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2019/05/08 22:28/猩々 - 3
ナトリウムランプが暗いシートにオレンジの弧を振り
男は前方に視線を鋲て、くだらない言葉、フロントガラスの向こうへ流していた
そんなの気にも留めたくなくて、全然違うことを考える
それをポンと口に出す
「日常って恐ろしいものよ」
「なんだって?」
こんなピカピカの箱に載って、それを台無しに、単色光の満たす管が100km/hよりも速く後ろへ流れて、それが恐ろしくないのだ、この男は
「ふと見る死の悪夢なんか、現実に比べれば子供だましよ」
「そうか?俺は今、最高に幸せだよ」
ふと、人を殺してやろうとか、頭蓋の裏に言葉を、音を立てて、ぎりぎりと音を立てて掠めさせてやると、響きは反響して、どんな快楽よりも安静に心を満たしてくれたりする
「幸せは毒」
「おいおい」
「麻酔、麻薬、幸せは残酷な都市の部品の一つ、私は性善説を唱えるわ、人間は悪くない、摩天楼が遊園地みたいな地獄なの」
「なんだよ…」




