3話 才女の帰還
3話です
どうぞよろしくお願いします
気づけばもう七限が終了し、HRの時間だった。類衣のことはどうなるんだとおもっていると、案の定、担任教師は話を切り出した。
「海外へ留学していた香咲が明日帰ってくる。急なことだがみんな仲良くしてやってくれ」
ざわざわ....
そのままHRが終了し、一気に騒がしくなる教室。もちろん英二は振り向き話しだす。
「おいおいマジかよ、和也知ってた?」
わざわざ説明するのも面倒なので、和也は首を横に振る。
「いや、知らなかった」
「香咲さんってめっちゃ可愛かったよなぁ...俺狙っちゃおうかなぁ...」
周囲の人間たちは類衣の留学を村への裏切り行為だとは捉えていなさそうだ。
これには2つの理由があり、類衣が昔から天才だ秀才だと騒がれていたのと、理由は知らないが両親がいない類衣の預かり先が枡爺の家だからだ。自分が村を出る時どうなるかの参考にはなるだろうが、立場が違うので、同じような結果になるとは限らない。
そんなことを勝手に言ってる英二は幸せそうだが、和也は先日のことを思い出す。
「お前ちょっと前に槇原さんと付き合い始めたって言ってなかったか?あんまり冒険はするなよ」
英二はギクッと肩を持ち上げ、あたりを見回す。
和也がそちらを見ると、端の方の机に座っていた槇原が爽やか笑顔でこちらを見ていた。
英二の声が大きいのが悪いのだが、さすがに同情せずにはいられない。
「ご愁傷様だ。健闘を祈る」
わざとらしく敬礼しながら、和也は準備を整えて教室をでる。
四月も終わろうかというこの山村は、少し暖かくなってきていた。
部活をやっていない和也が校舎をでると、そこに恵が待ち構えていた。
だいたいの察しはつくが、一応聞いてみる。
「何か用か?」
「和也、あんた香咲さんが帰ってくること知ってたでしょ。朝ごはんの時から何かおかしかったのよね」
バレている。恵はこういう時、鬼のような勘が働く。
そのまま頷くのも癪なので、言葉を濁しながら和也は言う。
「まぁちょっとな。枡爺が言うには明日ふもとのバス停だとさ。迎えに言ってやれと言われた」
なぜだか一瞬、恵の表情が固くなる。
しかし、すぐにいつもの口調を取り戻す。
「じゃあ私も行くわ。久しぶりに顔を見てみたいし。ね?いいでしょ?」
断っても来るだろうに...
まぁ、こうなることは待ち伏せに気づいた時点でだいたい予想していた。
「わかった。明日の10時のバスらしいから一緒に行こう」
恵の顔がパッと明るくなる。
「10時ね、了解。どうしよっかなー、やっぱり久しぶりに会うんだから多少オシャレしないとダメよねー」
「別になんでもいいだろ。そんなこだわるようなやつでもないだろ」
「女の子なんだからそんなもんなの。わかってないなー、ホント」
そのまま当たり障りのない会話をしながら和也と恵は山道を登って行った。
次の日、恵の多少の遅れはあったものの午前9時50分に村から1番近いバス停に着いた。
このバスは、ほとんど乗客がいない上に4時間に一本しか止まらないので、混雑で遅れて来るようなことはないだろう。
和也と恵は古ぼけたベンチに座ってバスを待つが、雨よけもなにもないので日光が容赦なく降り注ぐ。
気温が上がる一方、なぜか和也の思考は冷めていった。
バスが来た。
顔が険しくなるのがわかる。
バスが止まる。
緊張は止まらない。
ドアが開く。
開いたドアを見つめる。
バス内には1人しかいない。
逃げ出したくなってしまう。
そして人影が姿をみせた時、和也はその少女に目を奪われてしまった。
読んでくれてありがとうございました。
今回は少し短いです。申し訳ない。
やっとヒロイン登場ですね
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