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天才魔道剣士は、異世界からきた聖女を手放さない(仮)  作者: 堂島 都


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「ヴァイオレット?」

入り口を見たレオが、ふと名前を呼んだ。


「レオナルド。また街に帰って来たって噂になってたわ。こんなところで……子供とデザート食べてるの?」

速足でやってきた妖艶な美女は、レオのそばにやって来て、やっとリナのことが目に入ったようだ。

4人掛けのテーブルを見て視線を動かす。


「子供じゃない。ヴァイオレット。遠慮してくれ。今は彼女と――」

「なによ。いいじゃない。私との仲でしょ。私もご一緒しても?」

ヴァイオレットと呼ばれた女性は強引に話に割り込み、リナに微笑む。


リナはこの女性とレオの関係性がよくわからないのでどんな顔をしていいのかわからない。

しかし、こうやって割り込んでくる女性というものは、たいてい同じだ。

自信があって、断られるとは思っていない。

こういう場合は逆らわないほうが賢明だ。


「どうぞ」

「いい子ね。いまはこの子の護衛をしているの?」

「ヴァイオレット」

完全にリナを子供扱いしてから、レオの隣の席に座ろうとしたヴァイオレットに、レオが厳しい声を出す。

流石にヴァイオレットの顔が固まった。


「いまは、彼女と過ごしてる。お前はもう護衛対象じゃない」

レオは笑顔も見せず、ゆっくり、はっきりと言葉にした。

(あちゃー)


「な、なによ!こんな子供と一緒にいるほうがいいって言うの?私とあんなに長い時間一緒に過ごしたじゃない!!」

ヴァイオレットは声を少々荒げた。


(そういういい方したら、そりゃ怒るに決まってるよ)

リナの眉毛が八の字になる。

お店の他の客の視線が集まっているのも気になる。

いたたまれない。


「以前は護衛対象だから、お前と一緒にいる時間は長かった。ただそれだけだ」

(うーわーーー。バッサリ…)

リナはヴァイオレットというこの女性が可愛そうになった。


誰が見てもきれいで上等な服を着て、お化粧もばっちりな美女だ。

自信ありげな振る舞いで、お供の女性も連れている。

きっとお金持ちのお嬢さん?奥様?なんだろう。

化粧ばっちりなせいで年齢不詳だが、男の人にモテそうな美女だ。それなのにここまで親し気に話しかけた相手にコテンパンに言われるとは思ってなかったのだろう。わなわな震えて、顔色を青くしたかと思うと、真っ赤になって立ち去って行った。


「ちょっと、レオ。いいの?あんな言い方して」

「護衛対象にはよくあることだ」

ヴァイオレットが店を出てから、こそこそとレオに尋ねると、平然と食事を再開しながらレオは答えた。


異性の護衛対象というものは、護衛期間が終わってもああやって一線を越えて来ることがよくあるらしい。

なので、基本的には護衛は同性でつく。

あくまでも、冒険者にとっては仕事だ。騎士の忠誠の様に勘違いされては困る。


「あいつの親父に借りがあったから受けた仕事だったが、女の護衛依頼は基本受けない」

「そう、なんだ」

「自分を守ってくれる相手は、よく見えるらしいからな」

レオはパンケーキを飲み込んで、にっと笑って見せる。


確かに、リナもレオを頼もしく思っている。

きっと、自分を守ってくれる相手というので殊更よく見えている可能性も高いのではないだろうか。


「モテる男の言い分だなぁ」

タルトをツンツンつつきながらリナがため息交じりに言う。


「なんだよ。俺がモテるとなんかあるのか?」

フッと笑われる。


「私の護衛しながら旅に出てもいいみたいなこと言ってたけど、私にモテたら困っちゃうんじゃない?」

ひっひっひと笑いながらレオにふざけていってみた。


「なんでだ?困らないぞ」

きょとんとした顔で返される。

「え?どうして?」

予想外だ。


「俺はリナがモテるほうが嫌だ。リナが変な男に目をつけられたら困る」

「それは私も困るけど」

変な人に目を付けられたくない。


「リナは俺が幸せにしたい」

「はぁ?」

リナの顔が真っ赤になった。


「リナは俺が幸せにしたい」

聞こえなかったか?と、レオは繰り返した。


「え?え?え?」

「そんな困った顔しないでくれ。きちんとお前が一人前になるまで、俺が安心してお前を手放せると思えるまでは、俺の手で幸せにしたいということだ」

「あ、ああ。そういうこと……」

焦って恥ずかしかったリナはハーブティーをグイっと一息で飲んだ。


(お父さんみたいな気持ちってことね)

この時のリナは気づいていなかった。


もうすっかりリナを手放す未来を捨ててしまったレオが、どれだけリナが拒否しようと離れてやらないと考えていることなど、全く想像もしていなかったのだ。


「リナ。買い忘れたものはないか?」

「いまは思いつかないなぁ」

旅行のパッキングの様に必要なものを頭の中で考えてみたが、買っていないものは宿にもあったはずだから、使わせてもらえば問題ない。


「この街は物資が豊富で旅人の拠点にもなってる。リナが気に入ったならしばらく滞在するのも悪くないな」

「レオには予定とかないの?」

「ない。大きな仕事は終わらせた。しばらくは指名依頼もないだろう」

どうやら有名な冒険者には名指しで依頼が来ることもあるのだという。


「有名な冒険者なんだねえ、レオは」

「そうだ。リナをちゃんと守ってやれるぞ」

「頼むよ、レオ」

わざと偉そうに言うと、レオもフッと笑った。眉間のしわがなくなる。やっぱりいい男だ。



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