ブリュッセル陥落
イギリスのEU脱退後のヨーロッパを、架空戦記風に。
妄想作品ですが、SFにしたら良いのか、異世界にしたら良いのか。
よく分からないので、とりあえず「その他」で投稿します。
英国がEU離脱を決定し、結果としてイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドに分裂した。
原因は、英国とEU間の自由貿易協定の締結が難航したからだ。
EU側が「大西洋の壁政策」を採り、英国との貿易に高関税を掛けると、ポンド安にも関わらず、英国のEUへの輸出は減少した。
北アイルランドはアイルランドに編入される道を選んだが、長年の確執は解けず、テロの続発によりアイルランドも混沌とした状態となってしまった。
英国分裂はアイルランドにとって、産業を呼び込み飛躍するチャンスだと思われていただけに、これは意外であった。
北海油田を有するスコットランドは、EUから歓迎を受けたが、大量の難民を引き受けさせられる事となり、国内で反難民派と親難民派が激しい対立を見せて、これが親英派と親EU派のスコットランド内部での勢力争いを生む事となる。
ウェールズは、ウェールズ単独での国家運営の難しさから、スコットランドとの連邦制を模索していたのだが、ウェールズの単独独立を目指す者、英王室に親近感を持つ者、EUと英国との橋渡しで利益を得ようとする者などが入り乱れ、一貫した動きが難しい状況が続いた。
さらにウェールズへのEUからの難民受け入れ枠の強制と、イングランドからのウェールズへの脱出者の激増により、急速に増えた異教徒への反感が沸騰しつつあった。
イングランドはEU域内での成長を一旦諦め、香港・シンガポールを介して東アジアや東南アジアでの生き残りにかける事を選択したが、米・中・印間の綱引きと牽制とに翻弄される事となる。
EU官僚は、「大西洋の壁政策」による英国の分裂と、その後の旧英国領の混乱ぶりを見ながら、「アシカ作戦」の成功を祝ったが、彼らの繁栄も長くは続かなかった。
EU域内国家間の貧富の格差が、より顕在化したためと、相変わらず増え続ける難民、そしてテロが発端だった。
仏国で難民問題に不寛容な右派政権が誕生すると、EUはそれを激しく非難したが、仏国内で再び大規模テロが発生したため、仏国は自国とベルギー・ルクセンブルグ間に「マジノ線」と呼ばれるフェンスを構築し、不法移民や外国人犯罪者をベルギー側に追放した。
EUは「この措置は仏国に重大な禍根を残す。」と警告したが、英国が脱落した今、仏国をEUから除名する事は出来ない。
行き場を無くした難民や、新たに到着した難民は、いきおい独国以北を目指したが、難民に寛容な「進歩的で民主的な」独政権も、遂に持たなくなった。
新たな独国政権が構築したのが、独国とオランダ・ルクセンブルグ間のフェンス「ジークフリード線」だった。
「マジノ線」と「ジークフリード線」に挟み込まれたベネルクス三国には難民が溢れ、以前から「テロリストの揺りかご」状態だったベルギーには、反社会的勢力が国家を脅かすまでの規模に成長しつつあった。
ベルギー警察は治安維持に躍起になったが、テロリストと同等程度の武器では、民主的な対応を採ろうとすれば、最早返り討ちに遭う危険を冒さなければならない始末だった。
斯くしてEU政府及びベルギー政府は、ベルギー国内でベルギー陸軍を動員した掃討作戦を計画するに至る。
しかし、市民や無辜の難民を巻き込む軍事作戦に二の足を踏んでいる最中に、その計画を知った反社会勢力側から先制攻撃を受け、ブリュッセルのEU本部にはISの旗がはためく事となってしまった。
IS制圧下のブリュッセルでは、非人道的行為が常態化し、遂に「ジークフリード線」と「マジノ線」を独仏機甲師団がブリュッセル解放のために越えて進撃する事となる。