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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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 旅は順調だった。

 初日に襲われた以外、グリッドが頻繁に欠伸するくらいのんびりした道行だ。


 キャンプをするのも慣れてきたが、そろそろお風呂にも入りたい3日目。

 定期的にクリーンをかけてもらって、リナは髪もサラサラだし体もべたべたしていない。それでも入りたいのがお風呂である。


「リナ。次の町は小さいからな。教会もない町だ。ゆっくりと宿に泊まろう」

「ほんと?」

 レオはにこりと笑ってくれる。


「季節も秋に変わってきた。服も買う必要があるし、食料の調達もいる。1日ゆっくりしてもいいだろう」

「じゃあ、みんなとはここでお別れなの?」

「そうだな」


 せっかく慣れてきた乗合馬車だったが、途中の町で2人、3人と目的地に着いて下車し、最初の町から残っているのはリナたちを入れて5人。新しく乗ってきた人が2人。

 随分と馬車の中もゆったりとしたものだ。


 あの駆け落ちしてきたと思われる男女は、2日目の夜にグリッドの紹介でギルドでいい護衛を雇えたので、2人で馬を借りて先を急いで行ってしまった。

 最北端を目指すそうだが、うまく逃げられるといいなとリナは自分のことの様に応援している。


「なんだ。お前たちも下車するのか」

「リナさんがいなくなるのはつまらないですね」

 駅について荷物を下ろしていたら、グリッドとラギスが残念そうに近づいてきた。


「リナもリナの魔力も渡さない」

「どうしてレオナルドさんが断るんですか~」

 ラギスがぷくっと膨れる。


「養い親だからだ」

「リナさんは成人しているんですよね?」

「魔族としてはまだ半人前以下だ」

「リナさん。このお父さんから独り立ちしても大丈夫ですよ!僕と一緒に魔法省で働きましょう!」

 リナの手を握ろうとして近づいたが、さっと抱き上げて避けられてしまう。


「リナさん!その不思議で素敵な魔法を解明しましょう!」

 魔法師が護衛としてついていたのはよかったが、才能あるラギスがついてきたことによって、リナの魔力が少しばかり変わってることがすぐにばれてしまった。


「ラギス。お前、魔法のことになったら見境なくなる癖なんとかしろ。レオナルドがイラついてる」

 ラギスは自分の周りに結界を張ることが癖のようになっているので気づかなかったが、グリッドに言われてよく見れば、レオの周りに魔力が帯電してちりちりし始めている。


「ああ。惜しい。こんな逸材を……」

 ラギスはがっくりと首を落として残念そうにリナを見る。


「アハハ…。まあ、機会があったらね…」

 リナも何と言っていいのかわからない。

 実験対象としてなのか。待遇が分からないのでちょっと怖い。


「じゃあね!みんな。また会いましょう!」

 リナは駅でレオと二人、去っていく馬車に向かって手を振った。


「さて、リナ。尻は痛くないか?」

「慣れちゃったから大丈夫よ」

 尻をトントンと叩きながら返事すると、ぷはっと笑われた。


「遠慮なんかするなよ」

 頭のてっぺんにキスされてヒールをかけてもらうと、すっと全身が楽になる。

「甘やかすねぇ」

「お姫様だからな」

 二人は手をつないで歩きだす。


「まずは服だな。着替えを増やしたほうがいい」

「ほんと。結構洗濯キツキツだったわ」

「だから俺が乾かしてやるって……」

「頼めるわけないでしょ!!」

 洗った下着を乾かしてもらうのなんて、男の人に頼めるわけがない。

 今回は、乗客の女性に生活魔法が得意な人がいたので、礼を払って乾燥だけやってもらったのだ。


「というか、乾燥の魔法くらい十分出来そうな魔力量なんだがな…」

 魔力量は十分。勘も悪くない。エステでほぐして詰まりもなくなった。しかし、魔法が発動しないのだ。


「魔法使えないのかなぁ……」

「まあ、急に流すのだけできるようになったのも変なんだから、諦めずに練習してみよう」

「変って」

 あははっと笑うリナはかわいい。

 そして、気づいていないが、手をつなげばレオに魔力が流れ込んでくる。


 垂れ流しになっているわけではなく、さっき使った「ヒールの分だけ」ちょろりと流れてくるのだ。

 まるで使って減った分、補填するように流れてくる。


 魔法を使えば魔力は減る。

 そして、回復するには回復薬を飲む、もしくは体が回復するままに任せる。の二つの方法で回復させることが出来る。

 回復薬は、魔力を直接取り込んでいるわけではなく、魔力をため込む臓器を強制的に働かせて、回復スピードを上げているだけなのだ。

 凝縮された魔力を直接、取り込むことが出来れば便利なのだが、『誰にでも合う魔力』はない。

 もしも、直接魔力を流し込むような薬を作ってしまったら、誰もが使うのを躊躇するだろう。

 合わない魔力を馴染ませるのに、肉体的に相当、苦痛を伴うと思われる。


 それを、リナは自分の魔力を他人へ譲渡し、苦痛なく回復させることが出来るようなのだ。


(聖女、か)


 考えたくはないが、レオ以外の誰にでも合う魔力を、誰にでも譲渡できるとなれば、リナを欲しがる輩は増えるだろう。

 ラギスも変わった魔力だと言っていたが、核心には至っていなかった。

 徹底的に触らせないようにしていたからだ。


 リナの譲渡が無意識ならコントロールさせる方がいいし、人には秘密にした方がいい。

 まずはリナに魔法の練習と、簡単に譲渡しないようにさせないといけないだろう。


 服屋で楽しそうに服を選ぶリナを見て、少し眉間の皺を緩くするレオだった。


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