表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩送り  作者: 猩々飛蝗
4/545

2019/04/22 15:35/猩々

『日向、水蜜』


日向夏。

僕たちの町を作った細い川を銀の魚が遡泳する

今となっては曖昧だが、確かにあの日君はいたのだ

ケーブルを数えた丘の上、Ω塔の袖は緑色に翻った

海はきらきら、きらきらしていた、その前を電車が通った

赤いレンガのトンネルが二つ、銀の箱が合間を流れた

僕たちはそれを見ていたはずだ

ばちん、それだけはよく覚えている、誰かの死が聞こえたはずだ


白砂糖。

そうそう、あの日なんか汽車が走っていたね

昨晩の雪が深い中、真っ白な曇りの中

海と車体とトンネルだけが、触れられないほどひんやり

はっきりした輪郭を、真っ黒く引いていたね

そんで、あのどれもが、嘘だった世界の外に繋がっていたね

私はガタガタの窓を開けてあなたと話をした

塔には弦が一本だけ残って、楽器みたいな音を鳴らした

いや…そういえばあれはただの桃売りだった


向日葵。

僕はもうここまでやってきた、円琴だけが浮いている

差し渡し世界の全てで、同名に奏でる、触れることは

心の単音を鳴らしても意味がない、記憶しか持たない

僕にはもうなにもできない、そんな振りをして近づく

僕には夕の雨があるのだ、君の驚く顔がうつっている

中心に触れるだけでいいのだ、それで世界の音は消え


水蜜桃。

私はこんなところまで来てしまった、消えたあなたを探してきた

洋針は何光年先から延びて、今海面に突き立っているんだろう

そしてそれは何本あって、あの白塊の中で嘘をついているんだろう

真っ白な宇宙はずっと流れていて、ここには空気もないのに

幾らの針だけひたすら星を求めて、水満つ原動の中、重ならない波

一しずく、飛び出してきた私がそこに落ち、飛沫をあげて

さあ、泳いでやろう

全部めちゃくちゃにしてやる


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ