プロローグ
私たちは、きっと「神様の妄想」の中で生きてる。
“私たち”って言っても、この物語に登場するキャラクターだけじゃないよ?
今これを読んでる、そこの“お前”もだよ。
……あ、口が悪くてすみません。
なにせ、私はバンドマンなもので。
ライブでお客さんを煽るときなんかは、
「お前ら、もっと声出せるだろー!」
とか、つい言っちゃうタイプなんです。
でもここは、“ライブハウス”じゃなくて——
“小説投稿サイト”でしたね。
気を取り直して、
ここからは小説らしく、丁寧な言葉で話します。
みなさんは、「神様の妄想」って信じますか?
ちなみに、私は信じています。
……というのも、
少しだけネタバレになりますが、
私は、この物語の第1章の終わりでタイムリープします。
ある日、目を覚ましたら1年前に戻っていたんです。
どうしてそんなことが起きたのかは、正直よくわかりません。
運命だったのか、偶然だったのか——
だから私は、こう考えるようにしました。
「これは、神様の妄想なんだ」って。
この物語には、さまざま人たちが登場します。
好きなことをしているはずなのに、怠惰に飲まれた人。
毎日努力していたのに、誰にも気づかれなかった人。
妄想を現実にしようとしたけど、何も変わらなかった人。
恋に悩まされた人。
才能を開花させた人。
奇跡を起こしてしまった人。
読者のみなさんの中にも、当てはまるものがあるんじゃないでしょうか。
私は「音坂ロック」というバンドで、
“等身大の自分を言葉にする”ような音楽を作ってきました。
小説でも、同じように——
みなさんの心に何かが響けばいいなと、そう思って言葉を紡いでいます。
——プルルルル……
あ、ごめんなさい。
話してる途中だけど、電話がかかってきたみたい。
「はい、もしもし」
「もしもし由希?三郎二号だけど」
「あー、あんたね。この物語の作者ね」
「そうそう」
「どうしたの?」
「ここから先は、俺が説明するから。もう大丈夫だよ」
「そっか。じゃあ、あとはよろしく」
「うん、ありがと。由希は物語の中に戻ってていいよ」
「了解」
……こんにちは。
この物語の作者、三郎二号です。
『妄想ライバー』は、全6章で構成された群像劇です。
第1章から最終章まで、
元バンドマン、小説家、ニート、元アイドル、イラストレーターたちのドラマを、それぞれの視点で描きました。
最初から最後まで話はつながっていますが、章ごとにテーマが異なっているため、
『妄想ライバー』というアルバムに収録された6曲——
そんなイメージで読んでいただけると、わかりやすいかと思います。
この全6曲が紡ぐ、それぞれの物語を、
どうか、最後まで見届けてください。
あ、あと……
うちの由希が冒頭からネタバレをしてしまい、すみませんでした。
……まぁでも、彼女なりの優しさ、
ということで許してやってください。