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「大丈夫か?リナ」

「ひ~~。お尻痛いしちょっと酔った」

 リナを担いで降ろしたレオが、顔を覗き込む。

 顔が青いのを確認して、屈んでおでこにキスをする。


「わ!お尻痛いのなくなった!」

ヒール(回復)だ」

「前も私の傷舐めて治したでしょ?舐めたりキスすると治るの?」

「いや?」

「え?」

「別に接触しなくてもできる」

「は?」

「したいからしてる」

「変態じゃん!」

 リナが叫んだ言葉に、レオはカラっと笑った。


(その顔ずるいんだよなぁ)

 リナはそれ以上何も言えなくなる。

(ひりひりしていたお尻は治ったし、気分も良くなったし、治療だと思っておこう。うん)


「レオ。ここどこ?」

「隣町だよ」

 レオに手を引かれて、カフェに連れていかれる。

 ここも女性客が多く、レオは目立つ。


「まだ腹減ってないか?」

「まだ朝ご飯が残ってるよ」

 ハハハと笑われる。


「じゃあ、ハーブティーでいいか?」

 フルーツの使われている甘いハーブティーを頼んでくれた。

 落ち着けば、さっきの来訪者の話になる。


「あれ、なんだったのかな?」

「ゲオルドの対応からすると私兵だろうな」

「しへい?」

「ああ。金持ちが個人的に雇ってる兵士だ」

「ああ。私兵。なんでレオを探しに来たのかな?」

「俺じゃなくて、リナだろうな」

「へ?」

「リナを探しに来たんだろう」

「あたし?なんで?悪いこと、してないと思うけど」

 異世界ならではの失敗はまだしてないはずだ。


「たぶんヴァイオレットの、パークレィ家の私兵だ」

「ヴァイオレットさん?あの紫の瞳でゴージャスな巻き毛の」

「そのヴァイオレットさんだな」

 ケンカを売ったのはレオのはずだ。リナが探される理由はない。


「私、関係なくない?元カノかなんか知らないけど」

「もとかの?」

「元彼女」

「ハハハ。いい言い方だな。じゃあリナが今の彼女か」

 冗談で言われただけなのに、真っ赤になってしまうリナ。


「なんかキャラ変わってない?」

「さあ。マリーナにも言われたが、自分じゃよくわからんな」

 ハーブティーを一口飲むレオ。様になってる。


「ヴァイオレットよりリナを優先したので怒りの矛先がそっちに行ったんじゃないか?」

「行ったんじゃないか?じゃないわよ~。女の人の嫉妬はうまく散らさないと」

 ベリーの香りのハーブティーが乾いた喉にしみ込んでくる。

 どうやら気づいてなかったが、喉も乾いていたようだ。


 レオに言わせると、「口で説明しただけ穏便に済ませた気持ちだった」とのこと。


 前回は、1人で食事しているときにやって来て、レオのテーブルに勝手に座ろうとしたので、椅子を蹴って倒して座らせなかったらしい。無言で。

「こっわ」

「今回は穏便に説明したつもりだった」


 アレを穏便と言えるレオも怖いし、前回そんなことをされてもまた話しかけるヴァイオレットも怖い。

「異世界あるあるなのかなぁ?」

「いや、そうそうないだろう」

「ないのか……」

 フォローのつもりだったがないのらしい。


「俺が誰かと一緒にいるのは珍しいからなぁ」

「それで私と買い物しまくってたら、目立つよねぇ……」

(ああ。お茶がおいしい)

 もはや現実逃避するしかない。


「私をどうするつもりなんだろうねぇ」

「雇い入れるつもりじゃないか?」

「ヴァイオレットさんのお家に?」

「あいつの家はあの街では権力者だ。侍女か何かにしてやるというつもりなのかもしれない」

「それでレオと縁をつなごうってことかな?」

「まあ、考えられる線ではあるな」


 リナは前の世界でよく合コンに誘われたのを思い出した。

「遠野さんが来てくれたら〇〇君も参加するって言うから~」

 本当は来てほしくないのに誘う人のセリフはややこしい。真意を見誤るととんでもないことになる。

(どこでも女の人ってこんなもんなのかもしれないなぁ)

 そういう場合、行くだけ行って、乾杯して適度なところでしょうもない理由を告げて、ささっと帰っていた。

 一番女の人に恨まれない退場の仕方だ。


(適度にレオとは関係ないとか、親戚だとか言って逃げるのもありだけど。納得してくれなさそう)

「はあ」

「どうした?」

 リナのため息に、レオが心配そうな顔をする。


「ピックに作ってもらってる靴、取にいけるのかなぁって思って」

「行けるぞ?何が心配だ?」

「人1人捕まえるのに私兵向ける人、まともじゃないわよ。レオに何かされるのもいやよ」

 レオがフッと笑う。


「なんだ。俺のことも心配してくれるのか」

「そりゃするわよ」

「大丈夫だ。リナの思ってるような悪いことにはならねえよ」

「そう?」

 最悪、このままこの街から、旅に出るようなことになるのじゃないかと思った。


「あの『世界は自分を中心に回ってる』と思ってるお嬢さんをどうにかするなんて、何でもないんだよ。本当は」

「そうなの?」

「いくら私兵に守られてようと、な」

 物騒な顔でいう。


 リナは何をするのか聞いた方がいいのか、聞かないほうがいいのかちょっと悩んで聞かないことにした。

 知らないほうがいいことってあるよね!



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