自称・グレイトとんち坊主転生チート卓球さん
【その一】卓球さんと屏風の虎
卓球さんは前世の記憶を持つ転生チートである。
そんな自称、グレイトとんち坊主である卓球さんの噂を聞きつけて卓球さんはSHOUGUN様に呼び出されたのだ。
卓球さんを招きいれたSHOGUN様はとんち披露を申しつけその場に虎の描かれた屏風を運び込んだ。
「卓球よ。屏風の虎を退治せよ。」
卓球さん少し考え込むとSHOUGUN様にこう言いました。
「しかし室内でよろしいのですか?何か若干虎が既に出掛かっているのですが。」
何を言っているのかと屏風を見れば屏風の中の虎が蠢きよく見れば爪の先が絵から飛び出し今にも屏風を破らんばかりではないか!
「何と面妖な!卓球!これはそちの仕業か!?」
卓球答える。
「上様、屏風が運ばれてきた時より既に動いておりました。」
こうなればもうとんちどころでは無い。
慌てて庭に屏風を運び出し城中から武装した者達が屏風の周りを囲い込む。
立ち木が折れるような茶碗が割れるような音を響かせながら爪の先だけだった手が出、頭を出し始めた。
「ではこの虎を私のとんちでぶちのめして御覧にいれましょう。」
ことこの状況においてまるで慌てず襷を掛けた卓球が構える。
「事此処においてその威風天晴れ。しかしもののふの頂にいる剣豪☆SHOUGUNなればせめてワシの助太刀は受け入れよ。」
「ふむ。ありがたく。」
そうこういってるうちに屏風から出たるはあまりにも面妖なものだった。
身の丈8尺虎の頭に虎の四肢。しかしながら黒襦袢人の体を持った異形の者。
ようはでっかいタイガーマ○ク。
卓球さんとSHOUGUNの戦いが今始まる!
勝負結果。SHOUGUNが刀で牽制しつつの卓球さんのシャイニング・ウィザードからのフランケンシュタイナーで卓球さん組みの勝利。
【その2】このはしわたるべからず
今日は卓球さんなじみの商家の吉凶屋に呼ばれていた。
ところが店の前に掛かっている橋のそばにこんな立て札が。
『このはしわたるべからず』
卓球さん思った。
(ふむ、どうしたものか。この橋を渡らねば吉凶屋を待たせてしまうな。しかし『このはしわたるべかざる』か。綺麗そうに見えて痛んでおるのだな。わざわざ忠告に立て札まで用意するとはなんとも感心なものよ。)
根は善人な卓球さん、とんちとか転生とかチートとか前世の記憶とかガン無視して立て札を素直に受け取り感心する。
橋の向こうでは吉凶屋の大旦那が自称とはいえとんち坊主を名乗る卓球さんがいかにするか様子を見ていた。
そこで卓球さん橋の横に移動するとなんと助走もつけずに飛び上がった!
例え助走をつけたとしても飛び越えられぬような川を尋常ならざる勢いで滑空する卓球さん。
されども半分を過ぎた辺りで失速。
このままでは三分の一ほど距離が足りない!川に落ちる!
「二段ジャンプ」
卓球さん空を蹴る。
体はもう一度跳ね上がり対岸に優々と着地する。
「御仏の道とはありがたいものですな。おや吉凶屋さん、自ら出迎えていただけるとはありがたいですな。」
驚愕して動けない大旦那をよそに店に歩き出す卓球さんでした。
【その3】前世の記憶
皆様お忘れかもしれないが卓球さんは前世の記憶を持つ転生者である。
卓球さん一応仏道に帰依する身であるからこれが輪廻というものなのかと過去の記憶に思いをはせる。
それは坊主頭でないかつてあった自分の姿。
モヒカン頭に肩パッド。
サングラスをして愛車は四輪駆動の屋根無し自動車と何処の世紀末雑魚だと言う風貌の自分を。
職業はWEB系IT企業の中堅プログラマー。
自由な社風が有名です。
映画の中で滅んだ実際には滅んでいない部族の髪型にし、自然とは何か経済とは何か生きる事とは何かと問うていたあの頃を思い出していた。
なれば今の眼に映る色眼鏡なしのこの風景が答えなのかと。
しかし転生チートのチート部分がまだでない。
【その4】お吸い物の蓋
屏風の虎の件で御馳走に呼ばれた卓球さん。
上様と対面して座る御付の方、卓球さん、虎。
ひとしきり話が弾んだ後で上様一言。
「では卓球、吸い物の蓋を取らずに食べてみよ。」
「では上様冷めてしまいましたゆえ蓋を取らずに暖めなおしていただけますか?」
おお、卓球さん始めてとんち返しらしい事をした。
「あ、自分は猫舌なんでそのままでいいです。」
お前喋れたのか虎。
「うむ、しばし待たれよ。」
上様お碗を下げさせると音が聞こえてきた。
『チン!』
上様この野郎電子レンジ使いやがった。
技術水準どうなってるんだ。
「お手数をおかけしてかたじけなく。」
卓球さん熱々のお碗を前にひるむことなくチートを発動する。
やっとこさのチート発動である。
両の手でお碗を持つと卓球さんの手から白い糸のような何かが生えてきてお碗に突き進む。
なにこれきもいこのちーときもい。
ごっきゅんごっきゅん喉をならすような音がしたかと思うと
卓球さん一言。
「おいしゅうございました」
「たしかに旨いっすね」
黙れ虎。
器を確認すると確かに空で蓋にも器にも穴は開いていない。
「時に卓球。その方狐狸妖怪の類ではあるまいな」
眼光するどく問いただす上様。
「和尚様がお知り合いの山伏や神主の方々様と相談した結果その類では無いとおっしゃっておりました。」
「そうか」
しかしではなんなのかという答えはでない。