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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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「どうだ?果物なら食べられるか?」

 案の定、体調を崩したリナ。


 食欲がわかないし、熱っぽいし、頭もお腹も痛い。

 こんなに症状が重く出るのは久々だ。

 環境が変わったやら、体力的にやら、理由は沢山あるかもしれないが、リナは時々こんな風に症状が重くなることがあるのであまり気にしていない。

 気にしているのはレオだ。


 今も宿のベッドにもぐりこんで丸まって眠っているリナに付き添い、ちょっと目を覚ましたので声をかけてくれた。

「うーん。吐きそう」

「可愛そうに。普段からこんなにつらいのか?暖かいミルクだけでもどうだ?」

 背中を押して起こしてもらって、ハチミツ入りの甘くしたホットミルクを飲ませてもらう。


「美味しい」

「よかったな」


 レオに買ってもらった丸薬の効果は、とろとろとした眠りが続くので痛みは鈍くなっている。

「ねみゅぃ」

「ああ。寝てろ」

 背中を向けるリナにくっついて、お腹に手を回してくれる。

 レオの手が暖かい。

 とろとろした眠りの中で、リナは雨の音を聞いた気がした。



 この世界に来て、現実問題、自分の体調が悪くなってやっと考えたことがある。

 いまは痛み止めは効いてるが、熱が出たり、風邪を引いたりすることもあるだろう。

 こうやって女性の体調不良もそうだ。

 そもそも病を治すだけの医療体制というのはあるのだろうか。


 薬があればいい。

 外傷などの表面的なものは魔法で治るかもしれない。

 でも、高度な医療に慣れている日本人では考えられないような、なんてことない簡単な病で死ぬかもしれないのだ。

 知らないことは怖い。

 リナはこの世界について、きちんと知って生きなければならないと思った。


 次の日からは雨だった。

 どんよりとした雲は雪とも雨ともいえそうな(みぞれ)を降らせている。


「リナ?」

「おはよー、レオ」

「おはよう。体調はどうだ?」

 横になったまま優しく聞いてくれる。


「ありがと。だいぶマシになったみたい。顔洗ってくるね」

「ああ。気を付けて」

 立った途端にふらついた。


「飯も食ってないし、丸1日ほとんど寝てた。ふらつくのも当然だ」

 大事そうに抱き上げて洗面所に連れて行ってくれた。


「丸一日?」

「そうだ。ちょうど天候も悪い。リナの体は冷やすのは良くないんだろう?体調が万全になるまでここで過ごそう」

「冬眠しちゃってたのか。どうりでおなか減ったと思った」

 リナの食欲が戻ったと聞いて、レオはすぐに食堂へ行って、食べ物をもらってきた。

 オートミールのおかゆに、たまごが入ったものだ。

 それを一人前平らげて、まだ食べたそうだったので、レオはリンゴを剥いて食べさせる。


「レオのカバン、何でも出てくるね」

「俺のカバンは俺の影とつながってる。何でも出てくるし、なんでも収納できる。生き物以外は」

「生き物はだめなの?」

「俺の影は生き物が入れないからな」

「…私、入ったけど」

「リナは入れるよ」

 フッと笑われる。

(どこに笑いどころがあったんだろう?)


「前に俺と魔力の相性が合うって言ってただろ?だから確信があった。俺も感じてる。リナとは相性がいい。俺の魔力はリナを攻撃しない。だから大丈夫だ」

 リナはちょっと考えてから、それは「そういうお誘いの言葉」だって言われたのを思い出して赤くなる。


「今のは()()()じゃないからな」

「レオ、私のことからかってる?」

「いや、そういうことはしないよ」

「だって…」

「だって?」

「レオ、ずるい…」

「ずるい?」

 レオはリナの言葉を待つ。

 リナは言葉を引き出されてるような気がする。


「リナ。俺は待つ。リナからの言葉を待ってる」

 両手をつながれる。


「リナがいいというとき以外はしない」

「レオ。ずるい」

「嫌じゃなかったんだろ?」

(馬車での一言、聞こえてたんだ)


「嫌じゃ、なかったんだろ?」

 もう一度聞かれた。


「リナ?」

 黙ってうつむいたので、レオが覗き込むように名前を呼んだ。


「レオにとって私って、娘みたいなもんじゃないの?」

「そうだな」

「あの、これ。どういう状況なの?」

「俺は――」


 バシャーーーーン


 音が鳴る前に感づいたレオは素早くリナを背に庇い、剣を抜いて身構えた。

 窓ガラスに何かが突っ込んできて、部屋に飛び込んできたのだ。


「きゃああ!」

 硝子の破片とリナの悲鳴が響く。


 ざん!!

 レオの剣が横凪一線。

 脚から突っ込んできた侵入者の胴体を真っ二つにした。


「リナ。目をつむったままで。そこにしゃがんでいろ」

「う、うん…」

 しゃがむと周りに毛皮の感触がする。あの影犬だろうか。

 ガタガタ震えていると、べろりと顔を舐められた。

 暖かい毛皮がぐるりと周りを囲み、1匹はリナの首元を守る。

 狼は自分の番の首を守ると聞いたことがある。同じような習性があるんだろう。


「悪魔。聖女を…」

 ドン!

 侵入者がしゃべったが、レオが氷の刃で侵入者の心臓を貫いた。

 氷魔法はレオの一番の得意だ。氷帝レオナルドと呼ばれる所以である。


「リナ。終わった。もう大丈夫だ」

 慌てた宿の人たちが騒いでいる声もする。


「大丈夫ですか?!」

 ドアをノックされるがリナは腰が抜けて立てない。


「大丈夫だ。天使の急襲だ。片づけた」

「天使!?」

 ドアの向こうから驚いた宿の主の声がする。


「自警団を呼んでくれ」

「わかりました!!」

 どたばたと走っていく音が聞こえて、リナはレオに抱き上げられた。


「リナ。大丈夫だ。絶対にリナを渡さないから」

「あ、りがと…」

 リナはくてんとレオの腕の中で気を失った。

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