これはぼくが最恐魔導士と契約し、魔王を倒すまでの物語。
おれは路地裏にひっそりと暮らす者。
名前はまだない。
いや、あったかもしれないが忘れてしまった。
おれは産まれてから1ヶ月で親に捨てられた。
ある人に拾われたがその人もどこかへ行ってしまった。
おれは今日もいつも通り
店の物を盗んだり、
ゴミ箱を漁ったり、
する生活を送る……はずだった。
「………。」
あれ?どうしたんだろう。
なんだか身体が熱い。
(外)ガヤガヤ、…げろ!!!!、……危…い!!!!!!
なんだ?何が起きてるんだ?
「おい、だい…ぶか?」
誰だ?
「しっか…しろ。こ…に…たら死ぬぞ」
は?なんて言ってんだ?
「ちっ。」
「サンダーボルト」
ビリビリビリっ!!!!!!!!!!
「いっってえ!!!!!!!!!!!!!!」
「何すんだよ!!!!!!!!!!!!!!」
「やっと起きた。じゃあ行くよ。」
「は?行くってどこっ…うわっ!!!!!!」
なんだ?なんで身体が浮いてんだ?
と、思った次の瞬間景色が一瞬にして変り
そしておれは地面に叩きつけられた。
「いってぇ…!」
「ここなら安全だ。待機しとけ。」
「はぁ?意味わかんねえし!!!!何が起きてんだよ!!!!!!!!!!!!」
「そんな事説明してる暇はない。」
「とにかく外は危ないからここにいな。」
「まじ意味わかんねえ。お前なんかの言うこと聞くかよ!」
「……あっそ。じゃあ好きにすれば?出来るなら…ね。」
は?出来るならってなんだよ。
あ?足?…って…あ、ぁ
「あ、あしが……俺の足が…ない!!!!!!!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!!」
「まさか、今気づいたの?」
「あ、あしが……俺の…あ…し……」
「だから今から探してくるから。じっとしとけよ。」
痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!!!
「はぁ…はぁ…はぁ…」
だんだん寒くなってきた…
あぁ、寒い……
目もかすれてきた……
…死ぬのか。
やっと…だな。
今世はいい事なかったから来世に期待しよう。
「…らい…せ、ら…いせ」
「何言ってんだ?」
「お…前は…さっき…の」
「ほら、探してきてやったぞ。お前の足。」
だからなんなんだよ。千切れた足なんか
どーすんだよ。
「どーするって、これをくっつけるんだよ。」
くっつける……か…。
そんなん無理だろ…
あれ?てかおれ今喋ったっけ?
「喋ってねーぜ。」
だよな…って、あれ?どーなってんだ?
「お前の心を聞いてるんだよ。」
心を聞く?
「ヒール」
そう言うとおれの足が光に包まれて
みるみるうちに足がひっついたのだ。
「あれ…嘘だろ…?」
「嘘じゃねーぞ。ほら、立ってみろ。」
おれはそっと力をこめた。
あぁ、動く…動くぞ!!!!!!
やべぇ…!!!!!!!! 楽しい!!!!!!!!!!
こんなに楽しいのは初めてかもしれねぇ!!!!!!
「……ふふっ。」
「あぁ?なんだよ。」
「…っいや…あまりにも楽しそうだから…ふふっ…ごめっ…ふふっ…」
「う、うるせぇ!別にいいだろ///」
「まぁ、その……ありがとな…助けてくれて。」
「…ふふっ……いや、礼にはおよばんよ。」
「……あのさ、なにが起きてたんだ?」
「…そうだね。事も片付いたし、ゆっくり話そうか。」
「先に自己紹介をしようか。
私の名前はカリア、10歳。君は?」
「歳は10。名前は……ない。」
「…そっか。じゃあ、今日から君は
んー、コウ。なんてどうだ?」
…コウ…か…。
別に名前なんてどうでも…
「よくない。どうでもなんて良くない。
ちゃんと意味もある。」
「君にこれから光がさすように。人生が明るくなるようにっ…てね。」
「……ありがとう。…コウ…ね。」
「気に入ったみたいだな( 笑 )」
「それじゃあ、コウ。今日起きた事を説明しよう。」
「魔物が襲ってきた…?」
「あぁ、しかもドラゴンだ。」
「…!ドラゴン!?って、あれは伝説の魔物じゃないのか!?」
「んいや、実際には存在しているさ。魔界に……だけどな。」
「魔界に…?」
「あぁ。」
「なんで、魔界にいるって知ってるんだよ。」
「……それは今重要ではない。」
「は?ちょっ…お」
「重要なのは今までドラゴン並の強さの魔物は魔界から送られてきたことはなかった、ということだ。」
話をきられてしまった。
「……、だからなんだよ。」
「はぁ、わからんか?」
「つまり、魔王が本格的にこの世界を滅ぼそうとしているってわけさ。」
「魔王…?」
「はっ…はは…あはははは!!!!!!!!魔王なんて、ドラゴンよりも空想上の物じゃねえか!そんなのいるわけねぇし。そもそも、とっくの昔に勇者に倒されただろが!!!!」
「……。」
「……は?なんだよ。事実だろ?」
「……倒されてなかったとしたら?」
「……え?」
「倒されてなくて、今も尚どこかで力をたくわえているとしたら?」
「……そんなの、お前の妄想だろ!?」
「だけど!!!!」
「…!!」
「だけど、ドラゴンは私たちの前に現れた!!!!!!!!」
「ドラゴン並に強い魔物は魔王以外ではこちらに召喚出来ないはずなんだ!!!!!!!!」
「だから!!!!!!……だから…」
「……あー、…もし、お前が言ってる事が正しいのなら、一体どうしろって言うんだ?」
「それは…、君に魔王討伐を手伝って欲しい。」
「……は?いやいやいや!無理だろ!!!!!!!!」
「ドラゴンの襲撃で死にかけた男だぞ!?
ましてや、魔王なんて……無理無理!!!!!!!!!!」
「そもそも、こんなちびっころより、勇者とかもっと強そうなやつの方がいいだろ!?」
「そう。強い人を仲間にしたかった。」
「ほら!!!!!!そうだろ?だからおれなん」
「だから、君を選んだんだ。」
「え?」
「君は強いだろう?」
「いや、おれ強くねぇぜ?魔法なんて少しも使えねぇもん。」
「……え?」
「いや、だから!おれは1つも魔法が使えねぇの!」
「いや、嘘だろ?」
「嘘じゃねぇよ。そんなしょうもない嘘なんかつくかよ。」
「しかし、じゃあ、君の……コウのその魔力量は一体何なんだ?」
「は?魔力量?」
「あぁ。コウがまっとっている魔力、つまりオーラが人の数倍はあるぞ。」
「えっ!!まじか?」
「まじだ。」
そんな…嘘だろ?おれは確かに魔法は使えねぇはずなんだ。同い年のやつらは皆練習して使えるようになってたが、おれは練習してもしても使えなかった…のに……
「それは、練習の仕方が悪かったんじゃないのか?コウの体質や魔力の形に合わなかった…とか。」
「魔力の形…って、サラッと人の心を読むな!!」
「……ごめん。」
「…それも魔法なのか?」
「ん?…あぁ、そうだよ。」
「じゃあ、聞いたり聞かなかったり、自由に出来るってことだよな?」
「んー、合ってるが少し違うな。私の場合は、常に聞こえてるから聞きたくない時は耳栓をしてるって感じかな。」
「ふーん。」
「で、どうするんだ?」
「え?」
「え?じゃないだろ?魔王討伐、手伝ってくれるのか?」
あ、すっかり忘れてた……
「私についてくれば必ず君を強くしてみせるよ。約束する。」
強く……か…。
「信じていいのか?」
「あぁ。神に誓おう。」
「……神は…好きじゃない。」
「…?好きじゃない?か…。では、私と契約を結ぼう。」
「契約?」
「あぁ。互いに誓うことをいいもし破った時の罰を言う、そして互いに小指を絡め、おでこ同士をひっつける。小指に糸が巻き付けば契約成立だ。」
「さぁ、どうする?」
「……破った時の罰ってどんなのだ?」
「んー、そうだな…。契約する内容にもよるが…今回のだと…あ、相手の奴隷になる、とか!どうかな?」
「奴隷って…。そんなの、死ぬのと同じじゃないか。」
「おや、よく分かってるね。」
「そうだよ。それだけ契約するってのは重いんだ。どんなにその内容が薄くてもね。」
なるほどな……
「さて、どうする?契約する?」
「まて、最後に質問。」
「うん、いいよ」
「おれは、何を誓えばいいんだ?」
「あー、私のそばにいること。……とか、」
「……。」
「…なーんて、じょうだ」
「いいぜ。さ、契約しよう。」
「…え?ほんとにいいの?」
「あぁ、てか、お前が言ったんだろ?」
「いや、そうだけど…そんなの自由がないじゃないか。」
「はぁ、お前は何なんだ?傍にいろって言ってみたと思ったら次は自由がない?自分が言ってる事矛盾しまくってるぞ!?」
「あぁ!あぁ!あぁ!!ごめんって!自分で言ったのはいいけど、まさかホントにOKしてくれるなんて思ってなかったからさ…。」
「……で、誓の内容は傍にいることでいいんだな?」
「……コウがホントにいいなら」
「よし。決まりだな。」
おれ達はカリアが書いた魔法陣の上に立ち
お互いに誓った。
「私カリアはコウを強くする事をここに誓います。」
「私コウはカリアの傍に居ることをここに誓います。」
そう口にした途端辺りが明るく輝き出した。
そのあかりは糸状になりながら2人の周りを取り囲む
「どちらか一方が誓を破った時破った方はもう1人の奴隷となる。」
2人は小指を結び額をくっつける。
すると、周りにいた糸状のあかりが結んである2人の小指に巻きついた、しっかりと。
そして、そのあかりは2人の身体へと吸収されていき、しだいに消えていった。
「よし。これで完了。期限は魔王討伐までね。」
「あぁ、」
「ちなみに、これいつでも契約切れるけどお互いが切りたいと思って儀式を行わないと切れない仕組みになってるから。よろしく。」
こうして私達は薄く、重い。
儚いがしっかりとした糸で結ばれたのであった。
「じゃあ、さっそく出発だ!!!!!!」
「これからどこに行くんだ?」
「ん?あぁ、私の家だよ。」
「え?まじ?」
「じゃないと、どこで訓練するんだ?」
「いや、どっか…その…広場…とか?( 笑 )」
「はぁ……」
「んだよ。そんなため息つかなくてもいいだろ?何にも知らねーんだし。」
「…まぁ、それもそうか。」
「普通は訓練場で鍛錬をつむが…私の家にちょっとした訓練場があるからな。まずは家に帰る。それから特訓だ。」
「はーい。」
数時間後……
「……なぁ、これいつまで歩くんだ?」
「なんだ、もう疲れたのか?」
「……いや、まだ大丈夫だけど…。でもかれこれ2時間ぐらいは歩きっぱなしだぞ!?」
「しょうがないだろ?お前がいるんだから。」
「はぁ?」
「本来なら瞬間移動でひとっ飛びだ。」
「瞬間、移動……?」
「そ、そ、そ、そんなことも出来るのか!?」
「…!あ、あぁ。まぁ、出来るやつは少ないがな。」
「すっげぇ……」
「なぁ!なんで、おれが居るからダメなんだ?」
「……瞬間移動が出来るやつが少ないのはなぜだか分かるか?」
「んー、難しいから」
「まぁ、もちろんそれもある。だがな、1番の原因は魔力不足だ。瞬間移動というものは移動したい場所と今いる場所を魔力で繋ぎ、移動する魔法なんだ。」
「その、繋ぐ作業で沢山の魔力が必要となってくるんだけど…もちろん!慣れればその量は減っていくんだ。でも、それに気づかずに皆最初の魔力量の消費の多さで断念してしまうんだよ。」
……よく喋るなぁ。
「…すまない。つい熱くなってしまった。」
「あ、いや、その…………で、結局なんでなんだ?」
「あっ…。えっと…、瞬間移動を2人以上でやる時はその人数分の魔力量が必要となるんだけど、大抵場所と場所を繋いでくれる人とその人に魔力を送る人とに別れるから魔力がそこを尽きることはないんだけど…」
「コウは魔力は沢山あるけど使うことが出来ないから送ることは無理だろ?で、私がコウの分の魔力を補って移動するってことも普段だと出来るんだけど、なんせ色々あったもんだから、おかげで魔力が4分の1しか残ってねぇんだよ。」
あ。なるほど。結局はおれのせいってわけね。
「まぁ、そう…なる、な。」
「……。心は読んで欲しくないな。」
「ごめん。こればっかりは癖で…つい。」
「そんな、ついで心聞かれたらもう何も考えられねぇよ!」
「なるべく聞かないよう、努力する…!」
---------------------
「あのさ、魔王討伐っていつ行くんだ?」
「んー、コウが強くなってからだな。」
「それって具体的には?」
「レベル50の魔物を1人で倒せるようになるまで。」
「は?レベル50!!!!!!!!!!!!!!!??????」
「!!!!そんな大きな声で驚かなくても!」
「いや!無理だろ!レベル50とか、しかも1人で!?無理無理!!」
「説明しよう!!!!!!レベル50とは国の中から選ばれしものたちが30人で一斉に襲いかかってやっと1匹倒せるぐらいの強さであーる!!!!」
「無理じゃなくて、やるんだ。」
「いや…そうは言っても…。てか、お前は倒せるのかよ!?」
「全然強そうには見えねぇけどな。ちっこいし、体もヒョロいし!!そもそも、おれと同じ10歳だしな!」
「……お前、ドラゴンを倒したやつは誰だと思ってるんだ?」
「はぁ?そんなの騎士団の誰かか勇者じゃねぇのか?」
「お前は見たのか?」
「は?」
「騎士団か勇者の誰かを。1人でも見たのか?」
……。そういえば…気づいた時にはドラゴンは倒されてて…死体はあるのに、騎士団とか勇者とかいなくて、カリアと街の人しかいなかった……
て、あれ?もしかして……
「もしかして……、お前がドラゴン倒したのか!?」
「やっとか……。」
「しかも、1人でか!?」
「ああ、当たり前じゃないか。」
当たり前って…
「あのドラゴンのレベルは120。つまり、レベル50の魔物なんて朝飯前っつーわけ。」
「……嘘だろ。レベル120の魔物を1人で倒すやつなんて聞いた事ねぇ。」
「コウはまだ10年しか生きてないからな。仕方ないだろう。」
「いや、カリアも10年しか生きてねぇだろ!?」
「ごもっとも。」
「じゃあ…」
じゃあ、なんでそんな強いんだ?
言おうとしたけど言えなかった。
なぜだか、色んな感情が湧き上がってきたからだ。
だが、カリアには言わなくても伝わる。
嫌でも伝わってしまうんだ、
「なんで…か………。それは、私にはある秘密があるからさ。」
「……、秘密って?」
「まだ内緒。」
「まだってことはいつか教えてくれるんだな!?」
「あぁ。コウが強くなって、自分の事を自分で守れるようになったらな。」
その言葉と表情と瞳の奥に色んな影が見えた。
一体カリアはどれだけ濃い10年を送ってきたのだろう……。
…知りたい。もっとカリアの事が知りたい。
そう、強制的に思わせるほど魅力的だった。
「…今のは聞いてないよ。」
「……!!おれ…強くなる。自分を守って、カリアも守れるぐらい強くなりたい。」
「うん、頑張れ。」
「さぁ、着いたよ。」
「ここが私の家がある村、ソミネ村だ。」
「ソミネ村…。」
「おぉ…!カリア!!カリアが帰ってきたぞ!!」
「カリアだ!!」
「おかえりー!!!!!!カリア!!!!!!」
「怪我はないかい?」
「あぁ、怪我はしてないよ。」
「皆ただいま。」
わぁ…すげぇ…。
「おや、その子はどうしたんだい?」
「…っ!」
(サッ!)
「カリアの後ろに隠れちゃった。」
「ほら、挨拶しな。これからお世話になるんだから。」
「……。」
いやだ。
「どうしてだ?」
だって…絶対引かれるもん。
呪われてるって……
「はぁ……。こちらはコウ。路地裏にいたから拾ってきた。これから私と一緒に住むから皆にも迷惑かけるかもしれない。けど…よろしくお願いします。」
「コウ君か。よろしくね!」
「いつでもうちに遊びにおいでね!」
「さぁ、そろそろ行こうか。」
「あっ!今日は宴を開くから広場に集合な!」
「宴?何かめでたい事でもあったのか?」
「ばっか。何を言ってるんだい!カリアが帰ってきたじゃないか!」
「そーだぞ!めでたいことじゃないか!」
「しかも、カリアが男を連れてきた!!」
「宴だ!宴ー!!!!!!!!」
「男って……( 笑 )」
「さ、帰ろうか。私達の家へ。」
"私達の家"…か…。
「なんだ?顔がニヤついてるぞ?」
「……!!なんでもねぇよ!…//」
「着いたぞ。ここが今日から住む場所だ。」
……………。なんだ……ここ…
「どうした?」
村の森をぬけた先にあったのはカリアの家…………というか、廃墟だ。
どう見ても廃墟だ。とてもじゃないが、人が住める場所ではないことは一目瞭然だ。
「お前、失礼だな。」
「いや、こればっかは謝らねぇぞ。だって、どっからどう見ても廃墟だろ!」
「……仕方ないだろう?4年ぐらい住んでなかったんだから。」
「4年ぐらい住んでなかった?って……え?なんでだ?その間お前はどこに住んでたんだ?」
「旅をしていたからな。宿に泊まるか野宿してたよ。」
「まじかよ…。4年前って…6歳の時か?」
「あぁ、そうだな。」
「いやいやいや、6歳のやつが1人で旅なんて出来ねぇだろ!?普通!!!!!!!!!!」
「私は普通じゃないからな。」
「あっ。」
普通に納得してしまった。
「まぁ、うん。いいや。それに関してはなんか、もうよくわかんねぇから、うん。いいや。問題はそこじゃねぇからな。」
「どこなんだ?」
「旅をする前はここに住んでたんだろ?」
「そうだな。」
「それなら、4年でこんなにボロボロになるのか?おかしくねぇか?」
「そうか?家に人がいないと魔力で守るやつがいないからこんなんになるだろ。」
「え?魔力で守る?」
「あぁ。…………え、まさか…それすらも知らなかったとか……?」
「知らねぇよ!!!!!!!!!!悪かったな!!無知で!!!!!!!!!」
「…………馬鹿にしてごめん。」
「…いや、別にいいよ!……知ってるのが普通なんだろ!?」
「まぁ、そうだな。親が1年に1回は魔力を家に補充して壁とか床を崩れないように補助してるんだ。」
「……そーなんだ。」
「でもな、普通、街の中にある家とかは4年間魔力を補充しないだけでここまでボロくはならないんだ。ただ、ここは森の中。魔物だったり魔植物だったりがこの家を襲うんだ。その結果、廃虚みたいになっちまったってわけ。わかった?」
「あぁ。……大変だな。お前も。」
「同情するのはこっちだよ。」
「え?」
「今からこの家を綺麗にするのはコウだよ。」
「は?」
「最初の訓練はこの家を綺麗にすることだ!!」
「えぇー!!!!!!!!!!!!」
「いやだぁぁぁあああ!!!!!!!!!!!!」
「頑張れ。」
掃除なんてやったことねぇし!!!!!!!!
「まぁ、綺麗にすればいいんだよ。家の中には要る物とかないからな。全部捨ててもらって構わない。」
「いや、おれはまだやるなん」
「は?お前が決めるんじゃなくて、私が決めるんだよ。やりたくないじゃなくてやるんだ。」
「…………。」
やるしかねぇのか…。
「さぁ!頑張れよ!少年!」
「……てか、それ、お前がやりたくないだけじゃねぇのか?」
「……。」
「なぁ?絶対そうだよな?面倒臭いだけだよな!!?」
「うるさいっ!!!!!!つべこべ言うな!!!!」
「ちっ。」
やるしかねぇのか……。
-----------------------------
「てか、どっから手ぇつけていーかわかんねーよー!」
「進んでるー?」
「カリアー」
「ん?」
「これ、汚すぎてどっから手つけていーかわかんねぇよー!」
「んー、じゃあちょっとアドバイスをあげよう!」
「私のさっきの話を覚えているか?」
「家は魔力で補助しているって話か?」
「あぁ。そうだ。何か思わないか?」
「何か……?」
んー、何か…か……
魔力で補助してる……
魔力を補充しないとボロくなる……
魔力を補充したら、綺麗になる……!!??
「……正解だ。」
「よっしゃぁ!!!!!!」
「さっそく魔力を補充するゾー!!!!!!!!!!」
そう言っておれは家に走っていったが、走っていて少し冷静になった。
そして思い出した。
おれは魔力の補充の仕方も知らねぇし
そもそも、魔力が使えねぇことを。
くるっとUターンをし、カリアの元へ急いでもどった。
「おれ!はぁ……はぁ……そもそも!…魔力の使い方……わかんねぇよ!!!!!!!!!!」
「……ふふっ。…はは……あははははは!!!!!!!!」
「あー……面白い!!!!!!すっかり忘れてるんだもん!!!!!!!!!!!!」
「…………くっっっっそが!!!!!!!!」
(コウがカリアに殴りかかる)
「おっと。危ないなぁ。」
「あぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!!!!!腹立つ!!!!!!!!!!!!」
「ははははは!!!!!!」
「そのまま体に力こめてろ!」
「そして、魔力の流れを感じるんだ!!!!!!!!」
「あぁ!!!!????」
魔力の流れ?何なんだよ!!
「いいから感じろ!!!!!!!!」
おれはとりあえず魔力を感じる前に今ある怒りを必死に抑え、目を閉じ、集中する事にした。
おれは馬鹿にされた事一生忘れねぇからな。
「ふぅ……。」
魔力を…感じる……
おれは体に全神経を集中させた。
心臓の音
血が流れる感覚
息の音
それとともにおれの体から何かが出ているのを感じた。
……これが魔力…か?
この…熱気のような……
なんか、おれの体から湯気が出てるみてぇだ。
「感じたか?」
「あぁ……これが魔力…。」
おれはゆっくりと目を開けた。
すると、そこにはまた別の世界が広がっていた
「……あれ?なんか…」
「お?もう見えるのか?」
「あぁ。なんか湯気が見える。カリアだけじゃなくて、木とか地面とかからも……」
「(ほぉ……そこまで見えるのか…。)」
「目がいいんだな。」
「あぁ?」
「しかし、それだけ見えたら余計な物も見えるだろう。ちょっとだけいじらせてもらうぞ?」
「え?」
そういうとカリアはおれの目を手で覆ってきた。と、思ったらじんわりと目のあたりが温かくなってきた。
「どうだ?」
「あ……。」
ゆっくりと目を開けるとさっきまで見えていた木とか地面からの魔力が消えていた。
「消えてる……。」
「これで少しの間だが大丈夫だろう。」
「私の魔力を貸してる間にちゃんとコントロール出来るようになれよ?」
「コントロール?」
「あぁ、お前が言っている湯気……つまりオーラが良く見えるのはお前が無意識で目に魔力を使いすぎてるせいなんだ。」
「…なるほど。」
なんか、実感が湧いてきた……
おれ、何しても無理だったのに…
こうしてちゃんとオーラが見えてる。
「これさ、強い奴ほどオーラの量が多いのか?」
「そうだな。」
「……じゃあ、なんでカリアはドラゴン倒せるぐらい強いはずなのにそんなにオーラが少ないんだ?」
さっき見たそこら辺の木と同じぐらいじゃねえか
「……その秘密は後で教えてあげるよ。」
「さ!はやく家に魔力を補充しな!」
「話はそれからさ!」
「おう!」
とは言ったがやっぱり気になる……。
木とか地面がいっぱい魔力を持ってる…とか?
んー、わかんねぇ!!!!!!!!!!
「ちゃんと集中しろよー!!」
「はーい」
ちっ。
集中しよう。でも、どーやったらいーんだろうか……
とりあえず、魔力を手から出してみるか
「イメージだよー、イメージ!」
「イメージ……」
自分の魔力を手から家へ。
おれは壁に手をついた。
そしてイメージした。
手から壁へ……
手から壁へ……
「手から壁へ……」
するとおれの魔力が壁へ移動していくのを感じた。
吸い取られるような、流れ出てるような……そんな感覚…。
「いいぞ。そのままだ。続けて。」
-----------------------------
どのくらいの時間が経ったのだろうか…
さっきまで明るかった空はもうすっかり黒くなっている。
「きつくなったらやめてもいーんだぞ?」
「いや……まだ大丈夫!」
そう。かれこれ3時間ぐらいは魔力を注ぎ続けているのにおれは全くと言っていいほど疲れを感じないんだ。
それからまた2時間後……
「ストップ。もういいぞ。」
「え?もういいのか?」
「お前、疲れてないのか?」
「うん。そりゃ少しの疲労感はあるけどね。」
「(うわぁ……。逆に気持ち悪いな。)」
「? カリアこれでもう家は大丈夫なのか?」
「あ、あぁ。今は暗くてよく見えねぇが、見違えるほど綺麗になってるはずさ。」
「さ、もう遅いし今日はもう寝な。」
「あ!!!!」
「どうした?」
「今晩、宴があるんじゃなかったのか!?」
「あぁ、宴なら明日に変更だよ。」
「え?そうなのか?」
「あぁ、お前が集中している間にリーダーと話してきたんだ。今日は家の掃除とかして先に住めるようにだけしたいから明日でいいか、ってね。」
「そっかぁ……」
「じゃあ、晩飯は?どうするんだ?」
「…………、どうしよ。忘れてた。」
「えー!!!!!!!!おれ、腹減ったよー!」
「……そんなこと言っても何も無いから仕方ないだろ?今日はとりあえず寝ろ。」
「寝ろって言われても、腹減りすぎて無理だってー」
「睡眠魔法かけてやるから。」
「は?すいみんまほ」
「ネムレ。」
「…うっ…て、な……ん………すーすー。」
「ふぅ。」
「あんな長時間魔力を使って疲れないとはな。普通だと、もう歩けないぐらいにぐったりなはずなのに。」
「果たして、出す魔力の量が少なかっただけか、魔力の器が底なしなのか…楽しみだね」
「……しっかし、ご飯食べないといけないことをすっかり忘れてたよ。……ご飯ね…。もうずっと食べてないな…。だからちっゃいのかな?…………でも別に要らんしなー」
「でも食べなきゃ秘密がバレるしなー」
「そうそう。バレるしなー」
「ねー、どうする?」
「どーしよっか……て、ちょっと。ナチュラルに会話に入ってこないでよ。」
「あははは。」
「久しぶりだね、カリア」
「あぁ、久しぶりだな。ヨヤミ。いや、今はこう呼んだ方がいいかな?……魔王様?」
「その呼び方、あんま好きじゃないんだよね。特に、好きな女の子には呼ばれたくないな…」
「……魔王様は何しにいらしたのですか?」
「つれないなぁ…。じゃあ、こう言ったら名前で読んでくれる?名前で呼ばないと…」
「殺すよ?」
「……呼ばないだけで殺されるのは理不尽だな。」
「だったら呼んでよ。昔みたいにさ。」
「…………。」
「ね?カ、リ、ア。」
「……わかったよ。」
「やったぁ!!」
「で、一体何しに来たのさ。邪魔しに来たんなら容赦はしないよ。」
「邪魔なんてとんでもない!!!!する訳ないじゃないか!!……だって、僕の夢のためにそいつを強くしてるんだろ?自分の命を拘束してまで、さ。……ふふふっ。」
「お前の夢を叶えるためじゃねぇ!!!!!!お前を倒すために強くしてるんだ!!!!!!」
「自分じゃ倒せないから、だろ?」
「!!!!……。」
「僕はなーんでも知ってるよ?君が僕を倒せない理由も、君が彼を拾った理由も…。全部…。」
「…………。」
「あぁ!!可愛い……!はやく僕のお嫁さんになればいいのに…。あんな奴にいつまでも縛られてないでさ……」
「うるさい!!!!!!お前の嫁になんか絶対にならない!!!!」
「ふふふっ。…それを決めるのはカリアじゃなくて僕だろ?」
「違う!!!!」
「違わないね!!!!!!僕は無理やりする事だって出来るんだぞ!?今すぐにだって!!!!!!」
「…………んっ。」
「!!!!」
「じゃあ僕はそろそろ帰るよ。」
「お前はいったい何しに来たんだ?」
「……そーだね…愛しの花嫁に印を刻みに来たって事にしとこーかな!」
「な……!!愛しのって……」
「ふふふっ。嫌がってる……!」
「…………カリア?」
「…………!すまない、起こしたか?大丈夫だからゆっくりおやすみ。」
「……ん…………すー、すー、」
「相変わらず魔法が綺麗だね。」
「なんの事だか。」
「今更とぼけるの?笑」
「僕はなんでも知ってるのに。」
「今だって詠唱も無しにサラッと睡眠魔法をかけたでしょ?きっと彼もかけられたなんて、気づきもしないでしょ。」
「……、なんならお前も眠らせてやろうか?」
「んー、キスでなら大歓迎!」
「気持ち悪ぃ。」
「ちぇ。それじゃあ、またね!愛しのお姫様。」
そういうと奴はさらさらと黒い霧の様な姿となり、1度カリアの周りに来て、自分の魔力を付けて、散布していった。
これは僕のものだと密かに印をつけるかのように。
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「んっ、んー、ふぁ……腹減った…。」
「おはよう。」
「……おはよう。」
「良く眠れたか?」
「うん……。そう言えばカリア、昨日の夜誰かと話してなかったか?」
「……いや?誰も来てないし、喋ってすらないけどね…。どうせ、夢でも見てたんだろ?」
「んー、そうか……。にしては結構リアルだったけどな…。」
「さっ!朝ごはんを食べに行こうか!!」
「うん!ご飯!!を、食べに…行く……?」
「あぁ、行くぞ!」
「ここは……?」
「ここはマルシェ!朝は主にフルーツやパンを売ってるんだ。」
「へぇ……」
「おぉ!おはよう、カリア!」
「おはよう」
「坊主も!おはよう!」
「…………おはよう。」
「リンゴを2つちょうだい」
「あいよ!100メルだよ!」
「ほい。」
「ありがとな!また来てくれよ!!」
「うん、またね。」
「…………。」
「まだ、慣れないのか?」
「……!あ、あぁ…。」
ワガママ言ってフードを被って髪を隠してるけど……やっぱ、気になるよ…。
「……、私はそのフード、いらないと思うけどな。」
「えっ。」
「あ、お前クラムチャウダーは好きか?」
「え、え?あ、クラムチャウダー?」
「あぁ、好きか?」
「うん、好き……だけど。」
「おばちゃん、クラムチャウダー2つとその切ってあるナチュールを10枚ちょうだい。」
「はいよ!500メルだよ!」
「はい。」
「丁度だね。はい、どーぞ!」
「ありがとう。またね。」
「あっちに座って食べようか。」
「うん。」
「はい、これコウの分。」
「ありがとう……」
「冷めないうちに召し上がれ。」
「…いただきます。」
「どうだ?」
「美味しい……!!」
「それはよかった。」
「…………あのさ、さっき言ってたやつ、どー言うことなんだ?」
「さっき……?」
「ほら、フードとってもいーんじゃっ……て」
「あぁ!それか。」
「その理由はね、ここの人達は皆いい人だからさ。だって、こんな変な私に良くしてくれる人達だぜ?」
「別に、カリアは変じゃないだろ。」
「ありがとう。でもな、一般的に見ると私は変なやつなんだ。歳は10歳で、親も居なくて一人ぼっちで、大人にも負けないぐらい強くて、おまけにこの髪色。そうだろ?」
確かに…………。
「な?なのにここの村の人達は嫌な顔一つせず私を受け入れてくれたんだ。もちろん、最初は驚かれたけど、皆すぐに優しくしてくれたんだ。……ちゃんと本心でね。」
「じゃあ、なんで1人で森の奥に住んでるんだ?」
「……訓練したかったからさ。」
「本当は?」
「…………本当だよ。」
「うそだね。訓練する場所ぐらい村の中にだってあるはずだろ?」
「…………。本当はそんな優しくしてくれた人達に迷惑かけたくなかったからさ。」
「迷惑……?」
「そ。私は、なんか知らないけど厄介事を引き寄せてしまうみたいでね、巻き込みたくないんだよ。」
「…………そうなんだ…。」
「なんだ、不服そうだな?ちゃんとホントの事だぞ?」
「……うん。」
そうなんだろうけど…なんか違和感…。
「ま、そういう訳だから、このフードは要らないな!」
パチン!!
そう指を鳴らすと今まで被っていたフードが消えていった。
「えっ!!あっ、ちょ!!おれのフードが!!」
「わたしの、だろ?これ、」
「あ……そだっけ?」
「……うん。やっぱない方がいいよ。顔もよく見えるし。綺麗な髪じゃないか。」
「…………。」
「大丈夫だよ。」
「いや…でも……」
「なんだ?じゃあ、お前はこのままずっとフード被って生きていくのか?なぁ!」
「それなら、いっその事髪を染めちまえばいいだろ!?」
「それは……!!その……染める材料がなくて!」
「そんなのはただの言い訳だろ!?お前は、本当はその髪色が嫌いじゃないんだろ!?」
「…………!!」
「いつか、この髪を好きだと言ってくれる人が現れるのを待ってるんだろ!?」
「ちが……」
「違くない!!私には全部わかるんだぞ!?お前は待ってる!!そのチャンスが、今!きてるんだよ!お前は逃げるのか!?そのまま一生フードを被り続けて偽りの笑顔を浮かべるのか!?一生、人にビクビクして生きていくのか!?」
そんなの……
そんなの…………
「……わかってるよ…。でも、」
「変わりたいんだろ?」
…………変わりたい。
「だったら、勇気を出せよ。…………大丈夫。どんな事を言われようと私はお前の味方だから、さ。」
……味方。
「…………よしっ!行ってやる!!…………このクラムチャウダーが食べ終わったら!!!!」
「おいっ!……まぁ、うん。食べるか!」
………………頑張るぞっ……!
「意気込んでるとこ申し訳ないが、見せに行くのは宴の時でもいいか?」
「へ?」
「とりあえず先に家に帰らないか?きちんと魔力の補充ができてるかも気になるしさ!」
「……今までのやりとりはなんだったんだ?」
「あなたのためになるかと思って。」
おれの覚悟をお前はどうしてくれんだよ……!
「その覚悟は今夜の宴までとっとけよ!」
「……わかったよ!」
「さ、もうすぐ家に着くぞ。」
「あぁ。」
きちんと出来てるといいけど……
「…………!これは?」
「んー、まぁ、及第点だな!」
「よしっ!」
「ただ、よく見てみ?お前が魔力を補充していた場所は綺麗だが、そこから離れていくにつれだんだん綺麗じゃなくなっていってるだろ?これじゃあ、2ヶ月ぐらいしかもたんぞ。」
「まじかぁ……」
「まぁ、初めてにしては上出来だよ。だから及第点と言ったんだ。今から手本を見せてやるからよく見とけよ?」
そういうとカリアは家を指さしそして目を閉じた。
一呼吸すると、カッ!と目を見開き
「綺麗になれ」
そういうと指先から光が放たれ、家に当たったかと思うと、家が光に包まれていく。
そして、光が家に浸透していく。
「……これで完璧。やり方とかはまぁ、自由だ。自分が1番魔力をあげやすいやつでいいからな。わかったか?」
「…………っ!あ、あぁ。」
「……大丈夫か?」
「うん、ただ綺麗でさ。」
「ん?あぁ、家か。綺麗になっただろう?」
「いや、カリアが。カリアの魔法は綺麗だなって。」
「!!!!!!!!」
「え、なんでそんな青い顔をするんだ?褒めたつもりだったのに……」
「いや……その……あまり言われ慣れてないから、さ。あ、ありがとう。」
「……?」
なんだろう……この違和感……。
あ!違和感といえば……。
「カリア。」
「(ビクッ!!)な、なんだ?」
「?その首、どうしたんだ?」
「へ?首?」
「うん。首の周りに黒いモヤみたいなのがついてるけど……大丈夫なのか?」
昨日まではついてなかったはずだけど……
「え?(ボソッ)まじかよ……」
「ん?」
「いや!何でもない!これ、疲れが溜まったら出てきちゃうんだ!そういう体質でね!気持ち悪いだろ!じゃあ、私は少し寝るから!お前は、家の中の掃除をしてくれ!よろしくな!」
そう足早に言うとさっとどこかへ消えていった。
「寝るだけだよな?なのに、なんで消えるんだ……?んー、わかんないけど、とりあえず言われたことをやるか!」
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カリアside
「まじか、まじか、まじか、まじか!やばい。あいつ、目がいいから見えちまうんだ。さっきはなんとか誤魔化せたけど……。」
私は恐る恐る鏡をみた。
「うわぁ、がっつりついてやがる。」
私の首周りには黒い糸がしっかりと巻きついていた。
「これ、切れないんだよな。…………いっその事首を切るか……。」
(ガタッ!!
「!!!!!!!!!!!!誰だ!!!!!!!!!!」
ここには私しか入れないはず!!
「誰だ!!!!!!!!出てこい!!!!!!」
「………………だんまりか。黙っていてもいるのはわかるぞ。さぁ、早く出てこい。こうして喋っている間に出てきた方が身のためだぞ?」
「……クーン。」
「……は?」
「……キュー。」
「え……動物?」
恐る恐る声がする方へ行ってみると……
そこには、
真っ白な毛玉…………もとい、
真っ白な動物がいた。犬……かな?
「……なんだ、動物か……。しっかし、どっから入ったんだ?」
抱き抱えようとしたその時!
「ヴーッ、アゥ!!!!」
真っ白な動物が私に噛み付いてきたのだ
「……っ!!……そうか、お前大変だったんだな。よしよし……もう大丈夫だよ。」
こういう時、この魔法は便利だよな…。
「ヴッー!!!!フー!フー!フー!」
「とりあえず、噛み付くのはやめようか。私は君を傷つけたりはしないよ。ただ、君の傷を治してあげたいだけなんだ。」
そういうと、動物は噛むのをやめた、が、
ずっと唸ってはいる。
「……ちぇ、なんだよ。助けようとしてんのに。どうしても動物には分かっちまうのかな…。」
「ヒール」
「はい、これでよし。どうだ?どっか痛いとこあるか?」
動物はぽかんとした表情だった。
「っぷは!動物でもそんな表情するんだな!今日は特別にここにいてもいいからさ。ゆっくりしてってよ。」
「ワンッ!!」
「嬉しそうで何より。さっきまであんなに警戒心むき出しだったのに、もう忘れたのか?」
「ワンッ!!」
「ふふふっ。今日はもう寝な。私も寝たいしさ。」
そういって私は毛布を床にひいた
「さ、お前はここで寝な。おやすみ。」
「クーン……」
「あ?なんだよ、ついてくんなよ。お前の寝床はそこ!このベッドは私の寝床!わかった?」
「…………クーン。」
「……はぁ。わかったよ、今日だけだし、一緒に寝るか?」
「ワンッ!!」
「はは!そうか。おいで。」
…………あったかい…………
こうして私はなぜこの子がこの部屋に入れたのか、そしてこの黒い糸をどうすべきか、色々考えなきゃいけないことを忘れてそのまま意識を手放したのだった…………。
コウside
「カリアー、もう夕方だぞー!起きなくていいのかー?」
カリアが何処にいるか分からないからおれはとりあえず大きな声で呼んでみた。
「………………。返事なし、か……。そうだ!声に魔力をのせたらどうなるんだろ。カリアはイメージが大切だって言ってたからな。」
声に魔力……。息に魔力を絡ませる感じか?
おれはイメージをかためると息を出せるまでだしそしておもいっきり吸った。
そして魔力を口から息と一緒に絡ませて出すイメージで。カリアの耳に直接届くように……
「カリアー!!!!!!!!もう夕方だぞー!!!!!!!!!!!!
起きろー!!!!!!!!!!!!!!!!」
すると、どこからか(ガタッ!!
と音がしたのだ。
「ん!?行ってみよう!!!!!!」
おれは音がした方へと進んでいった
すると突然
「コウ!!!!!!!!!!大きな声で私を呼ぶな!!!!!!!!!!!!」
と、どこからともなくカリアが現れたのだ。
「うわぁ!!!!!!!!!!!!お前、どっから出てきたんだ!?」
「はぁ?普通に部屋だけど。それより、声に魔力をのせるなんて、誰に習ったんだ?おまけに直接私に届くようにしてあったし。まじ、目覚め最悪なんですけど。」
「あぁ……ごめん。ふと思いついたからってみただけ……て、カ、カリア?」
「あぁ?なんだ?」
「その……後ろにいる白いやつは何……?」
「ん?あぁ、こいつは私の部屋に何故かいたんだ。……なぁ、こいつさ」
(キラキラした瞳で白い物体を見つめるコウ)
「……なんだお前、そういう系好きだったのか。じゃあ、了承も要らねぇな。」
「え?え?何が?」
「今更とぼけたって無駄だぞ?心の声はしっかりと私の耳に届いたぞ。」
「あぁ~。ずりぃぞ!…………こいつ飼うのか?」
「どうしたい?」
「どうしたいかって……そりゃぁ……飼いたい。」
「うん。だよな。私も同じ意見だ。と、言う訳でお前は今日から私たちファミリーの仲間だ!!」
「ワンッ!!!!!!!!」
「……喜んでる!!」
「あぁ、そうだな。」
「なぁ、こいつ名前は?」
「んー、どーしよっか……」
「ボワなんてどうだ?」
「ボワ……か。いいね!じゃあ、お前は今日からボワだ!!!!」
「ワンッ!!!!」
「ねぇ、ほんとに大丈夫かな?」
「何を今更もうすぐ着くってのに。」
「……。」
今俺たちは宴に向かっている。
確かにこのままフードをかぶり続けるのは嫌だけど、嫌われるのはもっとやだ。
「だーいじょうぶだって!ほら行くぞ!!」
「っ!!おい!カリア!!」
痺れを切らしたカリアは俺の手をとって走った。
「……はぁ……はぁ…。」
「みんなー!お待たせ!!」
「おぉー!!待っとったぞ!!!!」
「ほら!早く乾杯しよーぜ!!」
「はい!飲み物!!」
「ありがとう!!」
「はい!コウ君も!」
「!!……、あ、ありがとう。」
「いーえ!」
「それでは!えー、乾杯の儀を行う!」
「カリア!無事に帰ってきてくれてありがとう!!おかえり!!」
「あははっ。ただいま。」
「そして、コウ君!!!!」
(ビクッ!!!!
「改めまして、ようこそ!ソミネ村へ!!!!!!君はもう、村の住人の1人さ!!!!」
「……!!!!!!」
「と、言う訳で……ふたりの帰還を祝って…かんぱーーーい!!!!!!!!!!!!!!!!」
「「「「かんぱーーーい!!!!!!!!!!!!!!」」」」
「…………。」
おれは驚いていた。
村人達はおれに目もくれずに飲んで食べて喋って踊って……とにかく騒いでた。
「はぁ……大丈夫ってそっちの大丈夫かよ…。」
まぁ、いっか……。とりあえずおれもなんか食べたいな……。
「はい!どーぞ!!」
「!!!!」
「ん?」
「あ、ありがとう……。」
「どういたしまして!」
そう彼女は言うとおれの隣に座った。
びっくりして固まっていると、
「???どうしたの?食べないの?」
「いや!食べる……。いただきます。」
「ふふふっ。どーぞ!!」
「うまっ!」
「でしょ!?それね、私のお母さんが作ったの!!」
「へぇー、凄いな。」
「……?どーしたの?もっと食べなよ!」
「……うん。」
「???」
「あのさ、お前は……その…気持ち悪い…とか思わないわけ?」
「え?なんが?」
「その……おれの髪色が………青…だから。」
「あぁ!確かに青いね!!でも別に気持ち悪いなんて思わないよ!!」
「……なんでだ?」
「なんでって…それはコウ君の外見であって、私はまだどんな人なのか知らないから!!人を見た目で判断するなって、お母さんが言ってたし!!」
「そっか……。いいお母さんだな。」
「うん!!怒るととっても怖いけど、優しいお母さんだよ!!!!」
人を見た目で判断するな……か。
「お、その様子だと上手くいったみたいだな。」
「カリア……。」
「ほれ、コウ!!いっぱい食べて大きくなれよ!!!!!」
「ちょっと村長、うるさい。」
「アハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!」
「にしても、お前ら2人並ぶと華やかだな!」
「はぁ?」
「髪色が片方はピンク!!片方は青だからな!!」
どうして……
「ちょっと!!私の髪はピンクじゃなくて桜色だっつってんだろ!?」
どうして…
「アハハハハハ!!!!!!!!!!」
「どうして!!!!!!」
しーん。
「どうして、お前らは受け入れてくれるんだよ!!!!!!普通に気持ち悪ぃだろ!!!!こんな髪色!!!!前いたやつらは!!!!俺の事を見るなり青鬼だって!!キモイから近づくなって!!!!!!…………なのに、なのにお前らは…………。」
「青鬼……か…。まぁ、確かに普通ではないな……。でも、それはお前が望んだわけじゃないだろ?まぁ……気味悪がらない1番の理由は……カリアが連れてきた子だからなぁ!!!!!!」
「あぁ!!!!そうだよ!カリアが認めた子だからな!!!!!!」
「ほれ!じゃあ、もう一度、仕切り直して、かんぱーーーい!!!!!!」
「「かんぱーーーい!!!!」」
「…………、どうして……。」
「な?皆受け入れてくれただろ?」
「ぅ……。」
どうして……。
next stage___