サバイバルクッキング!?
「おにぃさんすごいですっ!」
背中からミルーを降ろして一息つくと、ミルーが目を輝かせながら褒め称えてくれる。かわいい。
そして、おもらしに気がついて、しゅんとしてしまった。かわいい。
返り血が体中にべっとりとついている俺は自分の粗相がばれない事を確認して、大人の対応で許してあげた。
さて、狼の死体=肉なんだが、食べれるのかこれ?
空腹だしそろそろ肉が食べたいってのもある。
必要なのは刃物と火だろうか、どっちもない。
火は以前、呪いの棒をぐりぐりして起こそうとしたが、暴れだした棒が俺のケツから火が出るほど叩かれたのは記憶に新しい。
あのときのミルーの何とも言えない表情が、新しい扉を開きそうになった。
刃物に至っては持っていない、常に持ち歩いているのは、世紀末の人々か思春期こじらせた男子ぐらいなものだろう。
「お肉食べたいよなぁ…でも刃物も火もないし諦めるかぁー」
ミルーがキョロキョロしながら尖った石持ってきた。
「ミルーが切りますっ!」
たくましいわ。両手やボロ服を真っ赤に染めながら肉を一生懸命切り分けるミルー。
おなかすいてるからしょうがないね。
ミルーの願いを叶えるべく、木の枝やら落ち葉を集めることにした。
決して自分のお腹が鳴ったからではない決してだ!。
言い訳させてほしい、そもそも義務教育にサバイバル訓練なんてなかったじゃないですかー。
木の枝をしばらくクルクルしてると、肉を切り終えた血まみれミルーがやってきて、パッパッと火をつけていったのだ。
ごめんねダメなんお兄さんで。これからもその調子でお兄さんの面倒見てほしいと思う。
切り分けた肉に木の枝を刺して焼く、そして食らう、うーんワイルド、これは狼の戦闘に続いて惚れ直したのではないだろうか?キラッ
一心不乱に肉を食うミルー。
知ってた。
食事中、この世界について考えてみた。
まずこの世界は異世界なのは間違いないと思う。狼もそうだし呪いの棒もそう、そして月。
月が黒い。黒いのに世界は明るい。
ブラックライトの世界と言うのだろうか、とても幻想的で、目に悪そう。
不思議で素敵な世界なのはわかる、遭難中だけど。
不思議と言えば、呪いの棒(仮)
初期装備にして天敵の相棒、たぶん 棍 なんだと思う。
とても軽くて、狼の首を吹き飛ばしても壊れる気配もないほど丈夫。
【捨てる】と手に戻ってきて
【置く】と戻ってこない
かといって置いて放置ってのも出来ず、少し離れると手に戻ってる。
乱暴に扱えば攻撃してくるオプション付き。
目の前の火に突っ込んだりしたら、きっと素晴らしい折檻が待っていることだろう。だがしないMじゃないので。