とある夏の一日
またまた学生の話です。
「…夏は嫌いだ」
「えぇ?楽しいじゃん!お祭りに海!おいしいスイカ!!」
「…暑いじゃん」
「…確かに。今年は昨年超えだってよ。なんだか毎年昨年超えって単語を聞いてる気がするよ。」
「この暑さがマシだったとしても夏は嫌いなんだ」
「私は冬のほうが苦手だなぁ。」
「…寒いから?」
「うん。美味しいものがいっぱいあるのはいいんだけどねぇ。特に朝が…」
「眠いし、寒いしで…」
「うん。それは俺もおおいにわかる。」
「でも夏のクーラーに勝るくらい冬のおこたが好きだなぁ。私は。」
「わかる。」
そんな話をしながら近くの駄菓子屋でアイスを食べながらバスを待っている。
「…ねぇ。何味のアイスかったの?」
「ソーダ。」
「あ!おいしソーダ! …なんちって。えへへ」
「一口いる?」
「いいの!?じゃあ私のメロンソーダも一口あげる!」
「葵ほんとにメロン好きだよな。」
「ソーダおいひい…あ!ねぇなんでさっきのスルーしたの!?おいしソーダってやつ!」
「メロンソーダもおいしいな」
「ねぇぇぇ!!!!!!」
そんなことをしているうちにバスが来た
葵の家は俺の家の5つ前の停留所付近だ。
「じゃあまた明日!」
「きぃつけて帰れよぉ」
「うん!じゃねぇ!」
葵は降りたあと外から手を振ってくれる。
俺も少し恥ずかしいが振り返す。
そうすると彼女は満足そうな顔で家路につくのだ。
…俺しかいないバスの中で今までの夏を思い出していた。
夏は嫌いだった
16回夏がきた
それまでの夏は何も楽しくなかった
でも
17回目の夏には隣に君がいた
それだけで、この暑さを忘れてしまうほど楽しかった。
冬が来たら
雪が降ったら
寒いのが苦手な君を
俺が暖めてあげられるよう
「…頑張ってみるよ。葵。」
心地のいい揺れをおこすバス。
幸せな気持ちでいっぱいな心。
こんな夏が来るとは思わなかったと
俺は少しの間眠りについた。