1/34
「第0章 遠い夕焼けの下で」(1)
奇跡っていうのは一体、どんなものなんだろう?
って考えて自分なりに結論を出したお話です。
(1)
夕日に染まる空の下、丘の上にある小さな公園で何かを探していた。
何を探していたかは思い出せない。
今よりも背の低い自分が熱心に下を向いて探していた事。
運動靴に茶色の土が付き、鼻に雑草の匂いが入って来た事。
そういった不透明な風景だけが頭に浮かぶ。
ただ、自分は一人ではなく一緒に探してくれていた人がいた。
誰だったのかは思い出せない。
記憶にあるのは、柔らかな女性の声。
二人で長時間熱心に探して、夕焼けが夜になりかけた頃、やっとそれを見つけた自分にその人が、あるおまじないを教えてくれた。
そのおまじないの名前はそう——、確か。