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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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「あとは身の回りの日用品かな」

「さっきの店見てる間に探しておいた。あそこなんてどうだ?」

 レオが指さす方を見ると、かわいらしい店構えの雑貨屋さんがあった。


「化粧品もあるってよ」

「ありがとう」

(こんなごつい(ひと)がお店の人に聞いてくれたのか想像すると、ちょっとおもしろい)


「あらー。さっきの。なんだ、本当に女の子連れて来たわ」

 店に入るなり背の高いオネエさんな美人がやってきて、レオに絡まる。


「俺のじゃない」

 レオは抱き着かれてぶすっとしている。


「いいのよ。美しくなるのに性別なんて関係ないわよ!」

 リナはオネエさんの勢いに圧倒される。


「さ。本命はアナタのものよね」

 オネエさんに肩を掴まれて、リナは店の中に連れていかれた。素早い!


「お探しのものがあればいいんだけどね」

 お店の棚には高級そうな瓶がずらりと並んでる。

(もしかしなくても、結構いいお値段のお店なのでは?)


「リナ。遠慮するな。好きなものを買え」

「まー。いい男ね!お嬢さんお名前は?」

「リナと言います」

「私はアリアナよ。よろしくね。急に引っ越してきて何も持ってないって聞いたわ」

 レオはそういう設定でいてくれたんだ。


「そうなんです。こっちは日差しがきついので乾燥して」

 秋だった季節が夏になっているのだから、日焼け止めなんかがあるとありがたい。

 アリアナはリナを鏡の前に座らせた。


「色が白いものね。化粧水、乳液、美容液は必須として。日中は日焼け止めもないと真っ赤になりそうね」

 リナの頬にちょんちょんと触りながら、髪を切るときにつけるようなケープを服にかけてくれた。


「そうなんです。日焼けしやすくて」

「わかるわ。日焼けに弱い種族は結構いるのよ」

 リナの顔をささっとふき取り、化粧水と乳液をこれまたササッと塗ってくれた。


「香りとかどう?気にならない?」

「いい香りです」

 スッとしたハーブの香り。べたべたしてないテクスチャー。軽いものなんだろうけどリナの顔色がさっと明るくなった。


「うん。肌にも合ってる。このシリーズがいいと思うわよ」

「ありがとうございます」

 あんな少ししか触ってないのに合うものを探せるとは、アリアナさんはプロだな、とリナは嬉しくなった。


「日焼け止めはこれね。これは朝スプレーすれば石鹸で洗わない限り夜までもつわよ。もちろん体にも使えるわ」

「なんて便利な!素晴らしいですね!」

「ほほほ!素直な子ね」

 アリアナにぐりぐりと頭を撫でられる。


 日焼け止めを塗り直さなくてもいいなんて、便利に決まってる。

 それからアリアナは鏡の前の化粧品をさっと準備して、リナに化粧を施す。


「これは肌をきれいに見せる粉よ」

 ファンデーションを塗ってくれるようだ。

「あまりお化粧は……」

「あら?あの男とデートしないの?」

「デート…」

 ひそひそと耳打ちされる。


「そんな関係では…」

「まあ。色々買わせるだけできれいになったところを見せないなんて野暮よ。今日はお化粧品は買わなくてもいいから、ちょっと試してみなさいな」

「はぁ…」

「さ。目を閉じて」

 リナは化粧をあまりしない。仕事や人に会うときには流石にしていたが、面倒で簡単にしかしたことがない。口紅を塗って終わりの時もあった。デートなんて想定で化粧をしたことがないのだ。


「目を開けていいわよ」

 ゆっくり目を開けると。

「完成よー!」

 童顔だと言われる顔も、少し大人っぽく(大人だけど!)なってる。

 透明感が増してるというか、ちょっと、なんだか、見慣れない顔に恥ずかしくなってくる。


「お、おお。きれいだな」

 アリアナの声に呼ばれてやってきたレオが、びっくりした顔をして一緒に鏡を覗き込んでる。

 髪もまとめてもらって、アップスタイルにするともっとぐっと大人っぽくなった。


「素材がいいからね。ハーフエルフかと思ったわ」

 ほほほっとアリアナが笑う。

 この世界でも美人の代名詞なんだそうだ。エルフ。いるんだ。


「ねえ、相談なんだけど、この子の顔。時々貸してくれない?お客様に新しい化粧品を売るときにこの子をモデルに使いたいわ!化粧映えするんだもん」

 アリアナは「いいこと思いついた!」といった感じだったが、レオはぶすっとした顔を崩さない。


「だめだ。リナは貸さない」

「独占欲ねぇ。まあ、考えといてよ」

 ぽんぽんとレオの肩を叩く。


 お買い上げ。基礎化粧品一式と、アリアナが使ったメイク一式。ブラシや鏡といった日用品もそろえてもらった。


 メイク一式の方は断りたがったが、「たまにそれで、飯でも食いに行ってほしい」とレオに頼まれたら、断り切れなかったのだ。


「リナ」

 レオに呼び止められて、髪を止めていたところにぱちんと何かをつけてもらった。


「似合うよ」

 鏡を見ると、色素の薄いリナの髪によく似合う黒のリボンの髪留め。


「ありがとう」

 化粧品を選んでいる間に、レオが自分で選んだんだという。

 強そうな男の人が、女性客がたくさんいる中で、自分のためにあれでもない、これでもないと考えて選んでくれたんだと思うと、リナは胸がいっぱいになった。


「ありがとう、レオ」

「おう。気にするな」

 店を出ていく二人を見つめるアリアナは、「独占欲強いわね~」とひとりごちるのだった。

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