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「あれ?いつの間にこどもこさえたの?」

「違う!」

 かわいらしいお店に入るなり、子供の声で話しかけられた。


「リナ。靴屋のピックだ」

「こんにちは」

「やあ、リナ。君も小人族?」

 ちょこんと目の前にやってきたのはリナよりも背が小さい少年。

 栗色の巻き毛とまん丸い瞳がかわいらしい。

 クッションの置いてあるソファに座らされて、目線が合うのでよほど小さいのだろう。お互いに。


「いえ、ごく普通の人間です」

「人間!!へえ!幼体じゃないのにこんなに小さいなんて!」

 キラキラとした顔で喜ぶ少年は、小人族なのだという。

 見た目は12,3歳くらいに見えるが、もうこの靴屋をやってウン10年の大ベテランらしい。


「小人の靴屋さん……」

 心にぐっとくるフレーズだ。


「リナの靴を、楽で長持ちする素材で3足くらい作ってくれ」

「わかった。旅用のロングとショートブーツと普段用かな?」

「それでいい」

「色は?」

 ピックがリナを向いて聞いてくれたので、慌てて答える。

「全部黒で!」

「ふうん。レオ、愛されてるね」

 ピックがニコッと笑う。


「リナは黒が好きなんだ」

 ちょっと得意げなレオ。

 確かに服も黒を中心に選んだが。

「?」

 そのやり取りが理解できないリナを置き去りに、ピックはリナの足を型取りしていく。


「へー。この靴めずらしいくらいヒールが細いね。こういうのが好きなの?」

 元々はいていた靴をじろじろ見ながらピックが靴のデザインを描いてくれる。


「いいえ。仕事だからしょうがなく」

「細いヒールにピッタリとしたスカート。リナの雇い主は変な趣味だ」

 はっきりと言うピックにクスクス笑ってしまう。


 確かに会社の服装規定は変だった。

 リナの天然の薄茶色の髪も、何度も先輩に染めるように「遠回しなお説教」を食らっていた。

 上司が認めてくれていたのに目立つのはダメらしい。

 その女の人は自分以外の目立つものがお嫌いなのだ。


 無理やりみんなを同じにしてしまう色と形の指定。

 異世界の人からしたら、制服があるのは大きなお屋敷に雇われるメイドくらいのものらしい。

 それでもそんなに厳格なのはお城くらいらしいけれど。


「背が小さいから、ちょっとでも大きく見せるように高い靴はいてたんだけどね」

「?」

 今度はピックも不思議そうな顔をする。

 小人族は小さいことに誇りを持っているので、特に大きく見せたいという欲求がないのだという。


「舐められないようにだろうな」

「そういうことならわからなくもないよ。でもレオが面倒見るなら舐められることなんて気にしなくていいよ」

「?そうなの?」

「そりゃそうだよ。なにしろ冒険者ギルドでもトップだからね。レオにケンカ売る奴なんていないよ。リナはいい保護者を見つけたね」

「そうなんだ……」

 棚に飾ってある靴を色々見ているレオをちらりと見た。


 冒険者ギルドのトップがどれくらい強くて、どらくらい稼いでいるのかはわからないが、こうやって急に現れたリナをぽんと養おうとしてくれるくらいにはいろいろと余裕があるんだろう。

(靴が既製品じゃなくて、全部オーダーメイドなのも驚いたけど)


 リナはピックが描いたデザイン画から3足の靴を選んで作ってもらうことに決めた。

 ヒールはしっかりと太く短く、石畳も歩きやすいものだ。


「ピック。どれくらいで出来る?」

「そうだねー。ちょうど黒の素材があるから、6日もらえたら余裕だね」

「そうか。リナ。それまでの間はこれを履くか?」

 棚からそっとシンプルなサンダルを出してきて、リナの足元に置いてくれる。


 歩きやすそうな黒のサンダルは、ちょっとかかとのある華奢なタイプ。

 でも石畳は歩きやすそうだ。


「レオが女の子のもの選ぶなんてめっずらしい~」

 ピックがかかとのストラップを調節してリナに履かせてくれる。


「似合うよ、リナ」

「ありがとう」

 穏やかな顔でレオが微笑む。

 リナにも気に入るものだったので、選んでもらったサンダルをそのまま履いていくことになった。


「じゃあ、リナ。6日たったらこの札持って来て」

「ありがとう、ピック。また来るね」

 札を受け取って、店を出た。

 拷問ヒールはピックが欲しそうにしてたのであげることにした。


「次は何をみたい?」

「下着」

「し、たぎ…」

 レオの質問に即答したら、レオはリナを抱き上げて早歩きで一軒の店に連れて行き、店に押し込めると、店長に「リナが気に入ったものは全部買うから」と言って店を出てしまった。


 流石に下着を買うところを店で見て待っててもらうわけにはいかないので、これでよかったのかもしれない。


 リナは採寸されまくって、とにかく今街で流行っているというデザインのものをあれこれ着せ付けられて、一そろいの物を買うことが出来た。

(生理用品なんかのことが聞けたのも収穫だわ)


 カランっとベルを鳴らしてお店を出ると、レオがドアの近くで待っていてくれた。


「遠慮せず買ったか?」

「もちろん!すっごくセクシーよ」

「おいっ」

「嘘よ。フツーの」

 リナの感覚からすると、フツーとは言い難いがこれがフツーと言われたらしょうがない。

 紐のパンツはどの種族でも履けるので「一番フツー」なのらしい。


「レオ。いつもの宿でしょ?商品は届けておくわ」

 店長が出てきてくれたのでレオは代金を支払って店を後にした。


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