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6にメイドさん帰宅後の話を追加しました。たいした量ではありませんがよろしければお読み下さい。
初日の野営は魔物が襲って来ることもなく朝日が登った。朝日が登ったといっても少しだけ明るくなるぐらいだったが。野営中は、イリカさんと話す機会があって、今回の依頼の理由を聞くことができた。理由は、ガルード・メイビスの孫の実力を調べるためだそうだ。もう一つ、理由があるそうだがそれについては教えてもらえなかった。
朝ごはんを軽くとり、野営の後片付けをしたあとは旅を再開した。
帰らずの森では大星が見えないため、魔道具の方位測定器を使用する。方位測定器はとても高価だが、エルレインさんが持ってきていた。この方位測定器を使用して危険なところを通らないようにする。森の中心を通るルートが一番速いが、危険度が跳ね上がるため迂回しつつ進んでいく。
先頭を歩いていた俺は、大きな足跡を見つけた。俺の後ろにいたイリカさんも気づいた。
「これは大きいですね」
「ええ、ローグベアの足跡でしょうか?」
イリカさんが、しゃがみこんで足跡の大きさを確認していた。
エルレインさんも足跡を確認する。
「いえお嬢様、これはサイクロプスの足跡だと思われます。それに普通のサイクロプスではなくロックサイクロプスかもしれません」
その発言に俺たちは衝撃を受けた。
《ロックサイクロプス》は見た目と表面の堅さからその名前がつけられた。なにより《サイクロプス》とパワーが、圧倒的に違うのだ。
「何故、ただのサイクロプスではないと考えたのですか?」
メイドのエルレインさんはどうやって足跡だけで判断したのか気になった俺は聞いてみた。
「それは、足跡の形です。大きさは通常のサイクロプスとあまり変わりありませんが、足跡の深さが違います。この足跡は何度も踏みつけたようには見えませんのでそう判断いたしました」
しゃがみこんでいたエルレインさんは立ち上がった。
「それでは、お嬢様、レントさん、ここから素早く立ち去りましょ・・・」
エルレインさんが、警戒するようにイリカさんの前に立った。
「レントさん、何か前の方から来ます」
「分かりました」
茂みの向こうから、牙全体が炎に包まれている《フレイムボア》が群れでこちらに向かって来るのが見えた。
「お二人はここに居てください。私が相手をしますので」
そう言って俺は荷物を地面に降ろし、剣を鞘から抜き、走り出した。
「五匹ぐらいか」
俺は、一匹ずつかたずけることにし、端の《フレイムボア》に斬りかかった。
剣を横に一閃。血が流れる。ブッひーと怒りながらこちらに向かってくる。
俺は、止めを刺すため首を狙った。俺の剣は《フレイムボア》に当たり、ブきーという声と共に動きが止まった。
俺は、残りの四匹の処理に向かった。
二匹を処理し、まとまった場所に置いてきて残りの二匹に向かおうとしたそのとき、地面から大きな振動が伝わってきた。その振動の発生原はこちらに向かってきている。
こちらに向かってきていた《フレイムボア》たちが慌てて別の方向に走り出したが、一匹どこからか伸びてきた手に捕まれた。
俺は、手が伸びてきた方に顔を向けた。そこに居たのは、頭に髪の毛はなく、目は一つ目で全体が緑色に茶色が混ざったような色をした大きな怪物だった。そして、俺は、確信した。こいつがあの足跡をつけたやつだ、と。
俺は、やつが捕まえた《フレイムボア》を食べているうちに、ここから離れることにした。一歩ずつ慎重に、足音をたてないように下がっていく。
この時、俺は一つ失念していた。俺が下がっていた方には《フレイムボア》が置いてあることを。
《フレイムボア》を食べ終えたやつは、こちらに目を向けてきた。そして、血だらけの口を笑うかのようにニヤリとさせた。
ばれてしまった以上、こいつとの戦闘は避けられないみたいだった。だが、今の俺なら・・・。
やつがこちらに四つん這いで走ってきた。俺もやつに向かって走り出した。やつが俺を捕まえようとして、腕を伸ばしてきた。俺は、それをかわしてやつの足を狙った。がっつ、という音ともに剣が弾かれた。すぐにやつの背後に移動する。やつの視界は狭いため、俺がどこにいったかわからず、一つしかない目をキョロキョロ動かしていた。ここで、俺は剣に魔力を流した。剣についているエレメントが光だした。
俺の剣についているエレメントは風のエレメント。一般的には風剣と呼ばれるものだ。そして、剣に風がまとわりついた。この剣でやつの背中に斬りかかったが、また弾かれた。背中は先に狙った足より硬いような気がした。
背後にいることに気づいたやつは、殴りかかってきた。やつの攻撃は大振りで速度はそれなりに速いが、かわせない程ではない。俺がかわした攻撃はドガッン、とすごい音をたてて地面にぶつかった。そして、地面には穴が開いた。俺は、素早く移動する。
風をまとわせた剣で足に攻撃を加える。がっどっしゅ、という音がし、やつの足に切れ込みが入った。俺の剣が少しだけ欠ける。やつは攻撃が痛かったのか、大きな叫び声を上げながら、こちらに向かってくる。また同じ攻撃だ、かわせる。
やつは、かわしたはずの俺を捕まえていた。そして、口元に笑みを浮かべる。こんなときだが俺は、馬鹿だった。そして、調子にのっていたのだろう。冒険者になり、ランクもどんどん上昇していく。ギルドでも上位ランカーの仲間入りもすぐだな、と口々に言われ、どこかで慢心していたのだろう。だから、こんな無茶な依頼を受けてしまった。そして、挙げ句の果てに5ムルもある化け物と1人戦って、結果がこれ。ほんと馬鹿だ。
「レントさん、はっー」
この声と共に現れたのは綺麗な銀髪を持ち綺麗な鎧を身に纏った女性と、
「やはり、ロックサイクロプスでしたか」
そう言ってナイフを構えるメイド服の女性。
鎧を纏った女性、イリカさんが俺を捕まえている腕に攻撃を仕掛けるが、やはり弾かれてしまう。そして、俺を捕まえる腕に力が入る。くそ、息ができない。
「ぐっふ」
「はっ、レントさん、今助けますから」
「お嬢様おどきください」
そしてメイド服の女性、エルレインさんがすごい速さで攻撃をする。衝撃がくる。だが、腕の力がだいぶ弱まったため、腕の拘束から抜け出すことができた。
「がっは、が」
何本かのあばら骨と左腕が折れたみたいだった。
「レントさん大丈夫ですか。これポーションです。飲んで下さい」
イリカさんが、駆け寄ってくる。俺は、折れていない右手でポーションを受け取り、飲む。このポーションは、最高ランクのポーションとかではなく、普通のポーションだからすぐに効果があるわけではないが、すぐに動けそうな気がしたため立ち上がった。そうして、剣を握った。
「レントさんは休んでいてください。私たちで倒しますから」
「いや、依頼人に救われて守られるなんて真っ平だ。それに、まだ、動けるからな」
そう言って俺は、重い足を動かす。剣に風をまとわせる。目の前には傷だらけになった《ロックサイクロプス》がいた。
「ふー、はっあ」
俺は、剣を振るう。この攻撃で膝を着いた《ロックサイクロプス》に全員で攻撃を加える。グッガー、と断末魔をあげ、動かなくなった。そして、俺も動けなくなる。俺は、薄れ行く意識の中で、手元からパキッという静かに壊れる音を聞いた。
ありがとうございました。
誤字、脱字修正しました。
9/24主人公が気絶したことにしました。
9/25戦闘中の主人公の思いを追加しました。
2018/2/18変更
3/1荷物を降ろしたことを追加しました。




