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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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7/30

 

「リナ。街に行ってみないか?」

 話しが一通り終わって、ハーブティーを飲み切ったところでレオが提案した。


「え?いいの?」

「もちろん。着替えがいるだろう?」


 リナの服装はビジネススーツのまま。靴も舗装されていないところでは地獄でしかないヒール。

 下着も替えて、風呂に入りたいのが本音である。


「あの、お金、ないです……」

 仕事をするようになってから、大きな財布はほとんど持ち歩かずにスマホの電子決済で日々の支払いを済ませていたリナ。小銭入れの小さなお財布はもっているが、もちろん世界の違うここで日本円が使えるとは思えない。


 しょんぼりとしたリナを慰めるようにレオが頭に手を置いてきた。

「保護者がいるんだから、そんなこと心配すんなよ」

「保護者?」

「ああ。俺はリナの保護者だよ」

「あの、私、成人済みって言ったよね?」

 恨みがましい声で言ってみるが、レオは全く気にしていない。


「身元引受人がいないと、仕事もできないぞ?」

「え!?」

「この街はまだ緩いが、地上は割と人と人のつながりを大事にしている。俺みたいな冒険者でも、顔は広いからな。仕事したいなら選択肢が広がる。頼れよ」

 ふっと笑うレオは少し眉間のしわが和らいで、優しい顔をしている。


(こんなにもこの人を頼っていいものか)

 うーんと腕を組んで悩む。


 今のところ、知識も住まいも食事も頼ってしまっている。

 衣食住のほとんどだ。

 レオが本当に親切心だけでやっているのかはわからない。


 わからないが、頼る人がいない。

 どうせあのまま、あそこにいれば天使とやらが来て攫われていた。


 天使の話が本当だとして、だが。

 通話のときの軽薄そうな軽い口調は気に入らなかった。


 そしてリナは吹っ切れた。


「まあいっか」

 リナの口癖だ。


「何がまあいいんだ?」

「うん。考えてもしょうがないことは考えない。レオのお世話になります。お金は働くようになったら返すから、貸してください」

「返さなくてもいいんだぞ?」

「まあ、私の精神的な負担を考えて、借りてると思わせといてよ。何でもかんでも買ってもらうの、気が引けちゃう」

「ふうん。気にしなくてもいいが、着替えとか日用品とか女は色々いるんだろ?買いに行こう」

「ありがとう」

 リナが立ち上がると、レオはさっと手をつなぐ。


「あの。本当に私のこと子供と思ってないよね?」

「ああ」

 返事はあるが、手はつないだままだった。



「マリーナ。女の買い物ってどの通りに行けばいい?」

「あら、リナちゃんのお買い物ならここから西の通りがいいわよ。服も化粧品も売ってるから」

 2階で客室の掃除をしていたマリーナに尋ねると、すぐに返答があった。


「助かる」

「リナちゃん、レオったらお金持ちだから何でも買ってもらいなさい。遠慮しちゃだめよ」

「いやぁ……」

「ほんとほんと。全然お金使わずにため込んでばっかりなんだから。経済を回さないとね」

 ほほほっと笑ってマリーナはシーツを手早く回収して1階に降りて行った。


 宿を出てマリーナに教えてもらった西の通りに向かう。

「レオって、仕事何してるの?」

「何でも屋だな。冒険者ギルドで護衛やら魔物退治してるよ」

「強いの?」

「それなりだな」

 太い腕や大きな手。背も高いし腰に差した革鞘の剣も使い込まれているように見える。

 本当に「それなり」に強いんだろう。


「リナ、ここの服はどうだ?」

「どうみてもお姫様みたいな服だね」

 ウィンドーには青のドレスがきらびやかな照明とともに誇らしげに飾られている。

 どこの舞踏会に行くんだ。


「リナに似合うと思う」

「だめだめ。もっと動きやすくていいの。古着屋さんとかないの?」

「古着屋は……」

「ないの?」

「ある…」

 すごく不服そうに答えるレオ。


「じゃあそこに行くわよ」

 渋々といった調子で連れてきてもらった古着屋は、非常に状態の良いものが多かった。

 街の人はびっくりするくらい背の高い人が多かった。

 子供服もすぐサイズアウトするんだろう。あまり着ていないように見えるものもワゴンセールになっている。


「パンツスタイルがいいからこれと、これ。トップスは黒のこれでいいわ。あとは着まわすのに3着もあればいいかな」

「早いな」

「うん。派手じゃなければいいの。着やすくて、長持ちしそうなのがいい」

 包んでもらっている間にそんな会話をした。


「じゃあ、長持ちしそうで履きやすい靴を買いに行こう」

「靴!嬉しい!」

 やっとこの拷問ヒールから逃げられるかと思うと嬉しくってにこにこしてしまうリナ。

 街の中は石畳の道が整備されているが、コンクリートの様に平らなわけではない。ごつごつしていて歩きにくかったのだ。

 そんなリナの喜ぶ顔を見て、レオはリナを抱き上げた。


「え?え?なんで?私、歩けるよ?」

「そんなにつらい靴を履いていると思っていなかった。すまない」

 リナを片手で抱き上げて、片手で靴を脱がせるレオ。完全にお父さんである。


「過保護だねぇ」

「ああ。リナにはそうなるようだ」

 からかうために言ったのに、全然気にしないどころか甘い声で返事されて、照れてしまったのはリナの方だった。


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