表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/27

12

 

「リナちゃんお帰り」

「ただいま帰りました!」

 マリーナが酒場で夜営業の仕込みをしながら挨拶をしてくれる。


「リナちゃん。お買い物したもの届いてるわよ。着替えがあるならお風呂どう?今なら大浴場が空いてるわよ」

「わあ!嬉しい!お風呂入りたいです!」

 リナの目が爛々と輝く。


 この世界に来て1日半。

 おふろに入ってきれいにして着替えたい。

 大浴場は天然温泉だという。


「リナ。リナ。風呂は部屋のシャワーでどうだ?」

 困った顔のレオがリナに語り掛ける。

 確かに部屋にはシャワーが備え付けてある。


「どうして?大きなお風呂、あるんでしょ?」

「いや、リナが溺れたら――」

「溺れるかーい!!」


 どれだけ過保護なのかと、横で聞いてたマリーナも呆れる。

「アンタ、キャラ変わってない?」

「いや、俺の目が届かないところは心配で……」

 マリーナにも真剣な顔で訴える。


「レオ。私、泳げるから大丈夫だよ」

「ホントか?」

「うん。学校で水泳の、泳ぐ練習する時間があって。だから大丈夫だよ。安心して」

 子どものうちは何年もかけて泳ぐ練習をするんだと聞いて、やっと安心したレオ。


「じゃあ、お風呂の準備してきまーす」

 簡単にこちらの世界のおふろの使い方をマリーナに聞いたが、特に大きく違いはなさそう。水道の使い方がままならないリナだが、この宿のおふろは源泉かけ流し!湯船にどんどん湧いてくるので気にしなくていいとのことだった。

 

(おふろ大好き民族、日本人の血が騒ぐぜ)

 部屋に戻って下着と着替えを準備して、そそくさと浴場に向かう。


「リナ。ここで待っているから何かあれば大声を――」

「だーかーらー、安心してよ。ゆっくり入ってくるから、待つの飽きたら部屋に戻ってていいよ~」

 リナは温泉への期待でもうレオのことを考えられない。後ろ手に手を振った。



 温泉は浴室着がなく全裸で入れる。

 リナはすぽーんと服を脱いで浴室に向かう。

 岩が組み合わさった浴室は、残念ながら屋根が付いているので露天風呂ではなかったが、予想よりも大きく、窓も曇りガラスだが多いので光が差し込み閉塞感がない。


 石鹸とタオルは日用品売り場で買ってもらったハーブの香りがするものだ。

 リナはこのハーブの香りが気に入った。

 強すぎない香りがいいのだ。


 体をガシガシと洗って汚れを落とす。

 髪も洗ったが、シャンプーだけでもつるりとする。割と毛の細いリナの髪は絡まりやすいが、このシャンプーだと扱いやすい。選んでくれたアリアナさんには感謝である。


 トリートメントはお湯に溶いて使うように聞いたので、桶にお湯をためてトリートメントを溶かす。

 溶けたらお湯に髪をつけて、ブラシを通す。


「ふおおおおおお!」

 ちゅるりんとした手触り。

 これが乾かした後も続くのなら、一生手放せないアイテムになりそうだ。


 髪も体もきれいになったら、タオルで髪が落ちないように包んで、さっそく温泉に・・・。


「あ~~~~~~~~~~~~」


 声を出さずにはいられない。

 体を包んでいた疲労が溶けていくようだ。


 レオが心配した通り、背の高いこの世界の人に合わせて浴槽はかなり深くなっている。

 それがいい!!

 (しっかり肩まで浸かれるこの深さ。たまらん)


 誰もいないのを確認して、ちょぼちょぼ泳いでみる。


 (ううーん。たまらん)


 ニヨニヨしながら泳いでいたが、カラカラっと入り口の音がしたので、リナは泳ぐのをやめてそちらを見た。


「おお。ほんとに子供が一人で入ってる」

 180センチはありそうなダイナマイトボディの赤毛の女性が入ってきて、リナを見て笑った。

 全身が筋肉質で、褐色の肌が美しい。


「あたしはギャリー。風呂の前でレオナルドに会って、頼まれたんだよ。リナだろ?」

「はい。リナです。一応大人です」

「魔力操作ができないって聞いたぞ?」

「そうなんです……」

 この世界では、子供も魔力操作は自分でできる。それこそトイレトレーニングが終わるころにはできているのだ。


「魔力操作ができないなんて難儀だな。シャワー使えたか?」

「いえ。冷水が出せればよかったんですけど」

「冷水でいいのか?だしてやるからこっち来いよ」

 ギャリーが高い位置にあったシャワーを取って、リナに水をかけた。


「きゃあ~。きもちいい!!」

「そっか。よかったな」

 ギャリーも嬉しそうに笑う。


 ギャリーは鬼人(きじん)という種族で、髪の中に角があるらしい。女性は髪を長くしているのでわかりにくいが、だいたい男女ともに体格にも恵まれ、筋力が高く、好戦的で冒険者に多くいるらしい。


「レオナルドは冒険者として知っているが、こんなに世話好きだったとは知らなかった」

 二人で浴槽に浸かりながら、世間話をする。


「普段はどんな人なんですか?」

「誰ともあんまりつるまないな。単独で仕事を受けていることは知ってるぞ。こうやって誰かのためにあたしを頼ったのもびっくりしたよ。リナのこと大切なんだな」

「そう、ですか」

 リナと出会う前のレオは、そんな人だったか。


「リナ。いい男に出会ってよかったな」

 にかっと笑われて、リナは少し顔をお湯につけた。


「ハハハ!照れてんだな!!」

 そのあと本格的に湯あたりして、ギャリーにお水を大量にかけてもらう羽目になった。失態だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ