ストレッチ
言葉をやわらかくしよう
若草の中のストレッチ
風と背比べ
水蒸気の舞う白い空の裾つかんで
渡り鳥とかけっこをしよう
おはよう、は
澄んだ川の水のように響かせて
さようなら、は
夕陽の欠片ゆらめく緋色
力強い握手もいいけれど
時には言葉を添えて
軽やかな微笑みの会釈を
ビニールボールのような言葉で
君とキャッチボール
速すぎず遅すぎずの速度で
近すぎず遠すぎずの距離で
君は僕の
僕は君の
光る汗をたたえ合おう
軽快なバネで
遠くまで走っていけるような
手のひらに包めば
自らそれを温めるような
やわらかな言葉を
好きなものを話そう
広げた両手を越えて
僕の身体ごと飛び越えて
明日へと届けるような
好きを話そう
おやすみ、は
ふかふかの闇のように横たえて
月明りのキス
夜に眠るものたちと気配だけ沿わせ
そっと瞼を閉じれるよう
一日をやわらかく語ろう
拙さのなかで優しくいよう
伸びやかなバネで
遠くまで届けられるように
言葉をやわらかくしよう
いつか僕らが
屈んでしまう日が来ても
しなやかな草のように
また何度でも立ち上がれるように