できるのだが。


 ドロップアイテムは毛。これは見た目通りフワフワで保温性が高いようなので、売店で買った布を使って羽毛布団ならぬサスカッチ毛布団を作ってみた。おかげで夜は暖房がなくても十分暖かく眠れる。


 世界が変容して最初の冬、こうして色々と備えられたのは幸運だろう。

 件のサドンクエストの成否によっては、身の安全すら確保できず逃げ回りながら冬を迎えていた可能性があったと思うとゾッとする。


 まあ、それはそれとして今日は久しぶりにダンジョン攻略だ。

 実はこれまでに地下四階(第五層)までは踏破している。というのもゴーレムの魔核が欲しかったから、度々潜っていたのだ。


 以前まで地下三階ではイエティとしか戦っていなかったが、奥に行くとストーンゴーレムが現れた。どうやら特定の位置にじっとしているようだ。


 地下四階はオーガがメインで、やはり奥に行くと特定の場所に立哨のようにアイアンゴーレムが佇んでいるという状況だった。そのおかげでゴーレム系の前に周囲の魔物を排除し、それからゴーレム一体とだけ戦うという方法が取れた。


 そういった戦法で、比較的簡単に踏破できてしまったというわけだ。

 とはいえ、種族レベルとスキルレベルが大きく上がっていた事と、武器がグレードアップした事が一番大きな要因だろう。


 今ではアイアンゴーレムにもまともにダメージを与えられるようになったのだから、初戦闘時との差がどれほど大きいかが分かるというものだ。


「お、ようやくかあ」


 そして地下五階へと足を踏み入れた俺たちを出迎えたのは、一階のエントランスっぽい場所にあった魔力を発する柱と同じ物。

 とりあえず手を触れてみると、システムアナウンスが流れた。


『転移装置への登録完了。以後、第一階層と第六階層を転移装置で移動できるようになります』


 どうやら、ここまでショートカットできるようになったらしい。

 あと地上一階とか地下一階とかじゃなく、第一階層・第二階層と呼ぶようだ。確かにちょっと分かりにくいもんね。


「今日はここまでにするかねー」

「クゥ」

「クゥ~」


 一区切り付いたということでそう言うと、シロクロコンビも同意するように鳴く。

 もう午後だし、帰ってお茶にしよう。



 拠点に戻った俺達は、風呂でさっぱりしてからギルドの酒場でゆっくりおやつを堪能した。

 魔物との戦いが日常になって以降、食べる量も増えているので、料理を自分でしなくて良いのは助かる。野菜なんかも自然と食べるから、あんまり偏らないしね。


 あと酒場には寝っ転がれるソファも設置してあるので、食べたあとはごろごろダラダラできるのだ。

 最近では、俺に慣れた猫たちもギルド内に入って眠っているのをよく見る。さながら猫カフェのようだな。


 これからも、こんな穏やかな日々が続けば良いな――そんな俺の思いは、あっさりと打ち砕かれた。

 歩哨をしているストーンドールが何か異常を発見したらしく、半鐘が打ち鳴らされたのだ。


 鳴っているのは西の半鐘。鳴らし方は間隔の長いものなので、緊急という程ではないはず。

 とはいえ確認しないわけにもいかない、と俺はギルドを飛び出した。ウサギたちも一緒だ。


 そして西の城壁に登り、壁の向こうに目を向ける。

 ――するとそこには、ずんぐりした体格の血まみれの人物が倒れていた。


 今度は一体、何が起きたんだ?


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主人公が取得したはずの無属性魔法がステータス画面に無いのはミス?
[一言] 12話でようやく他人登場? 今後の話にも期待しております。
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